第三十話『武の街』
「……あ〜、足の感覚ねぇー」
ヨミの長時間説教で足が痺れて感覚が麻痺してしまった。……にしても、あんなに怒らなくても良くない?
「スグルさん反省しましたか?」
「YES!YES!」
俺に反抗の意思が芽生えた瞬間咎めに来るとか、やっぱり女の勘ってのはすげぇな、感心するね。
「は"ぁぁぁ……!足がぁっ!ぁぁぁ"!」
なんか隣に悲鳴上げてる人いるんだけど。まぁ、俺より長時間正座してたしな。にしても苦痛で顔を歪ませる美人系お姉さんか。俺の趣味じゃないけど、需要はありそうだな。
「ナスカさん大丈夫っすか?」
「……ま、まぁ……大丈夫……じゃない、かなッっ!!」
ナスカが悶えながら足の痺れに苦しんでいる。とても可哀想だが、返事ができるということは大丈夫ということだろう。
俺はそう解釈し、ダンジョン攻略の報酬を探しに部屋の中をうろつき始めた。
「ナスカさーん、報酬どこにあります?」
「机の引き出しの小袋の中……ァっ!あばばばっ!」
いつまで痺れてんだよあの人。これがもしアニメや小説ならネタの使い回しで飽きられてんぞ。
心の中で要らぬツッコミを挟みながら、引き出しを漁っていると、俺の隣にヨミが歩み寄り、声をかける。
「……そういえばスグルさんってこの後どうするんですか?」
「あっ、気になる?やっぱり気になっちゃう?」
『「うざっ」』
仲間から暴言が飛んでくる。俺も言うのを躊躇しようとはしたんだが、1度そう反応しようと思ったら、口が勝手に喋り出すんだ、許して欲しい。
それで、なんだったか。俺のこの後の行動だっけ?
「別の街に行く予定。もう十分この街で色んなものを得られたしな」
この街での収穫は能力と友達と金と金とそれに金。うん、多種多様で非常に実用性のあるものを獲得できたな。
「そうですか……それは少し寂しくなりますね……」
俺の言葉に、ヨミの顔がシュンとなる。非常に可愛い。なんか小柄な子がしょぼんとしてるところって小動物に見えてくるよね。
「まぁまぁ、冒険者なんてのはそんなもんでしょ。また会えるんだから、その時いっぱい話そうぜ!」
その言葉にヨミは少し顔を曇らせる。まさかの最後の最後で俺、痛恨のミスを犯す。
えぇ……?今の言葉のどこに地雷があったって言うんですか!?
「……そうですね。また会えますよね。……次会った時は旅の話聞かせてくださいね、約束ですよ。」
ヨミは俺にそう言い残すと、ナスカを引きづりながら、別の部屋へと移動して行った。……なんだったんだ?
◆◇◆◇◆◇
そして俺は報酬を受け取り、そのまま馬車を乗って次の目的地へと向かった。
馬車で移動している最中、俺は酷く揺れる背もたれに体を預けながら先程の会話について反省会を始めていた。
「……最後で地雷を踏んだかぁ。にしても何が悪かったんだろ」
『まぁ、この世界で簡単にまた会えるなんて言ったからじゃないかな?いつ死ぬか分かんないのに。……多分、彼女は似たような経験があるんじゃないかな。』
イフの言葉に半ば納得する。確かにそういう過去があったのなら、さっきの俺の発言は無責任だったかもしれないな。
「でも言霊ってあるじゃん。また会おうって約束した方が絶対生き残るぞって心持ちが身につくと思わん?」
『私は否定も肯定もしない。どっちの考えも分かるからね。まっ、約束守れるように生き延びなよ』
「へいへい」
でも、俺の意見の方が正しいと思うんだけどなぁ……いや、この考え方はダメだ。昔から自分を正しいと主張したくなる悪い癖、最近出てないから治ったかと思ったが、どうにもこれは治りそうもないな。
とりあえずヨミの意見も考えてみるか、今まで別れてきたヤツらが、もう既にこの世にはいない可能性を。
出会って何日か一緒に話したってだけの仲だけど、もしそうなったら……少し悲しいな。
「あ〜、ダメだ。変な想像ばっかり頭の中に浮かんでくる。……シズク〜、俺の気を紛らわせてくれ〜」
「いきなりそう言われても困るんだけど。……言っとくけど後から文句言わないでよ?【冷風】」
唐突にシズクの体から風と共に冷気が発せられる。その風は瞬く間にこの空間を広がり、冷蔵庫のようにキンキンに冷やす。
「寒い寒い寒い寒いっ!!!???いきなり冷やしすぎだ!止めろっ!止めろぉお!!」
