第二十二話『メナス草原』
「……いや〜、昨日は調子乗ったねぇ。まさか途中で魔力切れ起こすとは……」
『次の課題は魔力量の上限値を増やすのとその回復方法だね。』
「う〜ん、新しい力をまともに扱える日は遠そうだな。ってことで魔力増やすために今日こそ依頼をこなすぞー」
ってな訳でギルドにやってきて、依頼が貼ってある掲示板を眺めているところである。
『う〜ん……この中だと楽そうなのは【ゴブリン退治】だけど、それだと君の成長に繋がりそうにないからね。』
「なら、ここは複数依頼を受けて魔物を倒しまくるっていうのはどうだろうか?」
『多分普通に途中で魔力か体力が切れて死ぬと思うよ?自分に出来そうな範囲で選ぶことだね。』
「まぁ、それもそっか。じゃあこの【コボルド退治】で行ってみよっか。」
というわけで受付嬢さんのところにレッツゴー!早く依頼を終わらせて強くなるぞー!
「すいませ〜ん」
「はい、どうされましたか?」
ここの受付嬢さんはあれだな。前の街の受付嬢さんと見た目も雰囲気が似てて怖いな。もしかして姉妹だったりすんのかね?
「あ〜、こ、この依頼を受けたいです!」
「ライセンスを提示してください。━━━━━はい、確認できました。それではこの街の外の南西部にある【メナス草原】に生息しているコボルドを5体倒してもらいます。期限は4日間です。」
「了解しました!」
「それではメナス草原までの道のりを示す地図をお渡しします…………それと依頼に向かわれる前に1つ注告があります。」
「……え?なんですか?」
「近頃、メナス草原では謎の魔物が発生しているという目撃情報があります。もし、遭遇した場合、速やかに退避してください。……この情報を聞いても受ける気はございますか?」
「あ〜…………イフどう思う?」
『それはそれで面白そうだから行ってみてもいいんじゃないかな?』
「だよな……はい!受けます!」
「そうですか……では依頼受注完了したので、いつ出発しても大丈夫ですよ。」
「了解しましたぁ!」
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「はいはい、ってなわけでね。なんか今からやばいところに行くらしいです!」
「どのみちスグルの実力ならどこ行っても危険なことに変わりないから大丈夫だよ。」
「それはその通りなんだが。でもなんか、Bランク冒険者のパーティーが調査として向かってるらしいから、最悪そいつらに助け求めればどうとでもなる。」
『まぁ、運が悪くなかったらそうそう強いヤツと遭遇することなんて滅多にないから…………運が悪くなかったらね?』
まるで俺の運が悪いみたいな言い方してくるなぁ、この女神。トラックに轢かれて、森の中に飛ばされて、ガチャでハズレを引いて、ダンジョンでトラップに引っかかった俺が運が悪い?…………そうかも。
「なんか自信なくなってきちゃった。」
『元から自信なんてあったの?』
「それもそうだな!じゃあ行くのやめるかぁ!」
『依頼を達成できなかったらペナルティでお金を払わないといけないよ。』
「行くしかねぇな!」
「情緒不安定なの?」
俺の大切な大切なお金を失うわけにはいかないから、コボルドだけさっさと倒して寝まくるぜ!
「そーいやコボルドってなんだっけ?イフ!解説よろしく!」
『はいはい、じゃあ頭が悪い君のためにイフ先生が分かり易く解説してあげよう。』
【コボルドの解説】
・種族名:犬人
・犬というよりは狼のような顔をした小柄で二足歩行の生物。剣や防具などを身につけている。
・集団で生息していることがほとんどであり、基本的には3体以上でグループを形成し、行動している
・ゴブリンと似たような性質をしており、人間が作るような武器を作成、もしくは人間の武器を殺害して奪い取り、扱う賢さを持っている。
・ウルフが獣人に進化する際に派生したより魔物らしい姿であるとされている。
「あ〜、はいはい、要するに知恵が少し落ちた近接戦闘が強いゴブリンだな?」
『そんな感じだね。』
「しかもだいたい複数いるから1対1が不可能と……範囲攻撃で倒すしか無さそうだな。」
よし、色々確認したし!噂のやべぇ魔物に出会わないことだけを祈って突撃だ!
