第二十六話『強化2』
ギルドマスター襲撃事件から少し時間が経って、怪我が癒えたギルマスに感謝したいからって再び呼び出されたので現在ギルドの待合室にて待機中。
「いや〜、なんやかんやでまたこのぷにぷにボディに戻ったな。」
膝の上に乗せたシズクをひたすら揉みしだきながらそんなことをつぶやく。
あの後、宿屋に帰ろうとしたら、シズクの大きさ的に宿屋に入れないことが判明して、どうにかして小さくならないか色々と試してたら、体が自在に変形できるということが判明したので、元の丸っこい体に戻したのだ。
「ぷにぷにしないでほしいんだけと?」
「手持ち無沙汰なんだ、諦めろ。良い感じに冷たくて触り心地が良いのが悪い。」
どうやら氷系のスライムに進化したらしいけど、なんで氷なんかね?普通なら水に進化しそうだけど。
『ナスカの魔力を吸ったのが影響して氷属性になったっぽいね。ナスカの得意属性は風のようだし。』
「あ〜、風と水で氷ね。なるほどそういう感じか。」
色も若干薄くなって、白っぽくなったな。これじゃあ最終形態はヨーグルトみたいに真っ白になるんじゃなかろうか。くだらないことを考えながらしばらくシズクをぷにぷにしてると、待合室の扉が開いた。
「待たせたね。」
「おっ、ナスカさん。調子はどうです?」
俺はナスカの足へと目を向けると、何やら切断された箇所にソケットっぽいのがはめられており、その先には木の棒が着いていた。
「歩きにくいったらありゃしないよ。急ごしらえのものとはいえ、もっと品質のいいものを作らせるべきだったね。」
あの後、教会に行ってナスカの足を治療しようと回復魔法をかけたらしいが、どうにも時間が経ち過ぎていたようで、傷を塞ぐことは出来たが、くっ付けることは出来なかったようだ。
「大変ですねぇ。」
「他人事みたいな言い方するねぇ。」
「実際他人事ですし。」
「違いないね♪」
軽く雑談を交えながら、早速本題に入る。
「それで?なんで今日は俺のことを呼びだしたんですか?」
「昨日、私が襲われた時助けてくれたお礼だよ。そこのスライムにもね。」
「頑張ったらしいもんな。」
「えへへ〜♪」
「そんな命の恩人である君たちにはこの【ウェーナートルの魔石】をプレゼントしよう。」
そう言い、目の前に出されたのは拳大くらいの光り輝く魔石。なんか石の中で魔力が渦巻いてるんだけど、これヤバイやつなのでは?
「ウェーナートル?」
「あぁ、偶然ダンジョンの宝箱から掘り当てられた魔石だよ。元はどんな魔物だったか知らないけど、強力な魔物だったのは間違いないだろうね。」
「ほへぇ〜。」
多分、ラテン語で猟師を意味するvenatorか。なかなかに強そうだな。……え?なんでそんなこと知ってるのかって?
俺の中に秘められし闇が解き放たれてた頃にラテン語とかドイツ語を調べてた名残だ。
『ウェーナートルか。なかなかに凄いやつの魔石貰ったね。昔に生息してた魔物でイメージ的にはウルフの最上位版みたいな感じだよ。観察眼に優れた魔物だったはず。』
むちゃくちゃ強い獣とか、凄い男の子心をくすぐってくるじゃないか!
「これくれるんですか?」
「元々オークションで売りに出そうと思ってたものだし、冒険者を辞めた私にとってはあんまり使い道のないものだからね。君たちが好きに使うといい。」
命の恩人になってて良かったァ!!いえ〜い!やっぱり人を助けると自分に返ってくんな!
「……とはいえこれどう使おうかな。……………………食うか。」
「えぇっ!?そんな貴重なもの食べるの!?勿体なくない!?」
「おっ、食べるのか?面白くなりそうだし、やってみな!」
「なんでこの人も乗り気なの!?」
「あっ、シズクも食べるか?お前が1番活躍したし。」
「え?いいの?」
「じゃあ半分こしますかね。」
「「いただきまーす!」」
剣で良い感じに半分に割って、そのまま口へと放り込む。やはり無味無臭だな。こんなに禍々しい見た目なのに。
ガリッ!バリバリッ!!ゴクンッ!
