04A 本当はコワクナイ錬金術 合成偽薬JST~Just like starting over, today 2
「なんなの、これ? 禁煙グッズ?」
私が渡したものを上倉晴子が興味深そうに見る。まあ似たようなものだ。
渡したのは2種類。パイプ状のものとタブレットだ。名前はJST(仮)。
「JST? 禁煙グッズなら試したことあるけど、すぐに飽きちゃって」
そうならないように試行錯誤したんだよ。試してみれば分かる。
「えっ、これ零一が作ったの? お腹壊さない?」
おい、その失礼な持ち方はどうなんだ?
私は黙って別のタブレットをつまんで一錠口に入れてかみ砕いた。そこからもう一錠を渡すと晴子も口に含んだ。
「えっ……これ甘いんだけど?」
そこも気を使ったところだ。バニラの他にもレモンとコーラの3種類の味が用意してある。通販番組かよ。
「……あっ、だけど、いつものドラッグとは違うけど何かキてる感じがする。ヤバい……」
晴子の表情がほわっと緩む。実際にはこんな感じになるのか。
ついでに一本吸ってみてくれ。タバコでもドラッグでもいいぞ。
「えっ……零一の前で吸いたくないよ。それにこれがドラッグなら過剰摂取になるんじゃ……」
そこは私を信じてくれ。実験が成功したらもう吸いたくなくなるはずだ。
「実験って……他に言い方があるんじゃない? ……分かったわよ」
晴子はドラッグ入りのシガーパイプをつけたタバコをくわえて火を着けた。
「……あれ? 何か味がしない。吸ったときのクラっとくる感じもない……」
どうやら効果が出ているみたいだな。ちゃんと阻害しているようだ。
JSTはドラッグじゃない。私のスキル【親和】と【抗生】で作った合成偽薬だ。
JSTは先に摂取することでドラッグの代償となる快楽を与え、同時にドラッグが作用する働きを阻害する。ドラッグから快楽が得られなければ吸わなくなるだろうし、それが代用できれば選ばなくなるだろう。
まあファッションで吸う奴らはこの際どうでもいい。私は止められる方法を用意したというだけだ。
「でもドラッグを止めても今度はJSTが手放せなくなるんじゃないの? それにそうなったらあたし、もうお金が……」
ああそれも心配ないぞ。JSTは言ってみれば濃縮したジャンクフードだからな。食品に何のお咎めがあるはずもない。
原材料にしても砂糖と塩と油とフレーバー……そうだな、売るにしてもお友達価格で300円ぐらいか?
もじもじと問いかけた晴子が「ええ~!」と盛大に声を上げる。通販番組かよ。




