表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
普通なりの異世界踏破   作者: DDD
第1幕【ダラトナ編】
20/49

第十八話『帰るまでが遠足』

 

「うぅ〜……体いてぇ……床地面だからなぁ……いででっ!」


 硬い床で寝ると背中痛くなるからなぁ。やっぱり魔力切れになるのはデメリット多めだな。


「満身創痍じゃん。大丈夫?」


 シズクがぽよんぽよん♪と体を弾ませながらこちらに近づいてくる。その光景に一瞬既視感を覚えたが、多分あれだ。祭りのプールの中とかに浮かんでるスーパーボールだ。


「一応な、でも心身の疲労がやべぇ……ポーションは……げぇっ!?」


 小袋の中を見るとポーションが割れて、中身が全て溢れているという大惨事が飛び込んできた。魔力回復させようと思ったのに……つくづく運が悪いなぁ俺。


『ポーションが染み込んだ袋でも舐めればいいんじゃない?案外それでも回復するかもよ?』


「いやだよ!絵面的にやべぇだろ。袋舐めるやつとか危ねぇよ。」


『……面白いものが見れると思ったのに。』


 さてはこの女神、俺に馬鹿なことさせたかっただけだな?その手には乗らねぇよぶわぁ〜か!


 そんなこんなで仲間と雑談をしているうちに魔力が回復したので、離れた場所で休憩しているパーティーメンバーに話しかけに行く。


「シア〜ン。大丈夫かぁ?」


 爆散したゴーレムの体に寄りかかりながら休憩しているシアンに話しかける。パッと見、目立った傷は見えないので大丈夫なさそうに思える。


「まぁなんとかね。みんなよりかはダメージ少ないから比較的マシな方だよ。」


「それなら良かった。ナイスファイト!前の剣かっこよかったぜ!」


「うん、ありがとう。」


 シアンと会話を終えると別の方で少し前の俺と同じように仰向けで転がっているテオに話しかけに行く。


「死んでる?」


「死んでねぇよ!ちょっと疲労で動けなくなってるだけだ……それに俺の心配してる余裕あんのか?俺から言わせたらお前の方がよほどボロボロに見えるけどな。」


「だってお前らが来るまで俺一人でボコボコにされてたんだぞ?回復魔法で治ったとはいえ、体の節々が痛いのには変わりない。」


「元はと言えばお前が罠にかかったのが全ての原因だけどな!……まぁ、助けるのが遅くなったのは悪かったと思ってるが。」


 うん。やっぱりコイツ良い奴だな。見かけで判断するのは良くないってのの良い例だわ。今回のボス戦のトドメを担ってくれたしマジで感謝。やっぱり武闘家キャラは優秀よな。


「罠にかかったのはマジでごめん!注意力落ちてた。……まぁ、それはそうとお前のトドメの一撃めっちゃ凄かったな!語彙力ないから具体的には言えないけど。」


 なんかこう……バァンってなって体がドォォンッって弾けた感じが凄かった!


「お、おぅっ!褒められるのは照れくせぇけど……あんがとなっ!」


 テオとそこそこ雑談した後、別の場所で2人仲良く倒れてる女の子たちに喋りかける。


「おーい、少女たちー大丈夫〜?」


「……そう見えるかしら?」


「……身体全然動かないよぉ」


 どうやら魔力切れで倒れているようだ。こりゃ回復するまでもう少し時間かかりそうかな。


「ってか俺も魔力切れしてたのに回復スピードはメルナ達の方が遅いんだな。イフ教えて〜」


『しょうがないなぁ。魔力ってのは量が少ないほど回復するスピードは早いんだよ。つまり君の魔力が少ないってだけの話。』


 ほへぇ……ん?もしかしてディスられてる?魔力が少ないのは気にしてるんだから言わないでくださいよ。

 まぁ、それにしても……


「美少女2人が倒れて動けずにいる……こういうシチュエーション現実味なくてあんまり好きじゃないんだけど、どう思う?」


「私たちに聞かれても困るし、気持ち悪いからやめてもらえる?」


「なんか変態みたいだよ……っ?」


『……君は相変わらず会話が下手だね。普通女の子の目の前でそんな発言する?デリカシーがないというか場の空気が読めないというか。』


 凍てつくほど冷たい視線が2つ、呆れたような声が1つ。……こりゃあれだな、あのセリフを言う場面だ。


「……また僕なんかやっちゃいました?……冗談冗談っ!謝るからそんな冷めた目で見ないでくださいっ!ホントごめんなさいっ!!」


 う〜ん、こんなところでこのセリフを言うことになるとは……人生何があるかわかんないね。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 あの後必死に土下座しながら謝り倒すことで好感度を戻すことには成功した。

