第四十一話『疾走』
馬車にゆらりゆられて長時間移動をしながら、今後の活動についてを仲間と一緒に考えていく。
「う〜ん、あの街で仲間をGETする予定だったけど。結局無理だったな。次の街ではいけるといいんだが。」
『そもそも次の街ってどこに行く予定なの?そこら辺まるで聞いてないんだけど。報連相ちゃんとしないと社会でやっていけないよ。』
イフが文句をつけながら質問する。
「色々ドタバタがあったから、話すタイミング失ってたんだよ。そこら辺は勘弁してくれ。……で、次の街だっけ?ふっふっふっ……それ聞いちゃう?」
「勿体ぶってないで早く言ってよ。」
「まぁ、急かすなって。じゃあ発表しよう!次の目的地……それは」
周囲の空気が一変する。雑音が消え、心臓の鼓動音や呼吸音が場を支配する。
その場に一石を投じるかのようにゆっくりと言い放つ。
「ひ・み・つ♪……ってやめろやめろっ!バカバカバカッ!?俺が悪かったから!説明するからっ!それなんだ!?氷塊!?こっちにジリジリ寄せてくんなっ!御者の方に迷惑だろ!」
俺の発言にムカついたのかシズクが人の顔程の大きさの氷塊を俺の方へと近づけてぶつけようとしてくる。
「……それで?結局どこに行くの?」
「はぁはぁ……っ……王都だよっ……王都【アトラス】」
王都……人族最大の都市であり、潤沢な資源と高度な技術が集まっている。
ギルドの本部や人族の王が住まう城があり、多くの民がそこで暮らしている。
『おぉ〜、遂に王都に行くんだね。』
「あぁ、それでな。俺はちゃんと計画性あるからこの王都でやることのリストを立ててみたんだよ。とりあえず見てくれ。」
そう言って俺はいくつかの文字が書き記された紙を見せる。
【やることリスト】
・仲間集め
・冒険者・学者・貴族との縁を繋ぐ
・Bランクに昇格
・強化パーツを見つける
・国王または王族の誰かと会話をする。
「この中の内、4つは達成したいと思っている。ってかそんくらいしないと多分世界救いようがない。」
Bランク昇格、強化パーツを見つける辺りは出来そうだけど。問題はコミュニケーション能力が必要そうな他の3つ。
なるようになる気がしなくもないが、極めて厳しい目標なのは間違いないだろう。
『なるほど。……ちなみになんで王族と話がしたいんだい?他のはなんとなく意図が分かるけど。』
イフの疑問の言葉が飛び出す。そりゃ客観的に見たらそこが1番不思議なポイントだよな。
「簡単な話だ。王族ってことは多くの権限を持ってるし、国家間の情勢をよく知ってるだろう?だからこそ、仲良くなることで普通なら知りえない情報を引き出す。」
『取らぬ狸の皮算用とはこの事だね。』
「うるさいなぁ。そもそもこれはたらればだから成功するとは思ってない!チャンスがあれば行きましょうくらいのノリよ。」
「ふ〜ん、じゃあとりあえずやることはいつもとあんまり変わらないんだよね?」
「その通り。根本は変わってないからな。人と仲良くなって、俺が強くなる。」
としばらく雑談をしていると
「おぉっと!?止まれ止まれっ!」
馬車で旅をしていると突然、馬車を運転している御者の方が何かに驚いたような声を上げ、馬車が停止する。
「ん?どうかしました?」
「……いや、人が倒れて……る。」
「マジですか!?ちょっと見てもいいですか!?」
「あ、あぁ……」
許可を貰ったので馬車から飛び出で、馬車の正面に向かって歩くと、そこには桃髪の男の子?女の子?よく分からない性別の子が倒れていた。なんということでしょう。
「あのぉ〜、大丈夫ですか〜?」
顔をぺしぺしと叩きながら呼びかけるが、反応がない。もしや死んでる?……とも思ったが、ちゃんと呼吸はしてるな。気絶してるだけか。いや、なんで気絶してんだ?
「この人大丈夫なの?って何この傷!?」
シズクが声を荒らげたので、よく観察すると服の隙間から見えたのは無数の切り傷とそこから染み出した血。てっきり赤い服着てんのかと思ったけど、これ全部血!?
「こりゃ大変だァ!御者さん、回復魔法とかポーション持ってます!?」
「い、いや、持ってない!ど、どうすればっ……!」
うげぇ、俺も手持ちのポーションないんだよなぁ……王都で買えばいいやって後回しにしてたのがここで裏目に出たかっ!
