歯科
俺は今日歯科に行くことになっている。かなり前から歯に異常がある気がするのだ。だから、あらかじめその歯科医院に予約の電話をして、予約を入れてもらった。その日が今日なのだ。
そして、その歯科医院の前に着く。A歯科クリニック。それが、件の歯科医院の名前である。
「今は何時だ」
俺は独り言を言いながら、時計を見る。予約時間の5分前である。よし、遅刻せずにはすみそうだ。俺は病院内に入ることにした。
中には受付の女性がいた。周りを見て見る。様々な歯のポスターが貼られている。
俺は受付の女性に話しかける。
「本日予約をした北村です」
「北村さんですね。この紙に記入をお願いします」
渡して来た紙の内容は基礎疾患がどうたらこうたらであった。特に基礎疾患はないので、面白みのない記入をして、受付の人に提出する。
そして、少し待つと別の女性に案内をされる。そこには、仰向けに倒すことができる椅子が置いてあった。
「では、そこに座ってください」
そう言われたので、俺はその椅子に座ることにした。
「少々お待ちください」
その一言を残して、女性は去って行った。暇なので、辺りを見て見る。パソコンやハンガーなどが置いていた。何かに使うのだろう。
女性がこちらに戻ってきて、言った。
「では、レントゲンをとりますので、こちらに来てください」
「わかりました」
俺は返事をしながら、椅子から立ち上がって、彼女の後を追う。そこには、何かの機械があった。
「これを口に含んで、噛み締めていただけますか」
渡されたものはプラスチック製のものだった。要望通り口に含んで、歯と歯を噛みしめる。微妙に口の中が痛いが、我慢だ。
「それではレントゲンをとりますから、噛み締め続けてください」
彼女はそう指示して、機械を動かし始めた。
「では、ここに顎を乗せてください」
この機械には顎を乗せる場所があるようだ。噛み締めたまま顎を乗せる。
「そうです。そのままです」
そして、レントゲン撮影が終わり、プラスチック製のものを口から女性の手によって、出された。はあ、痛かった。
「レントゲンが撮れましたので、戻りましょうか」
そして、元の倒せる椅子に座ると、正面に口の中のレントゲン写真があった。おそらく、さきほど撮ったものだろう。
「えー、写真の確認の前に歯の出血の有無を調べさせてもらいます」
たおしますね、と彼女は補足し、椅子が倒れる。
「はい、口を大きく開けてください」
指示通りに口を大きく開ける。それから、色々口の中をいじられた。
「はい、戻します」
そうして、椅子が戻された。
「では、口の中をゆすいでください」
そう言って、紙コップを水が出るところに置くと、自動的に水が出た。俺は口の中をゆすぐ。そして、水を吐き出す。コップの中の水がなくなったので、コップを元の位置に置く。コップに水が入れられる音を聞きながら、女性の声を待つ。
「えー、写真の歯のところがポコっと出ていますよね。これは歯石ですね。北村にはたくさんの歯石があります」
女性が続ける。
「奥歯の歯茎から出血が見られます。後は歯の掃除をして、医院長をよびますね」
「はい」
「では、歯の掃除をします。倒します」
椅子が倒される。それから、色々口の中を触られたりして、掃除が終わった。椅子が戻される。
「それでは、医院長を呼びますね」
そう言って、女性はどこかへ行った。医院長のところだろう。しばらく待っていたら、黒髪の比較的若そうな男性が俺のところへ来た。
「私がここの医院長です」
彼はそう言って、写真を指差す。
「歯にポコっとしたものがありますよね。聞いたと思いますが、歯石です。4回に分けて、取り出そうと思います。1、2週間後にまた来てください」
医院長は俺の顔を見て、続ける。
「後、虫歯もありましたが、治療するほどではないので、現状維持にさせていただきます」
虫歯があるのに、治療しないのか。まあ、歯医者がそういうのなら、必要ないのだろう。
「それでは、今日のところは以上になります」
終わりか。俺は立ち上がり、受付へと歩いていく。
「お疲れ様でした」
医院長の労いの言葉を耳にした。受付に着く。
「北村様。お疲れ様です。かけてお待ちください」
受付の女の人にそう言われて、俺は椅子に腰掛ける。そして、しばらく待つと、受付の人に呼ばれ、会計で金銭の支払いをお願いされたので、俺は支払った。
「ありがとうございます。次来るのはいつにしますか」
「では、1週間後のこの時間で」
「1週間後ですね。分かりました」
彼女はそう言って、診察券の裏に予定を記入して、俺に渡した。俺が受け取るのを見届けて、彼女は、また1週間後よろしくおねがいします、と言った。
1週間後。俺は現在歯科クリニックで口の中を触られている。歯石を取るためだ。
そして、右上の歯から歯石が全部取れたようなので、見せてもらった。
「この黒いのが歯石です。見えますか」
「はい、見えます」
俺が答えると、歯石を取ってくれた人は、医院長を呼びに行きます、と答えて、移動した。
その日医院長から今日のことを聞いた。
さらに、3週間後。右下、左上、左下の歯から歯石を取った。今日取ったのは左下の歯からである。先週取ったのは左上で先々週取ったのは右下である。
「来週来ることはできますか」
医院長がそう尋ねてきた。
「歯のチェックを行う予定ですから」
「はい、大丈夫です」
俺の答えに彼はにこやかに頷いた。
1週間後。歯のチェックや歯の掃除で今日は終わった。