第二十七話『バーバリア坑道』
「お〜、結構遠くまで見えるんだなぁ。カメラをズームしてる感覚だな。」
何をしているのか疑問に思った諸君。説明しよう!魔眼の効果がどんな感じかを窓の外を眺めながら試しているのだ!以上!説明おしまい!
「結構落ち込んでたのに結果的に楽しんでるね。」
「期待してたものとは違ったけど、新しい力には変わりないからな。試したくなるのが人間よ。」
「その目って、どこまで見えるの?」
ナスカもこの魔眼の性能が気になったようで、おもちゃを見るような眼差しで聞いてくる。
「え〜っと……最大であそこの赤い建物の中が見えるくらいです。」
「かなり遠くまで見えるんだね。ここから少なくとも数百メートルは離れてるのに。」
なかなかに便利な能力を得たな。使う時は左目閉じないと遠近感バグって頭おかしくなるけど。
「……よし!魔眼にはそこそこ慣れたし。帰ろうかな。」
「あっ、ちょっと待ってくれる?」
「まだなんか用がある感じですか?」
「そうそう。ってかどっちかというとこの話をしたくて呼び出した感じ。」
……この流れ、なんかめんどくさいことをやらされるような予感がしてきたぞぉ……
「君に依頼を頼みたいんだよね。どうかな?断ってくれても別にいいんだけどね。」
「……依頼?」
「そう。まぁ、特に難しい内容じゃないよ。とあるダンジョンの調査に行って欲しいってだけ。」
「めんどくさいですねぇ。ちなみになんで俺なんすか?」
「ちょうど居たから。」
「じゃあ僕以外でも良くないですか?」
「まぁ、そうなんだけど。でもせっかくなら強くなった自分の力試したいんじゃない?」
おっと、バレてるか。この俺の厨二魂が疼いていることを見抜かれたな。でもそれだけじゃ、働きたくないな〜。
「……報酬を通常より多くしてくれるなら」
「二割増しでどう?」
「よし!お願いされたら断れないからな!その依頼きっちりこなしますよ!」
『相変わらず金の亡者だね。』
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ラーパルから少し離れた山に存在するダンジョン【バーバリア坑道】
どうやら虫系の魔物が多く出現するらしい。
一応、俺だけでダンジョン潜るのは不安だから、1人付き添いで腕利きの冒険者の方に来てもらっている。
「本日はよろしくお願いします。」
「あっ、はい。よろしくお願いします。」
ナスカの紹介で来たのは【ヨミ】という名の片目が髪で隠れている可愛い銀髪の女の子だ。短剣を用いて戦うBランク冒険者との事。
「基本的に私が前線で戦うので、その援護をお願いします。」
「了解でーす。」
『今回は2人だけでダンジョン潜るわけだから油断しないようにね。強くなったからとはいえ、傑は元が弱いんだから』
「分かってるよ。そう簡単に油断はしないって。何度も痛い目にあってるからな。」
そう、毎度死にかけてるからな。ウルフと戦った時もゴーレムと戦った時もあの新種の魔物と戦った時も、一歩間違えたら死んでるような戦いしかやってないからな。
「ヨミさん。」
「なんですか?」
「今回全力であなたに頼ることになりますから、覚悟しておいて下さいね!!」
「は、はぁ……分かりました?」
ヨミは突然の介護要求に困惑の表情を浮かべる。ファーストコンタクトで早速ヘマをしたかもしれない。
「……とりあえず、こんなところで止まってても時間の無駄ですから、さっさと行きましょう。」
ヨミに先導され、早速坑道の中に入っていく。中は思ったより広く、各所に蜘蛛の巣が張り巡らされている。
「なんだっけ、虫が出るんだっけ?」
『そうだね。結構気持ち悪い見た目してるから私は好きじゃないんだよね。デカいくせに俊敏だし。』
「僕は虫平気だよ!」
「俺はデカさによるかな。多分、虫の魔物ってことは俺が思ってるよりデカいでしょ。」
人間サイズの芋虫とかが這ってきたらさすがにキモイからな。やはりサイズが肝心だよな。
「にしても坑道なのに明るいんですね。」
「そうですか?私は暗く感じますが。」
あれ?あぁ、そっか。魔眼の効果か。片目だけ反映されるものかと思ってたけど明るさ補正は両目にかかるのね。ハイパー便利だな。
「……」
「……」
……それにしても、会話がねぇ!!このままでは特に縁を深めることなく終わっちまうぞ!!
くっ、な、何か話題を……話題を捻り出さねば!