「はーい。……まぁ、でもこれでだいぶ気は紛れたでしょ?」
まぁ、そこは感謝してるけどさぁ。急にやってくるのは準備が出来てないから、心臓がビックリするんだよ。
『っていうかそんな器用に魔力使えるようになったんだね。』
「こっそり練習してたからね!」
へぇ、俺の魔力を吸っては寝るを繰り返してるだけかと思ってたが、シズクとシズクなりに努力してんだな。
『そういえば次の目的地はどこなんだい?』
「言ってなかったっけ?えーっと、なんか少し前にシアン達におすすめの場所聞いたじゃん?で、その内の1つが【ラーパル】だったわけだ。ってことで今回はもう1つの候補だった【バルド】に向かって行こうかと」
強者揃う街【バルド】どうやら武闘派のヤツらが腕試しにやって来るそうだ。何があるかはいまいちよく知らんが、俺がそこへ向かう目的は1つ。
そう、仲間集めだ。さすがにもう1人くらいは仲間が欲しいと思う今日この頃。
「多分近々、ウチの旅路に新たな道連れが入ってくると思う」
「そうなの!?」
「まぁ、多分だけどな。バルドで良い人材が見つからなかったら次の街でGETする」
個人的には高速で場を掻き乱す攻撃手が居てくれると助かる。もしくはヒーラーだな。とはいえ回復は最悪俺が覚えられるから、やっぱり攻撃手優先だな。
「どんな人が仲間になるのかなぁ♪」
おっ、なんかシズクがぽよぽよ飛び跳ねてる。ワクワクしてる気持ちが伝わってくるな。
『でもめぼしい人材を発見できたとして、そう簡単に仲間になってくれるのかな?』
「ふっ、イフよ。考えが浅いな。仲間になってもらうまで猛アタックするに決まってんだろ。」
『迷惑だねぇ』
「さすがに嫌がってたら引き下がるぞ?そこら辺の分別はちゃんとしてるからな。」
「僕の時は無理やり拉致したのに?」
「お前のあれは拒絶じゃなくてただのツンデレだから。」
『というかそろそろ着くんじゃないかい?』
マジ?そんなに時間経ったのか。その言葉に釣られて、窓の外から顔を出してみると、少し奥の方に少しこじんまりとした街が見えてきた。
なんの外見は特徴も無さそうに思えるが、一つだけ、異質で一際目立つ建物があった。
「なんだアレ……でっけぇぇ……」
言うなればイタリアのコロッセオの縮小版。見るからに闘技場に見えるその建物はこの街を象徴するものなのだろうと一目で分かった。
『久しぶりに見たねぇ、アレがバルドに多くの人が腕試しに来る理由だよ。』
「あ〜ね、そういうことか。完全に理解した」
「え?どういうことなの?」
「フッ、所詮は魔物。人の考えなど理解出来るはずもなぶぁっ!?」
シズクが俺の顔目掛けて体当たりをしかけてくる。質量のあるものが顎にヒットしたことにより、軽い脳震盪が起こり、意識が朧気になる。
「……うぉぉ……脳が揺れるぅっ……馬車の揺れも相まって吐きそう……おぅ……ふぅぅ……危ねぇ。ホントに吐くかと思った……おい、シズク。俺の朝ごはんを一身に受けたくなければ大人しくしてなさい」
「はーい」
怒れるシズクをなだめながら、街に着くまで馬車に揺られながら静かに座る。そして数分が経過したところで街の門の付近に到着する。
「そこの馬車止まれ!積荷の確認とライセンスの確認を行う!」
検問所の前に来るとゴテゴテの鎧に身を包んだ屈強な男が馬車を止める。街によって兵士の装備が違うの見てて楽しいね。
「積荷にライセンス、共に異常なし!ようこそ、我が自慢の街!バルドへ!」
兵士からの歓迎の言葉を受け、検問所を通過していく。その後、いそいそと馬車から降りて、ここまで運んでくれた御者の方に感謝の言葉を送る。
「ありがとうございまーす!」
「へ、へぃ……」
俺が感謝を送ると御者は何故かこちらに顔を合わせず、軽い返事だけして、どこかへ去っていった。
馬車での会話、ある程度小声で話してたつもりだったけど……もしや聞かれたか?確かに……傍から見りゃ、独り言多い変なやつだもんなぁ……そりゃ怖いか……
「……次の仲間は馬車の運転出来るやつにしよ」
『切実な悩みだね』
新たな街【バルト】そのど真ん中に存在する闘技場の正体とは?……そして傑はこの街でどんな縁を結ぶのだろうか。それは神すら知らないことであろう。
次回へ続く




