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普通なりの異世界踏破   作者: DDD
第4幕【王都編】
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第四十三話『逃亡』

 

 クラウチングスタートを決めて教会から飛び出した直後、俺は周囲を見渡して桃髪がどこに逃げたのかを探す。


「どっちに行ったっ!?イフ、ナビゲーション頼む!」


『このまま真っ直ぐ行って右曲がって!その後道なりに進んでいけば広い道に出るよ!』


 イフの案内通りに道を辿って行くと、露店がいくつも並んでいる街道に出た。そしてその奥の方にここからでも目立つ桃髪が通行人を押しのけながら逃げている姿が見えた。


「いたァ!!待てやオラァ!!」


 大した速度だが、魔法も使わないで俺から逃げられると思うなよ!絶対捕まえて有効利用してやる!


「【浮遊(フロー)】」


 俺は足元に風を発生させ、大ジャンプし、建物の屋根上に飛び乗る。そしてまるでアクション映画のように建物から建物に乗り移っていき、ショートカットする。


 これなら地形や人混みは関係ねぇぜ!フッハッハッ!まぁ、建物の上に乗るって迷惑行為だから、もしかしたら何らかしらの法に触れるかもしれんが、今はあの子を捕まえるのが最優先だから。


「よォーし!追いついてきたぞぉ!」


 そのまま風魔法を使って加速し、ターゲットを追い抜いた所で建物から颯爽と飛び降り、髪の前にふわっと着地する。


「ハロー♪」


「ひっ!?な、なんで……っ」


 桃髪はなぜ俺がいるのか訳が分からないといった様子で俺がいる方向と反対の方向に逃げようとする。


「いやいや、逃がさないからちょっと落ち着きなさい。水魔法(アクアマジック)糊弾(グルーバレット)】」


 桃髪の足元狙って粘性の魔力の塊を撃ち出し、桃髪の両足を地面に固定する。


「えっ!?な、なにっ!これっ!?」


「ふぅ、日に日に俺魔法の腕前上がってきてんな。やはり日頃の練習の積み重ねの成果が出てるんかね。」


 休みの日とか手のひらに魔法の球を作り出してお手玉とかしてるからな。魔力コントロールは最初に比べてかなり上手くなってる。


「さっきからずっと言ってるだろ、落ち着けって。別に俺は君に危害を加えるつもりは一切ないから。」


「う、嘘だっ!じゃあなんで追いかけてきたっ!!」


『そうだそうだー』


「年下の子を追いかけるなんて最低だよー!」


 なんか桃髪に紛れてウチの仲間が俺を攻撃してるんだが。やっぱりコイツら俺の仲間じゃないのかもしれん。


 だが、俺はこの程度の逆境で挫ける男ではない。さっきのが追跡フェイズだとしたら、ここからは言いくるめフェイズだ。コミュニケーションは苦手だが、こういうのは得意ってとこを見せてやる。


「そりゃ、君が逃げるからよ。安静にしてなきゃいけないのに、あんなに爆走して。っていうかね。俺は君の命の恩人なんだよ?」


「……えっ?」


「道端で倒れてる君を発見して、ここまで連れてきて、怪我を治したというのに。そんな命の恩人から逃げるなんて……恩知らずだとは思わないか?」


 まぁ、怪我を治したのはリリアだが。ここは俺の功績ということにさせてもらおう。


「…………そ、そうだったん……ですか?」


「そう!君が話も聞かずに逃げるから説明するために追っかけてきたの!俺は善意100%の男だから!」


 まぁ、本当は謝礼をぶんどるためだけど。……でも最初に助けた時は見返り考えずにただ助けようとしたから善意100%は嘘じゃないな。


「い、いやっ!騙されないぞ!その話が本当である確証はないじゃないか!」


 チッ!往生際悪ぃなぁ。この疑いよう、もしかして魔物に襲われたのではなく人間に襲われたのか?それなら人間不信になってるのに説明がつくが。

 とにかく今は俺がただの優しい人であると証明するために多少話を盛りながら事実を並べていこう。


「でも体の傷が治ってるのは事実じゃん。君が俺の言葉が虚実だと思っていても、治っているという決定的な事実があるんだから。……それでもまだ俺の事信じられない?」


「うっ、ぅぅ……」


 結構心揺さぶられてるな。やはり怪我を治してくれたという事実が俺の誠実さを後押ししてくれる。……あと一押しくらいすれば、少しの信用は獲得できそうだな。


「……じゃあさ、俺のことはまだ信じなくていいわ。とりあえず飯食い行こうぜ。どうせ、お腹減ってるだろ?」


「そ、そんなことっ!」


 桃髪は反論しようとしたが、その瞬間、お腹の音がぐぅ〜っ。と辺りに響き渡った。


「よし決まりな。」


「うっ///」


◆◇◆◇◆◇


 ということで桃髪を引き連れて酒場までやってきたのだが……


「なんやかんや言ってたくせにめちゃくちゃ食うじゃんお前。なんだお前。遠慮の欠片もねぇ。」


 テーブルの上に次から次に皿が積み上がっていく。なんかこの前も見たような光景だな。


「う、うるさいっ///……これは栄養補給のために仕方ないことなんだっ!」


「お前が金払うわけじゃないんだからな!?そこら辺は把握しとけよ!?」


 まぁ、空腹感もある程度改善されたからか、会話出来るラインまで持ってこれたから良しとしよう。


「ねぇ、スグル〜。出てもいい?」


 バッグに詰め込まれたシズクが声を上げる。


「ダメ。今ん所魔物と人間どっちに襲われたのか分かんないけど、仮に魔物だった場合お前が出た瞬間、俺の今積み上げた少しの信用が消し炭になる。」


「……なに独り言を話してるんだ?」


 小声で話しているのが気になったのか桃髪が話しかけてくる。


「気にしないでくれ。」


「えっ、う、うんっ。」


 なんかヤベェやつだと思われたかもしれん。ってかこの流れ、相当前に一度あったような。気のせいかね。


 ……そういえば、ふと思ったがコイツって性別どっちなんだ?


「なぁ、イフ。……ちょっと聞きたいんだけどさ。コイツって男?女?」


『答えない方が面白い。』


「ありがと、お前の性格がねじ曲がってることがよくわかったよ。」


 ……性別は未だ判明せずか。まぁ、しばらくは彼、彼女って呼ばずに桃髪って呼べばいいか。


「……なぁ、桃髪。」


「桃髪って何!?そんな名前じゃないんだけどっ!?」


「じゃあ名前教えろよ。」


「それは嫌だ。」


「なんだコイツ。」


 今はそんなことより……こいつの強さを見極めたい。風魔法を使わなかったら追いつけなかっただろう脚力、目の前の敵を恐れず突っ込む胆力。

 他の能力が優秀なら是非とも仲間に引きみたい。俺の旅の道連れにしたい。とりあえず提案してみるか。


「まぁいい。お前いま金ないだろ?」


「……そりゃ、ないけど……」


「じゃあ俺と一緒に稼ごうぜ!」


「えっ、嫌……」


 なんでだよ!クソォォォォォ!!!!うぁあああああああああ!!!


この後、傑はトイレに行くと言って離席し、隠れて叫び散らしながらストレスを和らげるのであった。

果たして傑は桃髪を仲間にすることは出来るのだろうか!


次回へ続く


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