第二十九話『害虫駆除』
よぉ〜し、害虫駆除のお時間だ。張り切っていくぞぉ。
「やる気に満ち溢れてますけど、作戦はあるんですか?」
「あいつの凶悪な点は遠距離攻撃なんで、ヨミさんと俺の従魔のスライムで近距離戦に持ち込みます。2人が懐に潜るまで俺が全力でサポートする感じで」
「分かりました」
「任せてよ!」
シズクも既に騎士の姿へと変化している。戦闘準備はバッチリといった感じだな。
「じゃあ合図と共に突っ込んでくださいね。行きますよ。レディー……ゴー!」
俺の合図とともに2人は女王目掛けて突っ込んでいく。それを迎え撃つかのようにヤツは毒を飛ばしてくるが、操魔の手袋の力で毒を空中で静止させる。液体でも操作できるのは検証済みだ。
毒はこれでどうにかなるが、問題は糸だ。糸に関してはヤツと直接繋がっているから操作がしにくい。だから糸を発射しそうなタイミングで妨害を仕掛けるのがベストだ。
『糸を発射する際は必ず予備動作としてお尻が少し持ち上がるよ。そこを見逃さないように。』
「大丈夫。魔眼のおかげで見やすくなってるから、タイミングは間違えない……と信じたい。」
俺は事前に魔力で弓を象り、炎の矢をつがえる。他の攻撃が来ることも警戒しつつ、ヤツが糸を発射するタイミングを慎重に見定める。
そしてそのタイミングは思いのほか早く訪れた。
『今!』
「よし来た!火魔法【炎矢】!!そしておまけ!【炎連】!」
糸を発射する前に顔に炎の矢を直撃させ、ひるませる。隙が生じたので更に追加ダメージを与える。複数の炎の弾丸を展開し、胴体目掛けて撃ちまくる。
キュェアアアアアアアアアッッ!!!
「魔力増えたから気軽に撃てるぜぇ!ヒャッハァー!!!楽しいぃぃ〜!!!もっと悲鳴を上げろぉ!」
今までこんなに魔法を乱発できたことがあっただろうか。俺はかつてないほど魔法を楽しんでいる。何も考えずに魔法を放つ、それがどれほど楽しいことか。
ヤツは俺の魔法に悲鳴をあげ、一切の行動が出来ずにいる。今、俺はボスを完封している!これは余裕の勝てるな!ビビって損したぜ!
『そんなにバカスカ撃ってるとまた魔力切れになるよ?』
「またまたぁ、そんな不安煽っても意味ないぜ〜?まだ魔力は沢山……あれ?」
撃ちまくっていた弾が唐突に止んだ。すなわち魔法を撃てるだけの魔力が無くなったことを意味する。
「…………調子乗ったわ。」
『馬鹿だねぇ。』
まずぅい……いや、でも妨害しまくったから結構距離詰めれたし、体力もそこそこ削ったはずだから後は2人に任せるとしよう。
一応、俺が必要になったとき用にポーションを━━
◆◇◆◇◆◇
魔法が止んだ……?もしかして魔力切れだろうか。なら、魔力が回復するまでは援護は期待できないだろう。でもここまで近づけたのなら十分。
「スライムさん私の言葉分かりますか?」
私からの問いかけにスライムさんは軽く頷いた。どうやら私でも意思の疎通は可能なようだ。なら連携して戦えるはず。
「私が左、スライムさんが右で両側から叩きます。」
私の言葉が伝わったようでスライムさんは女王の右側面へと走っていく。そして女王の体を氷の刃で切りつける。
それにより、狙いがスライムさんへと向いたので私がフリーとなる。一気に接近し、魔力を纏わせた短剣で複数ある足を切りつける。
「【欠点付与】」
切り付けた場所を弱点と設定し、次にそこに攻撃を当てられればダメージが跳ね上がる。とはいえ再びヘイトがこっちに向いたから狙いずらくなったが、やるしかない。
攻撃を当てられてストレスが溜まったのか、先程より激しく足で私たちのことを踏み潰そうとしてくる。それを掻い潜り、弱点にナイフによる一撃をぶつける。
「【致命刃】!」
弱点に当てるとダメージが倍増する一撃を叩き込むことで、足を切断する。足を数本失ったことで、バランスを保つことが出来ず、体制を崩す。
「スライムさん!叩みかけます!」
私の意図を汲み取ってくれたようで、一緒に身体を駆け上がり、女王の頭部に辿り着く。そして目を潰し、視界を奪う。
キュィアアアアアアアッッ!!!
視界が奪われたことにより、女王は混乱状態に陥り、身体を大きく揺らしたり、毒や糸を四方八方に撃ちまくる。
危険な状態になったがここまでダメージを与えたならあともう少し。
「スグルさんお願いします!!」
「任された!」
邪魔にならないように頭部から急いで飛び退き、少し離れたところにいるスグルさんに最後の一撃を託す。
彼は手のひらを前に突き出し、そこに魔力で創った炎を集約させ、凝縮した炎を一気に解き放った。
「汚物は消毒ってな。炎魔法!フレイムブラスター!!!」
キィェアアアァァァァァッッ!!!
