第三十四話『お遊戯』
もう既に心が限界を迎えていますが、頑張って乗り越えていこうと思います。乗り越えられない壁はないともいいますしね。無理にテンション上げていこう!
「……あ〜、今日君たちの遊び相手をすることになった傑だよー!よろしくね!」
「えぇ〜?ハンスの方が良い。」
何だこのクソガキ。人の前ではちゃんと気を使わなければならないってことを体に叩き込んでやろうか。
「ハンスは仕事にやられてるから今日は来れないんだよ。だから俺で勘弁してねぇ。」
「なんか話し方キモイ」
……お前らの年齢に合わせて優しく喋ってんだろうがよぉ……はっ倒してやろうかこのガキ。年上の怖さを教えてやってもいいんだぞオラァ。
「まぁまぁ、そこは気にしないでね。とりあえず自己紹介してくれるかな?」
とりあえずコイツらの名前や特徴を分析しないことにはどうしようもない。必ずやコイツらの心を掴んでみせる。
「じゃあ俺から行くぜ!」
するとさっきから俺に突っかかってきた赤毛で小生意気なクソガキが声を上げた。
「俺の名前は【レイド】!いつか勇者様みたいなかっけぇヤツになる男だ!」
レイドと名乗ったクソガキは聞いてもないのにそう高らかに宣言した。……勇者ねぇ。この世界にもそういうのあるんだ。それにしちゃ、あんまし聞かないけど。
「アンタが勇者様になんてなれるわけないでしょ。」
「やってみなくちゃ分かんねぇって勇者様も言ってたじゃねぇか!」
なんか喧嘩始まりそう。マジで勘弁してくれ。……ってこういう時は俺が止めないといけないのか。
「あー、言い争いストップ。そこの眼鏡かけた少女。自己紹介よろしく。」
レイドと喧嘩しそうになっている黒髪の眼鏡っ娘に自己紹介するように促す。
「あっ、すみません!私の名前は【ウル】です!本を読むのが好きです!よろしくお願いします!」
……なんか規律に厳しい委員長みてぇな子だな。レイドとは相性が悪そうに見えて、実は相性いい系だな。付き合っちまえよ。
「えーっと……次は……」
「ひぐっ……ぐすっ……」
なんで泣いてんだお前。どうした?何があった?……恐らく俺を警戒してるのかな?よし、精一杯優しい声で話そう。
「えっとぉ……そこの君、自己紹介出来るかな?大丈夫だよ、俺そんな怖い人じゃないから」
「ぐすっ……僕の名前はっ……【クライ】ですっ……」
泣き虫系青髪女児?……いや、ちょっと待てよ。ちょっとだけ声が男よりか?……まさか男の娘か!?
「それと最後は……あれ?どこ行った!?最後の一人消えたんだけど!?」
「あっ……ここにいます……」
声のした方向を見ると紫髪の女の子が物陰からこちらを見つめているのがわかった。いや、隠れないで欲しいんだけどな。……なんか俺と同じ雰囲気を感じる。
「……自己紹介どうぞ。」
「……か、【カゲ】です……わ、私のことは特にお気になさらず……」
いや、気にしないで言われてもそうはいかんのだ。こっちも依頼なんだ。よし!自己紹介終わったし、早速遊ぶとするか!
「……よし、じゃあ……何するよ?君たち日頃何してるの?」
「外で走ったり、棒振ったりだ!」
「シスターから本の読み聞かせしてもらったりですね。」
「追いかけっことかっ。」
「……軽い運動とお勉強……」
……なら適当な遊戯考えるか。運動系……いや、それは俺がめんどくさいな。なるべく動かなくて良い感じのやつ。
「なら、そうだな。……かくれんぼでもするか?」
さて、この世界にかくれんぼはあるのだろうか。まぁ、俺の元いた世界でもどの国にもある遊びだし、同じ知性体なら似たような遊びあるだろ。
「かくれんぼ!いいな!」
「賛成です!」
「僕もいいと思いますっ!」
「動かなくていいから……ありがたい……」
よし!高評価だ。じゃあ早速やりますかね。
「そいじゃ、俺が一分数えるからその間に隠れててね。あっ、それと範囲はこの孤児院の中だけだぞ。」
「「「「はーい!/……はーい」」」」
子供たちは返事を聞くと俺は壁の方を向いて目を瞑る。後ろではドタドタという足音やガチャりという扉が開く音が聞こえる。
1、2、3、4、5……………………57、58、59、60。
「よし探しに行くか……って、シズク大丈夫か?」
俺は大きめのカバンの中に詰め込んだシズクに声をかける。
「……ずっとカバンの中にいるの苦しかったんだけど。」
「子供達に見せる訳にもいかんだろ?ってことだからあとしばらくは我慢しててな。」
「後で魔力くれるならね……」
あっ、寝た。しゃあねぇなぁ。終わったら少しくらいは恵んでやるかぁ。
