第二十三話『第二の関門』
傑たちが謎の魔物と対峙しているのと同時刻、3人組の冒険者がメナス草原に訪れていた。
よぉ!俺の名前は【ザックス】!自慢の戦斧をぶん回して魔物を狩りまくる優秀なBランク冒険者だ!
「何やってるんですかザックスさん。そんなとこで変なポーズ決めて。恥ずかしいですよ」
そして俺に苦言を呈す、ローブを身にまとった緑髪の彼女は【マリー】まだ彼女が初心者だった時に魔法使いとしての素養を見抜き、パーティーに勧誘して今に至る。
「ザックス殿がたまに変なことをしだすのはいつものことであろう。今更気にすることでもない」
フォローになっていないフォローをするこの凛々しい顔立ちの黒髪イケメンは【シラギ】飢え死にしそうだったところを助けた結果、「命を救ってもらった恩を返す」といって俺たちの仲間になった。ロングソードを巧みに扱う頼りになる剣士だ。
「お前ら俺の扱いをもっと良くしろよ〜、一応俺最年長だぜ?」
「ザックスさんが最年長っぽい行いをしてるところを見た事ありませんから。」
「ザックス殿は戦いでは非常に頼りになるが、こと生活面においてはダメダメであるからなぁ」
「なんだとぉ!?シラギ!お前こそ金遣い荒くてマリーに説教されてんだから人の事言えねぇぞ!」
「ぐっ!痛いところを突く……」
「もぉ〜!2人とも気が緩んでますよ!ここら辺はもう魔物の生息地なんですから!新種の魔物が出るかもですし。」
「むぅ……それもそうであるな。」
今回来たのはメナス草原。どうやらここに今まで見た事ないような魔物が出現したという情報が出たから俺たちが調査に来た訳だが……
「とはいえもう2時間近く探してるが、コボルドとかスライムばっかしか出ねぇし、新種の魔物なんていないんじゃねぇのか?」
「う〜ん、でもまだ調査初めて2時間ですし、これだけでいないと断言するのは難しいですよ。」
「目撃情報はあるが、正確な見た目が分からないそうだ。どうやら霞んで見えるらしい。」
「霞んで見える……霧状の魔物か?」
「可能性の話であるがな……もっともそれなら見つけるのは困難であろう」
「はぁ……めんどくせぇ……とりあえず近くの安全な場所でキャンプ地を立て 「どわぁぁああああああああああああ!!!!!!」 な、なんだなんだ!?」
周辺に叫び声のようなものが響き渡る。その声が聞こえたと同時に俺たちは一気に警戒心を高めた。
「……あ、あれは?」
マリーが指を指した方向を見ると、スライムを抱えた男が全力疾走でこちらに向かっている光景が目に入った。
「なんだ……あれは?」
もちろん、男の方も気になるのだが、そんなことがどうでも良くなるほどの異質な何かがその男を追いかけていた。
「あっ!居たぁああっ!助けてぇぇぇぇぇえええ!!」
そのまま男は俺たちの方へと駆け寄り、盾にするように背後に隠れた。
「おっ、おい待て待て!!」
「すいません!説明はするんで一緒に戦ってください!!このままだと俺殺されます!!!」
「くっ……嘘だろっ!!」
恐らくこの鳥?が新種の魔物なのだろう……見た目から分かる、こいつはやべぇ生物だ。舐めてかかったら……死ぬ!
「あ〜クソッ!俺らを巻き添えにしたんだからお前逃げるんじゃねぇぞ!」
「はい!多分逃げません!あっ、あと俺の名前はスグルって言います!」
「……ふむ、思ったよりも早く接敵したな……果たして俺の剣が通用するかどうか」
「今までで遭遇した中で1番手強そうな敵ですね……気を引き締めましょう!」
グェェエエエアアアアアアアアアアア!!!!!!
