第二十八話『蜘蛛の女王』
「はっ!……ぉぁ……ん?……なんで俺倒れてんだ?……なんか顔がヒリヒリするし。」
……うーん、ある地点からの記憶がない……確かヨミと蜘蛛倒して、そのあとは……
記憶を探ろうとしていると、ヨミが俺のことを見下ろしているのに気づいた。
「あっ、ヨミさん。なんか蜘蛛を倒したあとの記憶が抜けてるんですけど、なんかありました?」
「なにもなかったですよ。起きたなら早く動いてください。置いていきますよ。」
…………なんか怒ってね?表情には出てないけど、声がなんか怒ってる気がするぞ?
「なんで怒ってるんです?」
「怒ってませんが?」
「いや、絶対怒ってますって!だってさっきから俺のこと不快なものを見る目で見てますよ!?」
「うるさいですね。静かにしないと蜘蛛の巣の中にぶち込みますよ。」
「あっ、はい……分かりました……」
……あっれ〜?仲良くなるどころかむしろ嫌われてるぞ〜?……何故だ?一体何があった?
「やっぱりさっきの作戦、逆効果だったんじゃないの?ヨミさん機嫌悪くなってるし。」
『距離は縮まったんじゃない?さっきより会話がしやすくなってるとは思うよ。印象は悪くなっただろうけど。』
「お前らなに内緒話してんの?」
『平和とはなにかについて。』
「すっごい哲学的な話題だな。どうせ嘘だろうけど。」
まぁ、イフたちが何を話してたかなんてのはどうでもいい、今はどうやってヨミの機嫌を良くするかを考えなければ。
少なくとも俺が何かをやらかしたのは明白だ。じゃないと急に怒るなんてことはないだろうしな。……ならすぐに謝るべきだな。俺が何をしたのかは記憶がない以上考えても無駄だし、これ以上悪化させるのはまずい。
「あ、あのヨミさん……すみませんでしたぁっ!!!!」
「……なんですか急に。……何やったか覚えてないのに何について謝ってるんですか。」
ぐっ!痛いところを突いてきやがる!ならばもう素直にいく!!
「おっしゃる通り何やったかは全く覚えてないんですけど!状況から僕が悪いのは明らかなので早急に謝ったほうが良いと考えた結果です!!本当に申し訳ありませんでした!!!」
どうだ?これでダメなら土下座も追加で付いてくるぞ!
「……そこまで考えられるのになんであんなことしたんですか。……はぁ……わかりました。二回目はありませんからね。」
「了解しました!!」
やっぱり素直にゴリ押しすればどうにかなるもんだな。許しを貰ったし、ここから挽回していこう。
「あそこから許されるもんなんだね。」
大概のことはすぐに謝れば許してもらいやすいのだ。だから良いの子のみんなは悪いことしたらすぐに謝るんだぞ!………………誰に向かって言ってんだ俺。
「そーいえば、この依頼ってどこまで調査するんでしたっけ?」
「このダンジョンの最奥、蜘蛛たちの女王【スバイダークイーン】が待ち構えているボス部屋の前までです。」
「女王ってどんな感じなの?」
『さっき出てきた蜘蛛を何倍も大きくしたような感じだよ。まぁ、他のダンジョンのと比べたら倒しやすいボスではあるけどね。』
さっきの何倍もデカい蜘蛛が比較的倒しやすいボス?やっぱりこの世界難易度ハードモードだな。転生者に優しくねぇわ。
「あと少しでボスがいる部屋にたどり着くので頑張ってください。」
「了解です!!」
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あれから少し歩き、多少の蜘蛛を駆除しながらボス部屋らしき扉の前へとやってきた。中にいるボスの大きさにしては小さい扉だ。
「ここの先にボスがいるんすね。」
「はい。ですが今回は討伐が目的ではないのでこのまま帰還しましょう。」
個人的には新しいボスとも戦ってみたかったが、ヨミを巻き込むのも好感度下がりそうだししょうがないか。
というわけで帰ろうと来た道を振り返ると、なんとこちらに向かって凄まじい勢いで突っ込んでくる蜘蛛が複数匹。
「えっ、嘘ぉぁっ!?」
「きゃっ!?」
突然の事で対応に遅れたため、そのまま蜘蛛の突進で吹っ飛ばされ、背後の扉にぶつかり、ヨミ共々ボス部屋に叩き込まれてしまう。
「いったぁ……!……ヨミさん大丈夫ですか?」
「は、はい。防御に徹したので軽傷で済みました。それにしてもあの蜘蛛はどこから……」
『多分天井とかに潜んでたのが、こっそり着いてきてたんだろうね。そんなことよりさっさと覚悟決めた方がいいよ。』
覚悟?………………あっ、そっか。ボス部屋に叩き込まれたってことは、今俺たちがいる場所は…………
そんなこと思っているうちに出口である扉が突然閉まる。……絶対に逃さないっていうダンジョン側の意思を感じるな。
「……ッ!」
背後から何かが動いている気配を感じる。音はあまり聞こえないが、俺の危険信号がその場から早急に逃げろと訴えている。
「ヨミさんすぐにそこから離れてください!!!」
「えっ?」
直感に従い、急いで横に飛び退く。俺の元いた場所を見ると糸のようなものが伸びていた。
「……ッ!?なに……これっ……!」
「えっ!?ちょ、離れてって言ったじゃん!!」
ヨミは逃げ遅れたようで、伸びてきた糸に手足を絡め取られて、そのまま宙に吊り下げられる。
「助けるんで身動き取らないでくださいよ。火魔法【火切】!」
炎の刃で糸を切断し、落ちてくるヨミを華麗にお姫様抱っこで受け止める。ちなみに受け止める手段としてお姫様抱っこを選んだのは好感度上げのためである。
「あ、ありがとうございます……」
「感謝はあと!もう戦闘は始まってますよってあぶなぁい!!!」
こちらに目掛けて明らかに毒としか思えない色の弾が飛来する。話してる最中なんだから空気を読んでほしい。
「…………ってかデカすぎんだろ…………虫なら虫らしく小さくあるべきじゃねぇの?」
先程から色々なものが飛んできている方向を見ると、そこにはゾウを彷彿とさせる程に巨大な白色の蜘蛛が複数ある赤い目でこちらを見据えていた。
『虫が嫌いな人からしたら失神しそうなくらいの大きさだね。まぁ、ヨミちゃんと協力すれば今の傑なら勝てるよ。』
「僕もいるしね!」
勇気づけありがたいんだけど、勝てるビジョンが全く浮かばないんだよなぁ。そもそもデカイ虫とかめちゃくちゃ怖いんだが。
それと気にしないようにはしてたけど、さっき飛ばされた毒の弾が落ちた地面が溶けてるんだよな。アレに当たってたら多分俺は今頃骨にされてただろうな。
『スパイダークイーンの凶悪なポイントは糸と猛毒の球による遠距離攻撃だからそれに気をつけていれば負けることはないよ。」
「なるほどな。じゃあ接近戦をしかけた方が良いな。……よし!だいたい作戦も固まったし、2度目のダンジョン踏破と行きますかね!」
「あの……そろそろ降ろして貰えませんか……?///」
「あっ、すんません。」
ダンジョン調査に出向いた傑であったが、トラブルによりボス部屋へと叩き込まれてしまう。果たして誰1人欠けることなく勝つことは出来るのだろうか!
次回へ続く




