028 青春金網デスマッチ VS.「足技の魔術師」鹿目康弘 2
「やるまえにこいつをつけてもらうぜ」と赤井が鎖を長くした手錠を取り出す。チェーンデスマッチか。土曜のプロレスを見たせいだな。
鹿目のあだ名は「足技の魔術師」だ。それなら確かに手錠は不利にはならないだろう。そのキックはテコンドーを真似た連続蹴りだ。ただし速さにこだわっているせいで重さは無い。
しかし錬金術師に対して魔術師か。当然別の意味だと分かっているが、本来の魔術師とは世の中の理や法則を魔術で解き明かそうとする人間のことだ。錬金術や導魔術、召喚術といった後に細分化した技術の根底にあるのが魔術だ。そもそも強くなりたいとか格闘技を極めようとかそういう気もないやつが気軽に魔術師とか名乗るなよ。おこがましいとは思わんかね?
赤井が手錠を鹿目の左手に、もう一方を私の右手に嵌めた。おい、こういうのはお互いに左手じゃないのかよ。セコさがだだ漏れだぞ。ヘイヘイ、どうしたどうした~クソ雑魚にビビってんのか~。
「うるせぇ! ナメた真似するやつは徹底的に潰す主義なんだよ!」
鹿目が右のローキックを放ってくる。それと同時に腕を引かれる。前につんのめったところで蹴りを変化させて顔を狙うつもりだろう。しかし私は引かれた力に逆らわず、そのまま捨て身に飛び込んで頭突きを食らわせてやった。鹿目が倒れ込んで驚いた顔で私を見ている。鼻血が出ているぞ。
踏ん張ると思ったか? 残念だったな。リハーサル不足なようだがケンカに筋書きは無いからな。




