第二十一話『強化1』
「ん〜、いい匂いですなぁ。」
この街【ラーパル】は食文化に優れているらしいので、早速それを確かめるために食事処にやってきた。
「とりま注文しますか。あの、すいませーん。注文なんですけどー」
俺は近くを歩いてた従業員を引き止めて、メニューブックに書かれている料理を頼む。
「え〜っと【レッドボアの豪快ステーキ】と【ワイルドチキンのたまごスープ】、あとは【栄養満点サラダ】でお願いします。」
「はい分かりました〜。それでは少々お待ちください。」
注文を書き留めると、そのまま奥の厨房の方へと走っていった。
「それじゃあちょっと待ちますか」
『ちゃんと注文できたじゃん。多少はコミュ障解消してきたんじゃない?前はすっごいおどおどしてたのに』
「俺も成長を続けているってことさ。でもまぁ、人と話すのはまだ全然慣れてないけどな。やっぱりそこそこ話したことある人じゃないとダメだわ」
「僕ら人じゃないけどね」
「何故か仲間にしたヤツが今のところ人外なのは何故なのだろうか?次は人間を仲間に勧誘しよ。強いやつ。」
やはり奴隷か。もしくはそこら辺にいる暇そうな強者を強引に勧誘するか。なんにせよ先の話だな。
『固定メンバーはあともう2人は欲しいところだよね〜。スライムと弱い男1人で世界を救うとか正気の沙汰じゃないからね』
辛辣っすねぇ。正論だからなにも言い返せませんけどねぇ!でもこれに関してはチート能力を提供できなかったイフに問題があると思うんだ。
「お待たせしましたー!」
しばらく話していると、注文した品の数々がテーブルの上へと並べられていく。
「おぉ〜!見た目と匂いはいいぞぉ!期待高まりますなぁ。ってな訳でいただきます!」
用意されていたナイフで目の前の肉を切り分けると、肉汁が中から飛び出してくる。そのままフォークを突き刺し、口の中へと一気に放り込む。
「……あっ、これ美味いわ!久しぶりに良い感じのもの食べれた感する!」
肉が思ってたより柔らかい!かけられてるソースも肉の味を引き立ててグッド!……食レポは得意じゃないので上手く表現は出来んがとにかく美味い。舌に合いますな!
『私も味気になるから確かめよっと。【感覚共有】……あっ、ホントだ。美味しいね』
「ん?何それ?」
『ここに来る前に言っただろう?君の味覚を共有して私も味わいたいって』
「あ〜、それがその魔法なわけね。もぐもぐ、どうひうほうはなん?(どういう効果なん?)」
『他者の五感のひとつを自分に反映させるっていう結構難しい魔法なんだよ?あっ、私サラダ食べたいな。』
へぇ〜、結構有用そうだな。……サラダはさっぱりしてて食べやすいな。でもドレッシングはごまドレッシングとか方が好きだな。
「……なんか仲間ハズレ感あって悔しい。ボクも食べたい」
「お前って食べ物魔力じゃなかったっけ?そもそも味覚あるのか?ほらよ」
シズクに肉を1切れ与えると肉がシズクの体内に取り込まれて徐々に溶けていく。
「ボクも味覚はあるよ、普通のもの食べてもお腹は満たされないけど。……うん、美味しい!」
「そりゃよかった。……んぐっ、ぷはぁっ!たまごスープ温かくて心落ち着くわー」
そういや、頼んだ料理の材料になってる魔物がここら辺でよく出る魔物なんかね?レッドボアとワイルドチキンか。……ん〜、赤い猪と獰猛な鶏かな?