 マジで女性陣から嫌われると(精神的に)やばいから。今後も気をつけないとな。

 それとようやく皆の体力と魔力が回復したようだ。


「よし、そろそろここから出ようか。……って言ってもまずはどうやって脱出するかって話からだけどね。」


 シアンの元に(みな)が集まり、目の前の問題に対して頭を悩ませる。


「唯一の出口はあそこか。」


 そう言って俺は落ちてきた穴を指差す。ここに来るまでにかなりの高さ落下してきたので、位置的にかなり下の方にある空間だと思われる。


「あの穴をよじ登って元の場所に戻るか、ダンジョンの壁を掘り進めながら上を目指すか。……どちらにせよ時間がかかるのは間違いないわね。」


 リアの言葉に俺たちの体から冷や汗が流れ始める。ダンジョンの特性上、時間経過で倒した魔物が復活してしまうのだ。

 つまりある程度時間が経つとあのゴーレムさんが復活して、全滅エンド直行となる。


「私の風魔法で一気に飛び上がって穴の中をビューン!って通り抜けるとかどうかな?」


「穴の中狭いからそんなことしたら頭とか体ぶつけまくって悲惨なことになるぞ。」


「掘るのも生き埋めになる可能性があるから止めといた方がいいだろうね。……でもそうしたら本当に抜け出す策がないね。」


 万事休すか?……いや、最後まで脳を回せ。こんな確定で死ぬみたいなダンジョン、存在するわけが無い。

 そんなの設計からしてミスだ。ならば、何かしらの脱出口が……あっ、そういえば知ってそうなヤツ居たな。


「……イフ、なんかあるんだろ?ここから出る方法が。黙ってないで教えてくれ。」


 皆にバレないように小声でアドバイスを要求する。コイツは最初からこのダンジョンの存在を知っていた。なら出口も知ってるはず。


『う〜ん、多分そろそろ出てくるとは思うんだけどね。あと少し待ってみて。』


 ……出てくる?何が?


 俺がイフの発言に首を傾げる、その瞬間、背後から光が降り注ぐ。


「ほぇ?」


 咄嗟に振り返るとそこにはなんと光り輝く魔法陣がッ!アンビリバボー!


「何あれ……?」


「魔法陣?」


 突如出現した魔法陣に皆の視線が釘付けになる。皆が魔法陣に戸惑っている中、俺だけはこの魔法陣に見覚えがあった。


「……イフさん、あれってもしや?」


『お察しの通り、転移の魔法が刻まれた魔法陣だよ。私が傑をこの世界に送り出した時の魔法陣と似た感じのやつ。』


「どおりで見覚えがあるわけだ。とはいえなんでそれが出てきたんだ?」


『一番奥にいるボス倒したら帰るまでが手間でしょ?だから謎の配慮でボスを倒してしばらく経つと入口まで戻れる転移魔法陣が出現するっていう。』


 なるほどな、ゲームとかでよく見るよな。ボス倒したら光り輝く魔法陣が出てくること。

 冒険者に配慮があるタイプだ。


『とはいえ出てくるまでちょっと時間かかるのが難点だけどね。そのまますぐに帰った方が速いことが大体だし。

 でも今回みたいにボスを倒したあとは疲弊したり、戻るのが困難なことが多いから重宝されてる機能だよ。』


 そうなんだー。よし、じゃあみんなに説明してさっさと帰るとするかぁ!


「おーい、みんな!どうやらあれは━━


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「━━って感じのものなんだ。似たようなの見たことあるから間違いない。」


「そうなのね。……それにしても転移の魔法陣、高度な技術によって作られたものね……いったいどうやって組み上げられてるのかしら、起動に必要なリソースはどこから?それに……」


 リアが顎に手を当て、目の前の魔法陣を見据えながら早口でボソボソと呪文のようなものを口ずさみ始める。

 話が進まなくなることを見兼ねたメルナがリアの肩に手を置き、ブンブンと勢いよく揺らす。


「リアちゃんストップ!いつもの研究癖で出てるよっ!」


「あっ、つい……」


 なるほど、リアは研究者気質の魔法オタクなのね。いいじゃんそういうキャラ好きよ。

 まぁ、そういう人間観察は後にして、今は……


「じゃあ、帰りますかぁ!」


「リアちゃん観察してないで早く帰るよ!」


「待って、もう少しだけ……頭の中に深く刻み込みたいから」


 あ〜、これは止めないと結構時間かかるやつですわ。こういう時の対処法は1つだ。


「メルナ!そこの魔法オタクをさっさと魔法陣の中に引きずり込め!」


「は〜い♪」


 俺の指示に従い、リアの体をがっちりとホールドしたメルナがそのまま魔法陣の目の前へと連行していく。


「ちょっ!?メルナッ、待って!あと少しだけっ!あぁ……っ」


「お前も行くぞー」


「落ちないようにちゃんと持っててよ?」


 シズクを拾い上げると魔法陣の目の前まで歩く。


「ほいじゃ入りますぜー。先鋒、傑行っきまーす。せ〜ぇのっと!」


 そのまま魔法陣の中にいの一番に飛び込むと魔法陣が輝き出して、光が俺を包み込……眩しっ!光強くない!?目がぁぁぁ!!