「お前ら!戦闘開始だ!」
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「いやぁ……まじで他の冒険者見つけられてよかったァァ」
いや〜、めちゃくちゃ逃げ回ったせいで体力が尽きるかと思ったんだよなぁ……良い感じに強そうな人がいてよかったぁ……
『私に周辺の人を探させて、見つけた途端、そのまま一目散に突っ込んで行ったもんね。クズっぷりがすごいよ』
「この人たちすっごい可哀想」
「それで!こいつの情報は!?」
あっ、そうだった。今戦闘中だったわ。あかんなぁ、ほかの人もいる安心感からか気が抜けてたわ。
「えーっと、なんかデケェ鳥で、体に魔石が突き刺さってるっていう見た目通りの情報しかありません!」
「マジかよっ!ほぼ情報なしか……じゃあお前は何が出来る!」
「俺は主に水の魔法が使えます!それ以外は期待しないでください!」
「……なるほど…………ならマリーとスグルは後方から援護しろ!俺がヘイトを稼ぐからシラギはやつの背後から叩け!」
「「「了解!」」」
まずはザックスが先陣を切る。相手の攻撃が当たらない位置を見極めながら斧による攻撃を仕掛ける。
ザ「喰らえっ!!【破降】!!!」
力任せに斧をヤツの巨体目掛けて振り下ろす……しかしその一撃は空気を切り裂くかのように体をすり抜けていく。
「なっ!?」
ギュェアアァ!!!
ヤツは斧を振り下ろした隙を突き、その巨体を活かした体当たりで、ザックスのことを吹き飛ばす。
「ごぁっ!?」
「ザックスさん!?」
はぁ!?……今、攻撃通らなかったよな?どうなってんだ?
「マリー殿!早くザックス殿の治療を!時間は俺とスグルで稼ぐ!」
「は、はい!」
吹っ飛ばされたザックスの元へとマリーが駆け寄り、回復魔法をかけ始める。そして俺とシラギは目の前の魔物と相対する。
「時間稼ぐっていったってどうやるんですか?多分ですけど攻撃通らない感じしますよ?」
「少なくとも実体がないわけではない。ザックス殿を攻撃できたということは何らかしら理由がある。それを戦いの中で見つけるしかない」
「分かりました……でも最悪、全員で逃げることも視野に入れておいてくださいね?」
「了解した。」
さてと、とりあえず魔法は当たるのかどうか検証してみよう。
「水魔法【水弾】」
水の弾丸を複数生成して撃ち出すが、予想していた通り、体をすり抜けてしまう。
「やっぱりだめか……イフ、あの魔物が何なのか分かるか?」
『……いや、私も知らない。こんな魔物は見たことがないね。こんな異質な生物、普通に生息してる訳が無い』
女神の管轄外の魔物か……ってことは弱点とかの情報は皆無ってわけね……
グェェァアアアアア!!!
「来るぞ!」
先程のような体当たりではなく、今度は羽を大きく羽ばたかせることで魔力の竜巻を発生させた。
ウッソだろ!範囲攻撃持ちかよ!?
