第四十二話『恩知らず』
「とりあえずこれでひとまずは安心でしょう。」
金髪の美少女に案内された先にあったベッドに道端にぶっ倒れていた性別不明さんを寝かせる。
さっきは確認できなかったが、いま確認した感じ傷も完全に治ってるし、寝息も穏やかになっているから彼女の言う通りひとまず安心だろう。
さてさて、じゃあ別のフェイズに入っていこうかね。さっきのは救出任務、今からやるのはそう……好感度稼ぎだ!
とりあえず彼女の情報を聞き出さないことにはどうしようもない。とりあえず無難に名前から聞いてみるか。
「……あのぉ、失礼かもしれないんですけど。一応お名前聞いてもよろしいですか?」
「私の名前ですか?あぁ……そういえば名乗り忘れてましたね。私の名前は【リリア】しがない聖職者です♪」
自己紹介しながらリリアはあざといポーズを決める。……さっきまでは真面目でカッコいい印象だったけど。結構ふざけたりもするタイプだな?
「なら私にも貴方のお名前を教えてくださいますか?私が名乗って貴方が名乗らないのは不公平だと思うので。」
「それもそうっすね。僕は傑って言います。」
とりあえず他愛もない会話を続ける。
まだよくリリアやこの教会のことについて分かっていないが、一つだけ分かったことがある。
リリア……彼女はかなり地位が高い聖職者だ。司祭クラス……もしくはもっと上か。だから好感度を深める価値がある。
「スグル様は魔物を連れていますが、テイマーなのですか?」
「そうなんですよぉ。このスライム、結構ぷにぷにで可愛いんで触ってみます?」
秘技!可愛い攻撃!正直シズクのことは可愛いなんて思っていないが、女の子というものは大概ぷにぷにした丸っこいもんが好きだ!カー○ィとかが良い例。
「ぜひ触らせてください♪」
「僕の許可なしになんで勝手に話進めてんの!」
シズクが何やら文句を言っているが、気にせず手渡す。
あーあ、すっごい揉まれてる。粘土こねてるみたいになってるよ。
「はい、もう十分堪能したのでお返しします♪ありがとうございました♪」
よし、とりあえずファーストコンタクトの印象は良好。よし、次は有益な情報を引き出すフェイズだ。
「あのぉ、リリアさん。ちょっと質問があるのですが、お時間大丈夫ですかね?」
「あ〜、え〜っと……簡単な質問なら大丈夫です!この後、用事があるので。すみません。」
なら、質問する内容はよく考えた方がいいな。個人情報を引き出すのは得策ではない。この後、また出会えるかも分からんしな。
……よし、じゃあこの後の行動に繋がりそうな質問で行ってみるか。
「大丈夫です!じゃあ質問なんですけど、人がよく集まる場所ってありますか?」
「人がよく集まる場所……ですか?それならこの教会から西に向かったところにある王立図書館か、ここの裏手にあるギルド本部ですかね。」
なるほど、図書館かギルドね。知識優先なら図書館、人脈優先ならギルドってとこだろうな。
何にせよ、有益な情報が得られたな。
「情報提供感謝します!」
「はい、お役に立てたのなら何よりです♪それでは私はこの後お仕事なので、この辺りで失礼します。それではまた♪」
リリアはそう言うと手を振りながらこの部屋を去っていった。
う〜ん、じゃあこの後はギルド行くか。それとも図書館に行くか。どっちでもいいけど、どっちでもいいからこそ、迷うんだよなぁ。
……悩ましいなぁ。と、この後の予定について考えていると……
「……んぅ……」
「おん?」
後ろから中性的な声がする。振り返ると先程まで死にかけていた桃髪の子がむくりと起き上がっていた。
あっ、完全に忘れてた。そういえばここに居たのってこの子運んできたからだったわ。うっかりした。
「………………ッ!?」
俺の姿を視認したのか、ベッドから飛び起きて、俺から距離をとるように壁に張り付く。
「ま、まぁ待て。落ち着け餅つけ。大丈夫だから、ここにお前に危害を加えるものは居ないから。……シズク、バッグから出るなよ。」
「えっ、う、うんっ。」
万が一に備えてシズクにじっとしているように促す。
魔物に襲われてる可能性があるので、魔物を見せてしまったら状況を混乱させてしまう恐れがある。
「ふぅっ……ふぅっ……!!」
「とりあえずゆっくり呼吸しろ。焦るなっ。あっ、ほらっ、水もあるから。とりあえず楽な姿勢を取って……」
いきなり近づいたら怖がらせると思ったので、ゆっくりと近づいて、なるべく優しく声をかけるが……
「来るなっ……こっちに来るなァァァ!!」
その子は錯乱したのか急にこちらに襲いかかってきた。来るなと言いつつ自分からやって来るスタイルとは新鮮だな。
まぁ、寝起きだからか動きは鈍かったので簡単に避けられたが、距離を取ったことで元の位置が入れ替わり、ドアから簡単に逃げられてしまった。
「ふ、ふ〜ん。寝起きにしては頭回ってんじゃん。……ってか逃がしたのはさすがにまずいな。ここまで運んできた俺の努力が無駄になる。イフ、あの子の追跡できる?」
「まぁ、一応魔力の波長とか覚えたから遠くまで行かれない限りは追えるよ。」
「OK。それなら十分。……速攻で捕まえて、助けた分のお礼をぶんどってやる。対価もなしに助けられるなんてそんな上手い話はないからなぁ。」
イフの言葉を聞いた瞬間、俺は深呼吸をして、手を地面につけ、腰を上げて、クラウチングスタートの体制を取った。
「よぉ〜し!楽しい楽しい追いかけっこの始まりだァ!」
唐突に始まってしまった傑と桃髪の子による追いかけっこ。果たして傑はあの子を無事に捕まえることが出来るのでしょうか!
次回へ続く