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「……おっ?」


 目の前に広がる光が消えると、周囲の景色が一変し、爽やかな風が体を通り抜ける。

 ここはダンジョンの入口か……ちゃんと転移には成功したようだな。


「シャバの空気うめぇ〜!」


 牢屋から解放されたヤツみたいなこと言い放ち、深呼吸をする。洞窟内は酸素が薄かったので結構息苦しかったんだよなぁ。


「ホントに一瞬で入り口に戻れるんだね。魔法ってすごいんだね〜!」


 シズクが魔法の可能性に感動しているようだ。魔法の種類は無限大だからなぁ。


「俺もいつかはこういう魔法使えるようになりたいなぁ。」


 そうして適当に駄弁っていると俺の周囲に複数の魔法陣が出現する。そしてそこから強力な光が放たれうわぁっ!眩しっ!?


 光が収まると魔法陣があった場所にシアン達が現れた。

 なるほど傍から見るとあーいう感じで出現するんだね。めちゃくちゃ目立つね。


「うぉっ!?」


「……本当に入り口まで戻ってこれた……」


「すっごぉい!」


 うむうむ。反応は様々ですな。転移なんて魔法ロマンの極みだもんなぁ。

 これぞ魔法の真髄って感じよね。……あれ?1人いなくね?


「おりょ?リアはどうした?」


「そこに転がってるぞ」


 テオの視線の先を見るとそこには意気消沈し仰向けで倒れているリアの姿があった。


「……もっと調べたかった」


「あ〜、なんかごめん。まぁ、また今度1人で攻略できるようになったらいっぱい調べばいいじゃん。」


「それもそうね。」


 俺の言葉を聞いて即座に立ち上がるリア。精神どうなってんだ?


「切り替え早いな。……まぁいいや。それじゃ、帰ろうぜ。」


 気を取り直した俺たちは疲れた体を動かしながら来た道を引き返していくのだった。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「あぁ〜!疲れたぁ!もうヤダ寝る」


 フラフラとおぼつかない足取りでベッドへと歩いていき、そのまま疲労でクタクタになった体を倒す。


『お疲れ様♪さすがに君の体力だと今回のダンジョンは厳しかったかな?』


「そりゃ異世界人とは基礎スペが違うからなぁ……生き残れたのが奇跡よ……ま、それもこれもコレを貰えただけチャラだけどな。」


 俺は硬貨の入った袋を振ってジャラジャラ♪と音を鳴らす。この音、そして袋の重みから感じられる圧倒的多幸感。


 あの後街に帰ってギルドで倒した魔物からドロップした魔石を換金した結果、結構儲かったんですわぁ!


 あと宝箱から出てきたあの指輪、あれが結構な価値あるものだったらしい。とはいえ全員金に困ってたから換金に回したけどな。


「合計10万G……5人で分けて1人あたり2万G……う〜ん、美味しい!」


 やはり命をかければこのような大金を手にすることが可能なのだと身に染みて実感するな。


「ねぇねぇスグル〜、この後はどうするの?また仕事をやっていく感じ?」


「まぁ、そうなんだが……俺には大事な使命もといイフから課された無理難題があるから、明日は世話になった人に挨拶した後、別の街に行こうと思うよ。」


『うんうん。その判断は正しいと思うよ♪ここに滞在してても世界が救えるわけないからね〜。』


「この旅はいつ終わりを迎えるのやら……」


 とりあえず言えることはこの戦力じゃあどう考えても世界を救ったりできる力はない。一生かけても無理だと言える自信がある。


「……とりあえず仲間探しだな。強者見つけるかぁ。勇者とか英雄だとか」


『仮に居たとして君の仲間になってくれると思うかい?……まぁ、十中八九無理だろうね。どうするつもりかな?』


「そこはあれよ……あのぉ〜……奴隷とか。」


「奴隷?」


 シズクが無い首を傾げながら聞き返してくる。


「あ〜そっか。魔物だから知らんよな。言うなれば金で買えるなんでも言うことを聞いてくれる存在よ」


 よくあるじゃん。奴隷買ったらその奴隷がめちゃくちゃ強くなるパターン。それをしようかなと。


「ま、今色々考えてもろくな案は浮かばないだろう!ということで寝ます!おやすみぃ!」


 布団を被りそのまま目を瞑ると、疲れからか直ぐに眠気が襲ってきて、意識が深い深い暗闇に落ちていく。



『━━今回は無茶させすぎたかな……でも君は本当に頑張ってるよ。』


「それちゃんと起きてる時に言ってあげればいいんじゃないの?」


『一応、私にも恥ずかしいという気持ちがあるからね……意識がある時には言えないよ。』


「そういうもんなの?よくわかんないや。……とりあえず僕はもう寝るね、おやすみぃ。」


『うん、おやすみ。』


こうして初のダンジョンを攻略し、無事に帰還することに成功した傑たち。ただ、これは始まりのダンジョン。冒険を重ねる毎に強くなっていく魔物に傑は太刀打ちできるのだろうか。


次回へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