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040 鴨女(かもめ)が泣いた日 4

 他に行く場所も無かったのでおれはしかたなく上倉晴子を秘密基地ガレージに連れてきた。「つるみや食堂」はそういう場所に向いてないしな。純喫茶「サイゴン」は中学生にはハードルが高い。ジャズとか。


 晴子をソファーに座らせ向かい側におれが座る。飲み物は烏龍茶でいいか? 

「ありがとう。でもここってこんなだった? もっと不気味な感じだったような」

 晴子は昔に来たことがあったか? まあ頑張って改造つくったからな。ボロアパートより断然快適だ。

 ここは2階建てで吹き抜けがあるし農業用のでかい換気扇を回せば熱が籠もらない。反対に冬は寒いがプレハブだけには断熱材を貼ってある。トイレも置いたぞ。汲み取りの仮設トイレだがな。

 不気味と言われれば昔はまあ確かに。ここで鬼婆が死んでるしおれも首を吊ろうと思ったぐらいだからな。……あれ? もしかして呼ばれてたのか?


 それで? 実際のところどうなんだ。晴子は花札トリオの誰かとつき合ってると思ってたんだが。それとも児島とか?

「それだけはないから! っていうかそういう関係じゃないわよ。一緒に遊んでくれる仲間が欲しかっただけ。あいつらだってあたしがお金をぱっと使うから側にいるだけ。あたしには結局それしかないから……あいつらが利用してるのを分かってあたしも利用してたつもりだった」

 そう言って晴子は自嘲気味に笑った。淋しかったと言えば陳腐に聞こえるが上倉家にいると上か下かでしか人を見ないように洗脳されるからな。しかも人別帳のころのカビの生えた肩書きのな。


「でも丁字は違ってた。あたしから搾り取れるだけ、むしり取れるだけむしる気だった……」

 粋がってタバコを吸うようになった晴子に、ある日丁字信伍が「これを付けて吸ってみろ」とシガーパイプを差し出した。スマートで指が汚れずタバコにメンソールの味が加わることでそれから愛用するようになったのだという。その時はドラッグのことは知らなかった。

 常習性が増したのは部活を引退してから受験勉強のストレスのせいだと晴子は言った。そしてそれを見越して丁字は晴子にこれが違法なドラッグだと教えて逃げられないようにした上で「これ以上欲しかったら金を払え」と要求し、次第にその金額をつり上げていったのだという。そういう売人バイニンの手口も一緒に教わったのか。クズの英才教育だな。


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