そんなこんなで食べ進めていたら、いつの間にか完食していたのであった。
「『「ごちそうさまでした」』」
◆◇◆◇◆◇
IN The 宿屋。美味しいご飯を食べられて満足なり。
「いやぁ、想像以上だったな。美味かったわ。」
「それで?明日からどうするの?」
「フッフッフッ……計画なんてあるはずないだろう?とりあえずギルド行って仕事貰う感じかな。」
『ここの魔物はダラトナ付近よりは強いから良い経験になるんじゃないかな。』
「なんにせよ。どうせ明日のことだ。明日のことは明日の俺に考えてもらうさ。ってな訳でおやすみぃ」
そのまま俺は眠りにつくのであった。
◆◇◆◇◆◇
「ってな訳でここのギルドに行くぜ!」
ぐっすり寝てだいたいお昼頃、俺はお仕事を求めにラーパルのギルドへと向かうのだった。
「まだ寝てたかった」
『同感』
「いや、俺だって寝たかったよ?でも世界救わんとするヤツらが二度寝三度寝して一日無駄にするって冷静に考えなくてもやばくね?」
『それもそうだね。じゃあさっさとギルド行こっか。あの青い屋根の建物がギルドのはずだよ。』
「りょうかーい……ってなんだあれ?」
早速、俺たちがギルドに向かおうと歩き出した時だった。ギルドの入口付近に人だかりができているのが目に入った。
「なんだ?イベント事か?」
「でもあれじゃ入りづらくない?」
「確かにな、でも行かない理由はないよなぁ?とりあえず見物しに行こうぜー。」
俺たちは何が起こっているのかを確かめるためにギルドの入口までやってきた。
「な・に・が起こってるのかな〜っと………………っ?」
背伸びをして群がる人の隙間からギルドの中を覗き込むと……そこには脇腹が抉れて血まみれで倒れている男の姿と咽び泣く女の姿があった。
『……魔物にやられたんだろうね。この世界じゃ珍しくもない』
「何にやられたらあんなことになるんだろうね。傷口がボロボロだし、食いちぎられたのかな?」
「……お前ら、冷静だな。なぁイフ、あの人助かると思う?」
『無理だろうね。この前の君以上の致命傷だし、ここの魔法のレベルじゃあどうしようもない。』
「そっか。」
……初めて死体を見た、凄惨な光景だ。どこか現実味がない。だがこれは紛れもない現実なのだろう。
『冒険者になったのだからこうなる覚悟は必要。君もちゃんと胸に刻んでおくように』
「分かった、とりあえず祈るか。」
名も知らぬ、何一つ関わりのない冒険者の彼らに俺ができることは祈りを捧げるくらいだ。
「今はギルドに入れそうもない。とりあえず今日はこの街の探索をしよう。」
『そうだね。』
……ここは異世界、簡単に人が死んでしまう世界。それを改めて感じさせられた。
◆◇◆◇◆◇
ギルドから立ち去った俺たちは行くあてもなく、適当に街の中をぶらぶらと徘徊していた。
「……う〜む、朝から凄まじい気分になってしもうたな。」
「気を取り直しなよ。死体なんてよく見るでしょ。」
「俺はあれが初だったんだ。……ふぅ……じゃあ気分を戻すためになんかいい感じの店でも探しに行くとしますかね」
『それなら古物商のところに行ったらどうだい?』
「古物商?」
『珍しいものを売ってる店だよ。案外面白いものが売ってるかもよ?』
「ほへ〜、面白そうだな。それで?どこら辺にあるん?」
『確かこの街の東側のところにあったはずだよ。私の記憶が間違ってなければね』
「そういう時ってだいたい間違ってるって相場が決まってるんだぜ?」
「いったいどこの相場なの?」
「ってな訳でレッツGO!」
◆◇◆◇◆◇
イフに指示されるがまま東方面に歩いていたら、目の前に謎のボロい店が現れた。
「あったよ、ちくしょう……間違ってたらめっちゃ煽ってやろうと思ったのに。」
『私の発言が今まで間違ったことがあったかい?』
「へいへい、所詮俺は愚か者ですよ。とりあえず入るか。
「失礼しまーす……ぉぅっ」
店内はやけに薄暗く、幽霊でも出てきそうなくらいの雰囲気がある。しかも埃っぽい
「……おや、客とは珍しいな」
店の奥の方から声が聞こえた。暗くてよく見えないが声からして、クール系のお兄さんのような感じだろう。
「あ〜、すいません。ここに売ってるものを見たいんですけど、いいですかね?」
「……そうか、ならこっち来るといい……珍しいものが見れるぞ」
店主らしき男に手招きされるがままに店の中へと入っていたが、やっぱり引き返した方が良かったような気がしてきた。
「……なんか怪しくない?ここホントに大丈夫な店なの?」
『たしかに怪しいけど、あの店主は別にこっちに危害加えてくるわけじゃないから安心していいよ。』
「なんか知ってる口ぶりだな?お前、店主とどういう関係なんだ?」
『ひ・み・つ♪』
「う、うぜぇ……」
「……何をぶつぶつと喋っている?……商品を見る気が失せたのか?」
「あっ、すんません!今すぐ行きます!」
くそっ、前から思ってたけど心の中で会話出来るとかそういうシステムにできないのかこれ。毎度俺が小声で独り言言ってるヤベェやつになんだよな。
「あの〜、もしよろしければ名前とか教えてくれませんか?」
「……なぜ教える必要があるのだ?」
「なんて呼べばいいか分かんないんで」
「……【シスイ】だ……呼び方は勝手にしろ。」
なるほろ、シスイさんね。……なんかこの人、強者オーラがあるな。あとフードかぶってるから顔が分かりづらいけど結構イケメンだな?