「…………あんまり変化なし……ッ!?おわぁぁああああっ!?」
飲み込んだ瞬間、体が燃えるように熱くなり、目に凄まじい痛みが走る。
「なにこれなにこれっ!!?痛い痛い痛いッッ!!??」
「熱ッ!?」
魔石を食べたことで地面で悶え、転がりまくっているスライムと人間という謎の構図が爆誕する。
『あまりの魔力の濃さに体が悲鳴あげてるっぽいね。死にはしないから安心していいよ。』
安心出来るかぁああ!!!めっちゃ熱い!!目がぁぁぁぁあああああ!!!!
「……食べさせない方が良かったかな?」
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「……はぁ、はぁ……ようやっと落ち着いたわ。……あぁ、しんど……」
数分間、床で転げまわってようやく、痛みや熱が治まってきた。まじでやばかった。弱りきった時のインフルエンザくらい酷かった。
「大丈夫?」
「ま、まぁ、一応大丈夫です?」
『なんで疑問形?』
「また進化するかと思ったよ……そのくらい濃い魔力だった……」
いやぁ……パワーアップ要素で悶え苦しむのは定番といえば定番だけどこれ程とは驚き桃の木ですな。
「それで、何か変わった?」
「魔力量が結構多くなった感じしますね。元の何倍かくらいには。」
ソシャゲで一気にレベルアップの素材をぶち込んまれたキャラの気持ちってこんな感じだろうな。
『傑の場合は元が低いから何倍になったところで凄く強くなったわけじゃないけどね。それでも普通の冒険者よりは魔力量多くなったんじゃない?』
「僕もなんか強くなった感じがする!前よりも体の調子が良い!」
食っただけでこうなるとは……元の魔物どんだけ強かったんだって話になるよなぁ。想像したくねぇや。
「それは良かっ、……んっ?スグル、なんか右目おかしくないか?」
「え?何、死んだ魚のような目ってバカにしてます?」
「そんなことは言ってないよ。とりあえず自分で見た方が早いからそこに鏡あるから見てみな。」
全く……人の容姿をバカにするとか良くないと思うんだけどなぁ……えぇーっと?目がどうなってるって?
部屋の隅にある鏡の前に立ち、自分の目をじっくり観察する。……すると
「なんか右目青くなってるぅ!!なぁにこれぇ!?かっこいい!!」
オッドアイになっちゃったよォ!すっごい……わぁお……語彙力消滅しちゃった。
『おぉ〜♪まさか魔眼を獲得するなんてね。運が壊滅的に悪い君でもこんなことあるんだね。』
まがん……今、魔眼って言いました!?……き、き、来たぁあああ!!!やったあああ!!!チート要素だぁあ!!!!
「……あぁ、これから始まる俺の無双物語……タイトルは【貧弱な転生者が魔眼に目覚めて異世界を無双する。】で決まりだな。」
『まだ効果も言ってないのに舞い上がりすぎじゃない?』
「何言ってんだ!魔眼はだいたいチートって相場が決まってるもんだろうが!」
「…………(虚空に向かって話してる……魔石食べて頭おかしくなったのかな。)」
「それで結局能力はなんなの?」
『えーっとね、確かそれは。【天狼の魔眼】だったかな。』
名前までかっこいいとか反則じゃないっすか!将来的に2つ名まで付けられちゃいそ〜!!
『効果は【よく見える】だね。』
「…………おぉ?……それだけ?」
『うん。遠くまでよく見えたり、暗い場所でも周囲が見えたりするって効果。君が期待してるような弱点を見つけるとか、鑑定とかそんなのはないよ。』
「良かったじゃん!結構使えそうだよ!」
「………………うん。」
……なんて言えばいいんだろう。強いは強い。便利だし。うん…………でも、でも。
「……ちょっとちがぁああうう……っ」
なんとも言えない気持ちになりながら有頂天まで上がっていたテンションが、徐々に徐々に下がっていくのであった。
今回様々な強化を受けた傑。増加した魔力と魔眼を武器に今後もさらに活躍していくことでしょう!
次回へ続く




