第三十三話『お仕事 その3』
えー、皆様。大変申し訳ございません。街に来たばかりなのに、ボランティアしなければならない羽目になりました。これは迂闊にギルマスの提案に乗った俺の落ち度ですね。でもこれだけは言いたい。マジでfuc
「……はぁ、それで?何をやればいいんですか?」
「おっ、新人の割には受け入れ早えじゃねぇか。まぁ、依頼って言っても簡単なままごとに興じるだけだ。何も難しいことはねぇ。」
「ままごと?」
「あぁ、この近くにある孤児院に住んでるガキの世話をするだけだ。簡単だろ?ってなんだお前そんな嫌そうな顔しやがって。」
「……イエ、ナンデモナイデス。」
子どもの世話かぁ……すっごい嫌。俺子供苦手なんだよなぁ。子どもの泣き声とかきき続けてたら発狂する自信がある。
「それじゃ、詳細は受付のマキアから聞いてくれ。俺様は仕事に戻る。今日覚えたことは死んでも忘れんじゃねぇぞー。」
「了解しましたー」
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ってわけで、依頼内容をマキアさんに聞きに来たわけなんだが。
「……はい……ハンスさんからの依頼ですね……ちゃんと詳細は聞いてますよ……はい……」
「大丈夫っすか?」
「……まぁ、大丈夫ではないですけど……とりあえず夜の書類整理のために今は省エネモードになってるだけです……」
いやいやいやいやっ!感情失いすぎだろ!さっきまでの明るいマキアさんどこ行った!?……なんか休みだと思ってたら学校があった時みたいなテンションの下がりようだな。
「なんか人と会話する時のスグルみたいになってるね。」
おいシズクどういうことだそれ。……えっ?俺って人と話す時こんななの?……うそぉん……えぇ……俺結構明るく喋ってるつもりだったんが。
「……はい、ということで詳細を話しますね……まずギルドを出て左に曲がったところに赤いレンガで出来た孤児院があるのでそこで子供たちと戯れてください……時間とか更に具体的なことは孤児院のシスターに聞いてください……」
「あっ、はい。分かりました。じゃあ……行ってきますね。」
空気がどんよりしていたので俺は急いでギルドから飛び出た。そして思いっきり深呼吸する。外の清涼な空気が俺の心を癒してくれる。
「よし行くか。」
『ん?どこ行くの?』
「あっ、イフちゃん。途中から居なくなってたのは分かったけど、どこ行ってたの?」
『普通に闘技場で試合見に行ってたよ。いやぁ、まさか最後の最後でカウンター決めて逆転するとは想像もつかなかったね!』
「へいへい。試合の感想は良いからさっさと孤児院行くぞ。」
『なんで孤児院?』
あー、説明めんどくさいから無視しよっと。全てはその場にいなかったイフが悪い。
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「えーっと、このまま真っ直ぐ進めば……おっ、あれじゃね?」
ギルドを左に曲がってしばらく歩くと、目の前に赤いレンガ造りのこじんまりとした建物が見えた。特徴と一致してるし、あれが孤児院で間違いないだろう。
そのまま小走りで孤児院の入り口まで近寄って、扉をトントンとノックする。
「すいませーん。どなたかいらっしゃいますかー?」
「はい!今すぐ行きますので少々お待ちを!」
中から女性の透き通った声が聞こえる。少し待つとドタドタという急ぎ気味の足音と共に扉の前に誰かがやってくる気配がする。
「……お待たせしましたっ!それであの、どちら様でしょうか?」
そしてゆっくりと扉が開かれると、扉の内側からブロンドヘアーの修道服を着た女性が顔を覗かせる。
「あっ、俺はギルドから派遣できました傑って言います。」
「……ギルド……あぁ!ハンスさんの所の方ですか!どうぞどうぞ、中へお入り下さい♪」
勢いよく扉が開かれると、そのまま手を引かれて建物の中へと引き込まれる。中々に元気がいいなこの子。多分みんなから好かれてるタイプだろうな。そんな感じがする。
「そこの椅子に座ってください、飲み物を用意してくるので待っててくださいね。」
「はーい。」
……ふむ、待ってる間ひまだし、ちょっと観察してみるか。建物の中は外と同じように内装も多少の劣化が見られる。ただ、掃除はしっかりされてるようで蜘蛛の巣などはパッと見なさそうだな。
ってことは修繕費がないんだな。子供たちを育てるのに手一杯でそこまで資金が回らないってのが、概ねあっているだろう。
「はい、どうぞ。熱いのでゆっくり飲んでください。」
と建物から経済状況を割り出していると、セレンが戻ってきたようで、机の上にカップを置く。
「ありがとうございます!……そういえば、聞き忘れてたんですけど。貴女のお名前は?」
「あっ、大変申し訳ありません!軽い自己紹介させてもらいます。私の名前は【セレン】。この孤児院で子供たちの世話をしているシスターです。シスターもしくはセレンとお呼びください。」
「はい。じゃあセレンさん!早速なんですけど、ハンスさん曰く子供と戯れて来いって話だったんですけど。何すればいいんですかね?」
俺は出された飲み物を飲み干すと、1番気になっていた子供たちのことを聞き出す。辺りを見渡してもどこにも居ないからな。
「それならあっちの部屋に4人ほど居ますよ。みんな可愛くて良い子なので、ぜひ一緒に遊んであげてください!」
「了解しましたー。」
セレンが指を指した方向にある扉へと向かう。中からは幼げな子供の甲高い声が聞こえる。……はぁ……俺この声苦手なんだよなぁ。
……よし、考え方を変えよう。今から始まるのはギャルゲーだ。対象人物の好感度を上げて、仲良くなる。そういうゲームだと考えろ。
そう考えるとやる気が出てきたな!全員まとめて攻略してやるぜぇ!
俺は決意を固めて扉に手をかけ、ゆっくりと若干重たく感じる扉を開けるのだった。
「……おっ?シス……ん?お前誰だ?なんかひょろっちいな!」
「コラッ!初対面の人にそんなこと言っちゃダメでしょ!お兄さんも困ってるじゃない!」
「うぇぇぇえん!怖いよぉ!」
「…………こ、こ……こんにちは…………」
……ダメだ、もう心折れるかもしれん。
苦手な子供の世話を頼まれた傑。彼は子供たちを攻略することが出来るのだろうか!この瞬間、彼にとって異世界で最も難しい挑戦が始まる!
次回へ続く