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しばらく歩いていると突然他の場所と異なり、木も草も土も赤色というエリアが出現した。
貰った地図を広げてみるとラーパルの位置的にここが【メナス草原】のようだようだ。
「なんか全体的に赤みがかってる感じだね。むしゃむしゃ」
「……シズク、何食ってんの?」
「ここら辺の植物、魔力帯びてるからお腹空いてたし、昼ごはんにちょうどいいかなって。」
「へぇ〜、この草魔力あるんだ。」
『というかここの土地に魔力が篭ってるね。色が変化している理由も魔力の影響だよ。』
「あ〜、ミールの森でも似たようなのあったな。魔力って染色効果あるんだな。」
『そうだね。だから傑がシズクくんに魔力を与え続けたら色が変わるかもしれないよ?』
「俺に色に染まる……ってこと?」
「なんかそれ気持ち悪いんだけど」
「酷くない?ちょっとキモかったとは思うけど言わなくても良くない?」
いつかシズクが赤色とか緑色になるのかな。個人的には今の色が1番スライムっぽくて好きなんだけどな。
「……ってかコボルドどこにいんだろ。」
『多分もっと奥の方じゃないかな?詳しい位置まではよく分からないけど。』
「なんか生物の位置情報を把握できる魔法とかないんかね〜、そしたらめっちゃ楽なのに!」
『それはもう大魔法の域に入ってくるから難しいだろうね。少なくとも今のカス魔力量じゃどうしようもないよ。』
くそぉ!やはり魔力量か!魔力量あげないと何もかもが不便だ!
楽な道は諦めて散策タイムに入る。この広い草原を駆け巡ってコボルドを早急に見つけてみせるぜぇ!
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探索から約1時間が経過、未だにコボルドらしき魔物の姿は見えない。道中でスライムとかゴブリンに遭遇したくらいである。
「……はぁはぁ……疲れた……どこいんだよマジで………………あっ!居たッ!?」
走りまくって疲弊している俺の視界の先に顔が犬でガタイのいい二足歩行の魔物が3匹現れた。手には盾やら剣を持っている。
「チッ!出るのはいいけど5匹まとめて出てくれた方が嬉しかったなぁ!!」
「ちょっと!そんな大声出したら気づかれるよ!」
「大丈夫大丈夫!ある程度離れてるんだから気づくわけないだろっ!ハハハハッ!…………あれ?」
なんかコボルド達が一斉にこちらに振り向いた気がする。というか俺の事を見ている気がする。…………あっ、これ見つかってるね。
「…………やばい?もしかして」
「ほら言ったじゃん!」
『自業自得だね。頑張れ〜』
ガゥッ!ガァアアアァツ!!!
「うっお!こっち来やがった!」
コボルド達が凄まじい勢いで距離を縮めてくる。とにかくこっちに来る前に数を減らさないとまずい!
「まずは一匹!シズクも手伝って!水魔法【水弾】!」
「しょうがないなぁ!【水弾】!」
シズクと一緒に真正面にいる3匹のコボルドの頭目掛けて水の弾丸を放ち続ける。
グギャァアッ!!! ガゥッ……!!
何とか2匹撃破することが出来たが、盾持ちが自身の体を守りながら突っ込んでくるせいで上手いことダメージが入らない
「1匹だけ倒しきれないっ!!」
「盾とか卑怯だろうがよぉ!魔法は厳しいか……仕方ない!ついに剣の出番だァ!!」
今こそグレムに作ってもらった剣を活かすとき!俺は腰に身につけていた剣を鞘から取り出すと、剣に魔力を通す。
「この前、シアンに剣の扱い方は教えて貰ったんだよぉ!…………腰を入れて、素早く振る!」
目前まで迫ったコボルドに対して勢いよく光り輝く刃を振り下ろすと、いとも簡単に肉や骨を断ち切り、胴体を斜めに分断した。
「…………強っ……」
『やっぱり剣はいいね。でも初めて使ったからか消費魔力大きいね。』
確かに魔力がごっそり減った感じするな。慣れていけば魔力の消費を減らせるのかなぁ。
「……あっ、やばいっ!早くポーション飲まないと魔力切れになる!!!まずいまずい!」
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「んぐっ………ぷはぁっ……セ〜フ!危なかったわァ……」
『毎度ギリギリじゃないと気が済まないタイプなの?ドMなの?』
「いや、俺だってもうちょっと余裕もって戦いたいよ?でも雑魚なんだから仕方なくない?……あっ、シズクありがとな!よしよし!強かったぞ〜」
今回からシズクにも攻撃に参加してもらうことになったので、いつもよりかは安定して倒すことが出来た。
「えへへ♪もっと褒めて〜♪」
とりあえず少し休憩するとしよう。歩き回って疲れたし、安全そうな場所に移動っと。……そう思って動き出そうとしたその瞬間……
ビュォオオオオオオオン!!
「…………ぉッ!?…………突風?」
いきなり俺の周辺に強烈な風が吹き荒れる。ただの気象のようにも思えるが、何か胸騒ぎがする。
『…………ッ!傑、上っ!!』
「…………うえ?」
イフの声につられて空を見上げると、そこには至る所に魔石が食い込んでいるような歪で巨大な鳥が俺の頭上を飛び回っていた。
グェァアアアアアアアアアァッッッ!!!!!!
「…………ぇぇ?…………嘘でしょ!?まだコボルド倒し終わってないでしょうがぁあああああああ!!!!」
コボルドを倒しに新たな地【メナス草原】に赴いた傑達であったが、まさかの謎の魔物と接敵することに!?果たして傑たちは助かるのだろうか!
次回へ続く




