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044 かつて同志だった彼女のこと 1
当時からすでに村瀬鍾子は頭のいい子という認識だったがグループの中ではそれだけだった。上倉晴子が自分より目立つことを許さなかったせいだ。
お姫様に付き従う参謀役のナンバー2が鍾子に与えられた役どころであり、それを刷り込ませようとする晴子の理不尽な命令には彼女もよく振り回されていた。
それはクリスマスの少し前、晴子たちが母さんの勤めるスーパーに立ち寄ったときのことだった。別のグループのトモダチと会った晴子はその子に自慢しようと思いついて「家から『ふしぎな魔法使いファニー』のステッキを持ってきて。30分以内よ」と鍾子に命令したのだ。
遅れたら罰を与えられると焦った彼女は普段遠回りする交通量の多い県道を無理に渡ろうとした。それに気付いた母さんが轢かれそうになった彼女をかばって身代わりになったのだ。
そのとき私はそこにいなかったのだが、いたとすればその役はきっと私だったに違いない。だとすれば鍾子は私の代わりになったのだ。
しかしだからといって私がそれに納得して母さんの死を飲み込めたわけではない。




