059 青春金網デスマッチ VS.「純然たる暴虐非道」蛾眉丸純兵 6
蛾眉丸純兵は倒れたまま荒い呼吸を繰り返している。貧血症状の脂汗を流しながらそれでも私を睨んでいる。一応お約束だし言っておくか。蛾眉丸、お前の負けだ。ワン、ツー、スリー。
放って置いても蛾眉丸は自力で回復するだろうが、このままというわけにもいかないだろう。【収納】して安楽死させるか? 真空パックにするのと同じだからな。生きた動物に使ったことはまだ無かったが。
だがその前に蛾眉丸にはいくつか訊きたいことがある。ひとつはこいつの成り立ちだ。地球産の先祖返りなのかここ数年で持ち込まれた外来種なのかだ。
前者なら「はじまりの5人」に系する地球の錬金術師にも換重合人間を作り出す技術があったという証明になる。しかも大規模転移無しでだ。
後者なら今現在地球に私以外の宇宙人が存在していることの証明といえる。実は丁字信伍を通じて外硫児架が最近流通させているドラッグにも気になるところはあった。明らかに純度が高いものを薄めて使っているようにも感じるのだ。
時系列でゼロワンを追って来た『B∴D∴N』の連中とは違うと分かるが、もし連中がゼロワンの死に疑いを持っていて、なおかつ外硫児架の背後にいるだろう宇宙人と手を組まれたら厄介だ。
しかしその情報を蛾眉丸から聞き出す前にそいつが向こうから来てくれたようだ。一難去ってまた一難かよ!
夜風に乗って口笛が聞こえてくる。それと同時に蛾眉丸が悶え苦しんで身をよじる。
聞こえてくる方を探すとそこには黒いチャイナドレスを着た女が立っていた。その顔は白い道化の仮面で隠れている。仮面には音を拡散させる効果があるのかもしれない。
口笛の旋律には【促進】の効果が含まれているとゼロワンが告げる。じゃああいつも錬金術師なのか?
そして私には口笛の得意な女に心当たりがあった。お前は……鐘子なのか?