炎は女王目掛けて一直線に放たれ、身体を覆い、焼き尽くしていく。白い身体が黒く焦げ出し、炎振り払おうと暴れ狂うが、徐々に動きも大人しくなり、最後に完全に停止した。
「……はぁ……はぁ……今回は完全勝利だろ」
◆◇◆◇◆◇
「あぁ……疲れたァァァ……」
疲労感から地面にへたり込んでしまう。でも今回は魔力切れにはギリギリならなかったから成長したといえるだろう。
「スグルさん大丈夫ですか!?」
倒れた俺を心配してくれたようで、ヨミがすぐそばまで駆け寄ってくれる。……この感じからして結構好感度稼げたのではないだろうか?
「大丈夫です、ちょっと魔力使いすぎただけなんで。」
とはいえ体力的には結構キツイんだよなぁ。このまま蜘蛛倒しながら来た道を帰るのは多分無理だから魔法陣が出るまで一時待機だな。
「僕は疲れたよぉ……」
「おっ、お疲れ様。」
騎士の姿からスライムへと戻ったシズクが俺の膝に乗ってくる。なんか猫みたいな行動するなコイツ。
『調子に乗らなかったらもっとスムーズに倒せただろうけどね。魔力管理は大事だよっていつも言ってるだろう?』
「気をつけてるつもりだったんだけど、魔力量が増えたからどのくらい魔法撃てば魔力切れになるかの把握がまだできてないんだよ。あと楽しくなっちゃったからねぇ。」
いやぁ、あれはホントに楽しかった。今までの魔法に対する不満が全部解消された感じがしたんだよね。やっぱり乱射してなんぼよ。
「……あの」
「ぬ、なんですか?」
「色々助けて下さりありがとうございました……正直スグルさんを途中までただエッチなだけの人かと思ってました。」
おぅ……俺にはその時の記憶が無いからよくわかんないけど、かなり酷い評価貰ってんな。
「でも、少しだけ印象が変わりました。……あなたはエッチだけど良い人です。」
エッチは消えなかったかぁぁ……そこは残っちゃったんだ。あ〜、でも多分今が現状における好感度のピークだろうし、切り出すなら今しかねぇな。
「……そ、そっすか。なら友達になってくれたりします?」
「はい、私で良ければ。」
よっし!目標達成!やっぱり窮地を救ったりすると、好感度ってのは上がりやすいんだな。今後も参考にしていこう。
「おっ、出た。」
ヨミとしばらく雑談していると、部屋の奥に魔法陣が現れる。俺たちは疲労で重くなった身体を起こし、魔法陣へと向かっていく。
「それでは、帰りましょうか。」
そのまま一緒に魔法陣の中へと入り、光に包まれる。……ってか前回も思ったけど眩しっ!!突然懐中電灯を向けられた時の感じに似てる。
光が消えると、ダンジョンの入口へと戻っていた。転移は3回目だがやはりワクワクするな。現代人が思い浮かべる便利魔法の頂点みたいなところあるしな。
「とりあえずギルドに行かないとなぁ。報酬とナスカに調査結果伝えないとだし。」
ってなわけで、ギルドに行って、ヨミと一緒にナスカの元へと向かったのだが。
「お疲れ様〜!」
会って早々、ヨミがナスカに抱きしめられる。前々から思ってたけどナスカって可愛い女の子が好きなんだな。百合ってことか。ヨミは嫌そうな顔してるけど。
「離れてください……暑いですっ。」
「そんなこと言っちゃって嬉しいくせに〜。」
「スグルさん助けてくださいっ!」
「百合の間に挟まるのはダメって古事記にも書いてあるしなぁ。どうしよっかな。」
「スグルくんちょっと席外してくれたら、報酬ちょっと増やすよ。」
「ヨミさんファイト!」
「えっ!?待っ!」
こちらに助けを求めるヨミに手を振りながら扉を閉める。ここからは百合百合展開だから邪魔しないのが正解だろう。すまんな、俺は友情より金を取ったぜ。
その後、少し経って戻ったら頭にたんこぶを作ったナスカが正座させられていた。そしてにっこりと笑顔浮かべたヨミがこちらに近づいてくる。圧がすごい。
「正座。」
「えっ、あっ、」
「正座。」
「……はい。」
その後、ナスカの横に正座させられて、小一時間ほど説教されたのであった。やはり友情を取るべきだったのかもしれない。でも俺は反省してない。
「スグルさんちゃんと聞いてます?」
「はい!」
『仲良くなった途端こうなるなんて、やっぱり傑は面白いね。』
《第2幕 終》
ボスを見事討伐し、ヨミと友達になることに成功した傑!縁を増やしながら着実に成長を重ねる傑たちの今後に注目あれ!
次回へ続く