『あともう少しで王都に着くから、教会に最速で行くしかない!とりあえず馬車に乗せて!早くしないと死ぬよ!』
「あいあいさー!御者さん!この子乗せるんで、王都まで全速力出してください!」
「えっ……わ、分かった!」
イフの指示通りに従い、速攻で馬車に乗せて全速力で王都へと向かうように促す。御者さんも意図を察してくれたようで速攻で馬車を動かしてくれた。
王都に着くまでの間、俺はこの子の様子を観察することにした。
顔色が悪く、何かにうなされているような見える。推測としては魔物に襲われて何とか撃退したけど怪我を負ったとかか?
武器は……剣を持ってるな。ちょっと見るか……少しでも情報を得るのは大事だしな。
鞘に収められた剣を引き抜いて刀身の状態を確認する。
おぉぅ……めっちゃ刃こぼれしてる。無茶な使い方してたのか、余程硬い敵と戦ったのか。
とこの子の経緯について想像していると
「王都が見えてきた!!」
御者が声を上げる。その声に釣られて、窓から顔出して前を見ると、超巨大な都市が徐々にその姿を露わにする。
いつもならテンションがぶち上がるが今は人命かかってるから大して感動がない!もっと余裕がある時に見たかったな!
「うぉお!!魔法で速度にブーストかけてやるわァ!風魔法【噴出】!」
後ろの窓を全開にして、風魔法を高出力でぶっぱなし、擬似的なターボエンジンを創り上げる。
「速っ!?」
シズクが驚きの声をあげるほどに加速した馬車は一気に王都の門までの距離を縮めていく。
そして検問所が見えてくると怪しまれないように魔法を止めて、あたかも普通に来ましたよ感を演出する。
「止まれ!ライセンスの提示をしろ。」
「ちょっと今、怪我人いて緊急だから早くして!頼む!お願い!」
「わ、分かった。」
門番をしている兵士にまくし立てながら急かす。大変申し訳ないが、こっちは事態が事態だから急がにゃならんのだ。
「よし、確認完了。通ってよし!」
「よし来た!入るぞ!」
門番から通行許可が降りると急いで街の中へと入り、馬車から飛び出し
「じゃあ!俺たち教会に運んでくるんで!ありがとうございました!」
と御者さんにお礼を言って、怪我人をおんぶしながら急いでその場を去る。
「イフ!教会の場所は!?」
『この先まっすぐ!ステンドグラスの巨大な白い建物!』
「アレか!了解!」
うぉぉぉおおっ!!急げえぇえええ!
俺は奥の方に見える白い建物に向かって猛ダッシュする。通行人に何だあいつ?みたいな目線で見られるが恥ずかしさを我慢しながらとにかく走る。
「あと少しだよ!」
体力の限界を感じながらも走り続け、ようやく教会の入口へとたどり着いた。
「はぁはぁ……ゲホッゴホッ……オラァッ!到着だァ!そしてダイナミック訪問!」
勢いよく開き戸を押して、中へと入る。中には修道服を着た聖職者が何名か。開く勢いがちょっと強かったのでビクッと驚いた様子でこちらを見ている。
「こんにちは!突然ですが、すいません!怪我人がいるので治療して貰えませんか!このままだと命が危ないんです!」
挨拶と要件を迅速に伝える。これができる男ってやつよ。しかしあまりに急なお願い故か、全員動揺してアタフタしている。もしや新人ばっかりかぁ?使えねぇなぁ!
「私が治療しましょう。」
と立ち尽くしていると何やら透き通った声と共に奥の方から信じられないくらい輝き?というかオーラを放っている金髪の女性がこちらに向かってやって来た。
「いえ、貴方様ほどの方がわざわざ動かずともここは私たちが!」
「何を言ってるのですか。命の危機にとやかく言ってる場合じゃありません。そこの方、そのままじっとしててください。」
「えっ、あっはい。」
状況を理解できずに戸惑いを隠せずにいたが、とりあえず治療してくれるとのことなので指示に従うことにした。
「では失礼します。【祝福天使】」
彼女がそう言い放つと、俺達の頭上に魔法陣が浮き上がり、そこから降り注ぐように光が放たれる。
とても暖かく、包まれているような感覚に陥る。そして体から疲労感を含めた体調不良が一気に無くなっていくのを感じる。
まるで天からの祝福を受けているかのようだ。
「ふぅ……これで怪我は治りましたね。とりあえずこのまま安静にしておくのが良いでしょう。こっちの部屋にベッドがありますので、そこで寝かせましょう。貴方も着いてきてください。」
と言われ、手招きされたので言われるがまま桃髪の子を運びながら付いていくこととなった。
にしてもこの女性の正体は一体?まぁ、深く気にしても仕方ねぇか!とりあえず今は怪我が治ったことに安心するか。
新しく登場した人物が2名。彼女らは一体何者なのか。そして傑は王都で何を見るのか。それはこの先分かることだろう。
次回へ続く




