031 ダフィー・ダックのような女 1
数日後、廊下で上倉晴子に後ろから声を掛けられた。中学生なのに香水を使っているからすぐに誰か分かった。次に児島が頼ったのはお前か。いよいよ手詰まりのようだな。
「零一、あんたクソ雑魚のくせに何調子にのってんのよ!」
自分の親衛隊の二人を私が返り討ちにしたことで焦ったんだろう。ただし同じ花札トリオでも丁字信伍は頭脳労働専門で、晴子から引き出せる親の金が興味の中心だからスタンスがちょっと違うがな。
それで今度はお前が相手になるということか? そういえば晴子には昔プロレス技の実験台にされたこともあったな。4の字固めとかな。今思うとスカートのままでよくやってたよな。
「なっ、ちょっと何言い出すのよ! そんな昔のことはさっさと忘れなさいよ!」
ソフト部で日焼けした勝気な晴子が顔を真っ赤にして恥ずかしがる姿はちょっと見ものだ。
上倉家が大地主の庄屋だったこともあって、晴子の父親の上倉源一は今でもお大尽気取りの「殿様」だ。狩猟が趣味で家にはいくつも剥製が飾ってある。
一人娘の晴子も「お姫様」で小学生のうちから家来を何人も従えていた。そのころの私はすでにランドセルをいくつも持たされる下僕の役どころだった。拒否しても家来どもに押さえつけられドロップキックやアックスボンバーを食らわされるだけだから諦めて受け入れていた。
役得と言えばたまにおやつのおこぼれをありがたく頂戴したことぐらいか。パンチラがセックスアピール? 好きな子ほどいじめたい? そんなわけはないだろう。たぶん。