素早く横に避けて、竜巻の軌道上に入らないようにする。しかし上手く回避したつもりになっていたが、回避した先に既にヤツが突っ込んで来ていた。
「ちょっ!?回避後の隙を突くとか……っ!」
急いで体を伏せることでスレスレで突進を回避することに成功する。
「っぶねぇ!こいつ知能高めだなっ!?」
俺らの行動を予測して、その隙を突くような行動をしてくる。しかもさっきから魔法や武器で攻撃してんのに全てすり抜けてダメージになっていない。
「…………これ攻略できるのか?」
「やってみないことには分からないであろう、何か弱点のようなものがあるはず…………確か目撃情報では霞んで見えるという情報があったな。」
「……ってことは鳥の形した霧状の魔物とかの可能性があるってことですか?」
「可能性としては……ただ、それだと何故ザックス殿に攻撃できたのか理由が分からぬ」
「……どうするべきだ?」
「恐らくやつは攻撃の際にのみ実体化する!」
不意に背後から声をかけられる。
「お前らよく持ちこたえてくれた!」
その声は先程ヤツに吹っ飛ばされ、瀕死になっていたザックスものであった。
「ザックス殿!もう大丈夫なのか!?」
「あぁ、マリーの魔法は優秀だからな……そんなことより、ヤツの話だ!さっき攻撃を喰らった時、間違いなく俺はやつに触れた。」
「ですから少なくとも攻撃の瞬間には実態化しているってわけです!」
「でも攻撃の瞬間にカウンターを与えるとなると、相打ち狙いで戦ったり?」
「さすがにそんなわけはねぇ、1度喰らったからよく分かる。あれは運が悪ければ一撃で死ぬ!」
「じゃあどうするのだ?」
「スグルとマリーにヤツの動きを止めてもらう!」
「……え?……俺に何をしろと?」
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【まずは俺とシラギでどうにかして体当たりを引き出す。まずはそれからだ】
「って言い出したのはいいが、どうやったら良いんだか。なんか思いつくものあるか?」
「まぁ、いつも通りやればどうにかなるであろう。」
そう言いザックスとシラギは各々武器を構える。
「オラァッ!」
「せいっ!」
ザックスが斧を振り下ろし、その隙を埋めるようにシラギが剣を横へ薙ぐ。無論、その攻撃は1つも当たることは無いが……
ギュェアアアアアアア!!!!
怒りを買うことには成功したようで、そのまま少し離れた2人へと、体当たりを繰り出す。
「来たぞ!2人とも!」
「「了解!」」
【まずはスグル、粘性の水をイメージしろ。糊みてぇに触れたものに引っ付いて離れないような水だ!】
「なかなかに無茶なこと言うねぇ……シズク、手伝え!」
「分かった!」
イメージは比較的容易、シズクと共に水の球体を創り出し、そこに粘性のイメージを加えていく。
「名付けて!水魔法【糊檻】!」
突進して来たヤツを包み込むように水を広げ、一気に閉じ込める。
グギャァ!?
「フッハッハッハ!どうだ!張り付いて抜け出せないだろ!!さぁ!マリーさん!やっちゃってください!」
「分かりました!」
【そして上手いこと拘束できたら、マリーの1番得意な魔法を叩き込め!】
「このチャンス、無駄にはしません!雷魔法【稲妻】!!」
ヤツを取り囲むようにに電流が走り、魔物に集約するように電撃が放たれる。
グギァェエアアアアアェエアアアアアア!!!!!!!!
霧状に変化する暇もないほどの一撃を喰らったヤツは丸焦げとなり、地面へと落ちる。
「あとは頼みました!」
「「任せろ!」」
そしてザックスとシラギの2人が地に落ちたヤツに最後の攻撃を仕掛ける。
「さぁ、俺が喰らった分……利子付きで返済してやるよ!【地震】!」
大量の魔力が斧に集まり、地を揺らすほどの一撃が叩き込まれる。
グギュァアアアアア!!!
「……これで終わりである……【抜剣・鎌鼬】」
魔力を込めた剣を振ると、無数の魔力の刃が魔物の肉体に降り注ぐ。そして剣を鞘に収め、目にも止まらぬ電光石火の居合でヤツの首を切断した。
「ふぅ………………これで、一件落着であるな。」
「よっしゃあああああああ!!!!」
「やったぁ!!!」
「……まじで、死ななくて良かったぁ……」
いぇ〜い!無事に謎の魔物を討伐できたぜぇ〜!いやぁ、まじでこの人たちと遭遇できなかったら死んでたな…………それにしてもあの魔物はホントになんだったんだ?
まぁ、いいや……とりあえず、今は勝利の余韻に浸ろう。
『お疲れ様♪』
「あ〜、ホント疲れた。」
『それで、本来の依頼はどうするの?』
「……依頼?…………………………あっ、まだコボルド倒して終わってねぇぇえええ!!」
謎の魔物との戦闘を無事に乗りきった傑たち。あの魔物の正体とは?そして依頼は無事に達成できるのか!
次回へ続く