そんなことを考えているとカウンターの上にずらりと見た事もないような奇妙な物が並べられる。
「……気に入ったものがあるなら買うといい……滅多に手に入らない品物だからな」
「おぉ……どれがいいのか分かんねぇ。どういう効果とか聞けたりします?」
「……そうだな……まずこの【不変の丸薬】一定時間ありとあらゆる状態異常を無効化する薬だ……値段は3万Gってところだ」
「うぅ〜、強いけど……高すぎるなぁ。お財布的に厳しい。他のはどんな奴が?例えばこの短剣とか。」
「……それは【呪死刃】切りつけると相手に呪いを付与し、持続的なダメージを与える強力な短剣……しかし、その一方で持ち主の死を招くといわれるいわく付きの品だ……5万Gだな」
「呪いの武器か……すっげえ厨二心をくすぐられるけどぉ……さすがに無理だな。それを持つ勇気と金がない。」
「……そうか……まぁ、客足が少ないから選ぶ時間はたっぷりある……ゆっくり考えるといい。」
「あ〜……じゃあ次はこれを━━」
そんな感じで悩み続けた
「━━う〜ん、悩ましいなぁ……あっ、この黒い手袋ってどんな効果ですか?」
「……それは【操魔の手袋】だな……その手袋に流し込んだ魔力量に応じて近くの物体を動かしたりできる物だ」
「おぉ〜便利そう。いくらですか?」
「……ざっと2万Gだ……どうだ?買うか?」
『どうするの?まだ考える?』
2万Gね〜、今の俺の財布的にも足りるし、その能力なら持ってて損がないんだよなぁ。よし、これだな!
「買います!」
「……毎度あり。他にも買ってくか?」
「いや、もうお財布が厳しいです!」
「……そうか……なら金が溜まったらまた来るといい。」
「分かりました!ありがとうございましたぁ!また来まぁす!」
色々と買い物をして荷物が増えたので、1度宿屋に戻ることになった。
「いやー、いい買い物したわ。あ〜、そうだこの手袋の使用感確かめてみるか。」
「魔力を流し込むって言ってたけどどうやってその手袋に魔力を入れるの?」
「まぁ、魔法使う時と同じノリでいけるんじゃないかな?」
手袋を体の一部と見なし、そこに体に内包された魔力を集める。すると手袋の表面が紫色に薄く光り出す。
「うぉぉお!すっげぇ!光ったァ!!!」
厨二病が好きそうなやつキタコレ!やっぱり黒に紫は映えるなぁ、めっちゃかっこいい!
「それで〜?え〜っと、どうやって周りのものを動かすのかな?」
『動かしたい物体に狙いを定めて、指でどの方向に動かしたいのかを操作をする感じだよ。』
「あ〜、なるほど。じゃあとりあえずこの硬貨を浮かせてみるか。」
……こんな感じか?
地面に置いた硬貨に狙いを定めて、人差し指をくいっと上に曲げると……
グググッ……!
「おっ!浮いた浮いたっ!!!」
硬貨にも紫色の光が出始め、ゆっくりと俺の目の位置くらいまで持ち上がった。しかし、込めた魔力が少なかったからか直ぐに地面へと落下した。
「……こういう感じか!いいねいいねっ!結構使えそう!」
これワンチャン魔力量次第なら俺の靴とかにやれば空とか飛べんじゃない?夢広がるねぇ!
『でも君の魔力量だと不安が残るからそこら辺は要注意だね。』
「でも使いこなせるくらいに魔力が増えれば相当強力な武器になるな……これからの楽しみができたな!」
「これってボクとかも動かしたりできるのかな?」
「どうなんだろ?とりあえず色んなもんで試してみるか!効果範囲とかがあるのかとかも知りたいしな。」
そうして傑は検証のために宿屋の中で試しまくった結果、魔力切れで撃沈するのであった。
新たな武器を手にした傑!冒険者としての覚悟を強めながらこれからも更に強くなっていくことだろう。次回はようやくラーパルでの初仕事!無事に依頼をこなすことが出来るのだろうか!
次回へ続く