「あ、あ……あの〜、ヨミさんってなんで冒険者になったんですか?」
「……その情報は仕事に必要ですか?」
「……ぇ、あ、いや仲良くなりたいっていうか……あの、」
「……私と仲を深めたところでお互いメリットがあるとは思えませんが。」
「いや、そんなことは……」
……くっそぉー、会話を広げるつもりがないなぁ?……陰キャが頑張って仲良くなろうとしてんだから受け止めてくれよぉ。
『冒険者の中には他者と関わりを持ちたくない子も少なくないからね。この子もそういう感じなんだろう。』
今までの人達は結構フレンドリーだったけど、ヨミはただ仕事をしてるだけって感じで淡白なんだよなぁ……でも何とかして仲良くなりたいよなぁ……
……ふっふっふ……よし!決めたぞぉ!俺は絶対、今回のダンジョン調査でヨミと仲良くなる!それが今回の目標だぁ!!
「またスグルが変な顔になってる……」
『どうでもいいこと考えてるのは間違いないだろうね。」
「どうでもいいことじゃな……ん?ヨミさんちょっと待ってください。」
「どうしました?またなにか聞きたいことでも?」
違和感を感じたのでヨミを引き止めて坑道の奥の方を観察すると、何かが大きいものが蠢いているのが見えた。
「違います。……この先になんかいます。多分4匹ほど」
「分かりました。では、こちらから先手をうちましょう。」
「じゃあ俺が魔法撃ってこっちに寄せるんで、向かってきたヤツを迎撃してください。」
よーし!強くなった俺の力見せてやるよ!前よりも強力な魔法をイメージ出来そうな感覚があるからな。
虫に有効なのは恐らく火。欲しいのは遠くまで届く一撃。なら形成するイメージは「弓」
魔力で弓の形を構築し、次に矢を形成する。
「準備完了。火魔法【炎矢】!」
炎の矢を引き絞り、一気に放つ。すると坑道の奥の方で1匹に直撃し、炎上する。
「来ます!」
残った3匹が混乱したのかこちらへと一直線に突撃してくる。その姿は蜘蛛を人間の半分ほどのサイズに大きくしたような見た目をしている。
「うわっ、キモっ。」
めちゃくちゃキモい。果てしなくキモい。
『あ〜、あれはスパイダー種だね。多分ハンタースパイダーかな?』
【スパイダーの解説】
・種族名:魔蜘蛛
・人間の半分程の大きさの虫。お尻から糸を出して相手をがんじがらめに拘束するという技を使ってくる。
・酸性の溶解液を吐いてくることもある。
・粘着性のある糸で作られた巣を作り、そこに他の生物を引き込んで捕え、捕食するという習性を持つ。
「こいつらの名前にハンターが付いてる理由は?」
『捕らえるのが仕事だからかな。巣に持ち帰って、蜘蛛たちの女王に渡すっていう働き蜂的な感じのやつだよ。』
へぇ〜。ってことは倒さないと俺らは蜘蛛にむしゃむしゃされるわけね。
「ヨミさん頑張れー!」
「……付与【魔装】」
ヨミは短剣に魔力の刃を纏わせ、向かってきた蜘蛛を一瞬で切り裂き、全滅させる。
「……わぁお。お見事。」
「ありがとうございます。」
強ぇな。これがBランク冒険者か。まだまだ差を感じるなぁ。俺もこんな感じで無双できる日が来るのだろうか。
「先に進みましょう。」
ヨミは一切表情を変えずに黙々と前に進んでいく。
……まずいなぁ。このままだと仲良くなる前に終わっちゃうぞ。
「……どうしたら仲良くなれんのかなぁ。」
『ヨミちゃんと仲良くなりたいの?』
「そうそう。やっぱり冒険者同士だし、仲を深めた方がいいでしょ。」
『確かに一理あるね。じゃあここはラッキースケベ大作戦でもやってみたら?』
「なんだその下心しかねぇ作戦は。嫌われるに決まってんだろ。」
『古今東西、ラッキースケベをしたら距離感が縮まるっていうのがあってだね。やってみたら良いんじゃない?』
えぇ〜?ホントにそんなんで距離感縮まるかなぁ?……あ〜、まぁたしかにラブコメとかでよく見る気がするし、やってみるか。
ちょうどいいのあるしな。この周りのものを操る手袋ー!これを手にはめて、魔力込めて。ヨミのスカートを一気に〜!
バサッ!
「なっ!?///」
ものを操る効果でスカートを浮かせて、擬似的なパンチラを引き起こす!よし、ラッキースケベ成功!
まぁ、距離感縮まらなかったにしても、女の子のパンツとそれを隠す恥じらった顔見れただけで良し!
「……にしても白ぶべらっ!!」
恥じらってるヨミを見ていたら気付かぬうちに足が顔に迫ってきており、とてつもない衝撃が走ったと共に目の前が真っ暗になるのであった。
「……最低……っ///」
意識を失う間際、最後に聞こえたのはヨミの怒りを孕んだ声であった。
ラッキースケベ大作戦は果たして成功したのだろうか。そしてこのダンジョンでヨミと仲良くなれるのだろうか!
次回へ続く