とりあえず今はかくれんぼをしないとな。俺は今いる部屋を軽く見渡す。流石に簡単に見つかる場所に隠れてる訳じゃなさそうだな。
「……俺ならどこに隠れるか。」
なるべく見つからない、姿勢が楽、暗い場所……音的に確実に1人はこの部屋から出ている。
「ベッドの下、布団の中辺りだろうな。もしくは棚の中。」
俺は孤児院を歩き回って居そうな場所に目星をつける。孤児院の中限定だから外には出ていないと考えていいだろう。
「ここかな。」
俺は人が1人ならギリギリ入りそうな棚に目を向ける。大人は入らないが、あの子たちくらい小さいなら。俺はゆっくり棚を開いて覗き見る。
「ハロー♪」
「……えっ?」
ここに隠れていたのはどうやらカゲだったようだ。色も相まって一瞬居ないかとも思ったが、俺の魔眼は暗さ関係ねぇからな。
「君が最初の犠牲者だぁ」
「……むぅ……いっつも最後に見つかるのに……」
顔をプクって膨らませてる。よほど悔しいんだろうな。案外負けず嫌いなのか……まぁいいや。
「じゃあ俺、他の子探してくるからシスターところ行ってきな。」
「……うん。」
さて、次のポイントだ!恐らく寝室にいると思われる。ということでやってきたけど、カーテンで遮られてるせいで光がない。魔眼なかったら暗すぎて見つけづらかったろうな。
ベッドの下を覗き込むとそこには暗い場所でも目立つ赤毛を携えた男の子が身体を丸めていた。
「はい、レイドくんアウトー。」
「なっ!……クソッ、見つけるの上手すぎだろっ!」
「讃えてくれていいよ?」
「ヤダよ。兄ちゃん讃えたら調子に乗りそうだし。」
「おっ、なんだァ?そんなこと言うやつには俺の凄さを見せつけてやる。【火花】」
俺は指先に小さい火花を散らし、擬似線香花火を創る。暗い場所だからより綺麗に見える。その光景にレイドは目を輝かせる。
「兄ちゃんすっげぇ!?どうやるんだっ!?教えてくれよ!」
「おっ、知りたいか?これはだなぁ……秘密だ。」
「えぇっ!?教えてくれたっていいじゃぁん!」
「まぁまぁ、勉強頑張ったら使えるようになるから。……それでもつまづいたらアドバイスくらいはやるよ。ほらっ、シスターの所行ってきな。」
「……分かったよぉ……じゃあ今度会った時には俺の魔法見てくれよな!」
そう言ってレイドは走り去っていった。……う〜ん、中々に好かれちまったようだなぁ。やっばりガキはチョロいぜ。
……それと、もう1人この部屋にいるな。そこのベッドの上の布団の中。やけに盛り上がってんなぁ!……剥いでやる!そして発見!出てきたのはなんとウル!レイドと近い場所で隠れてたんだな。
「はい、3番目ね。」
「……バレないと思ったのにぃ……まぁ、レイドより後に見つかったから実質勝ちみたいなものよね。くふふっ、煽ってこよぉっと♪」
レイド限定でイタズラ系幼なじみみたいな性格になるのな。やっぱりお似合いだな。
「よぉーし。最後はクライくんだな!まぁ、大方予想は付いてるけど。」
陰の者だからな。隠れることに関しちゃ誰よりも熟知してる。だからあのタイプが隠れそうな場所は……
俺はシスターがいる場所へと向かう。そこには他の子達がシスターに群がっており、楽しげにお話をしている。
「あら?スグルさん、どうしたんですか?」
「いやまぁ、最後の一人が見つからないのでここに来た感じですね。ところでなんですけど。セレンさん、あなた何か隠してるますね?」
「い、いえっ……そ、そ、そんなことっ」
嘘下手かっ!バレバレすぎるだろ。しかもなぁ。子供たちも俺の目から何かを隠すように横に並んでんだよな。
「それじゃあ、ラスト。クライくんみぃ〜つけた。」
回り込んでセレンの後ろ側を見ると、セレンの後ろに隠れるようにへばりついているクライくんの姿がそこにはあった。
「み、見つかっちゃった。」
フッフッフ……何気に20分くらいかかったな。まぁいい、これである程度は良い人としての認識が深まったろ!攻略は順調!このままやってやらァ!
「よし!次は面白い話でも聞かせてやるわァ!全力でお前らの相手してやるから覚悟しなぁ!」
「……なんか様子変わってない?」
「気のせいだ!フッハッハッ!!!休憩もしっかり取りつつ遊ぶぞぉ!」
「「「「おぉ〜!」」」」
「ふふっ……楽しそう私も混ぜてもらおうかしら。」
『こうしてどうにか子供たちの好感度を稼ぎ、一日を乗りきった傑。……しかし、この時の傑は想像もしていなかった。まさかあんなことになるなんて。』
「そういう不安を煽るナレーションはやめろよ。」
次回へ続く




