058 青春金網デスマッチ VS.「純然たる暴虐非道」蛾眉丸純兵 5
被害者が貴人だったこともあり、その後の大規模転移開発は法で規制されたが、無くなった訳ではなかった。罪人の流刑地や辺境惑星などで人の目をくぐり続けられあるいは黙認された。それほどまでに旨味のあるものだった。
全面的な禁止令が出たのは暴動により王国がひとつ滅んだからだ。より安全な開発方法ができたせいもある。
換重合人間の特徴は細胞の分子間力が2人分だということだ。力、耐久力、反応速度などが飛躍的に向上している。上昇率は逆2乗の法則によるためきっかり2倍という訳ではないが、常人の2割から4割増しぐらいはあるだろう。
つまり生半可な打撃や刺突は通じないということだ。だが私はその答えを用意している。
待たせたな。行くぞ鈍兵。
「俺を変な名前で呼ぶんじゃねえ! 首を引っこ抜くぞ」
蛾眉丸純兵が鉄パイプを振り回す。攻撃は膂力に頼ったもので型などない。それでも受けを間違えばその時点で終了だ。
私は鉄格子で攻撃をいなしていく。そして隙を見て腕や脚に打撃を加えていく。
「そんなしょっぱい攻撃が俺に効くかよ。つまらねえ。ズバッと入ってこいや!」
いいやこれでいい。決定打を打ち込むのではなくダメージの蓄積がこの作戦のキモだ。
「くそっ、ちょこまか動きやがって!」
言いながら蛾眉丸が取り出した瓶の中味を飲む。ドラッグで燃料補給か。私にとっては好都合だ。血の巡りが加速されるからな。
そしてその時は突然訪れた。蛾眉丸がどっと前のめりに倒れたのだ。
「うげぇ、目が回る……てめえ、何をしやがった?」
外から壊せなければ中から壊せばいい。超音波振動と浸透勁で赤血球を分解した。いわゆる溶血だ。酸素を細胞に行き渡らせることができなければ動けない。それは換重合人間でも同じことだ。




