025 不幸自慢からはじまる友情 3
「靴もあるのか。ちょっと外歩いてきてもいいか?」
いいとも。飾ってもらうために作ったんじゃないからな。
義足用の靴をマジックテープで止めて遊茶公大がいそいそと玄関に向かう。
おい、ケーキを食べてからでも……って、聞いてないか。雪が降った日の子供かよ。遊茶小枝子もそれを見て笑っている。
小枝ちゃん、小枝ちゃんにもプレゼントがあるんだよ。じゃーん。
注意をこちらに向けさせて私はリュックの中に【現出】させたカチューシャを取り出す。小枝子が目を輝かせて拍手する。いいリアクションだ。
こちらもカーボンファイバー製で色は黒と深みのある赤と青の三種類だ。通販番組かよ。プレゼントには地味だって? 普段使いならこんなもんだろう。だったら後でティアラでも作るか。
赤を選んで頭に着けてやる。我ながらいいじゃないか。喜んでもらえてよかった。これを着けて小枝子が外に出る機会が増えればと思う。このカチューシャにも義足と同じ魔子を吸収する機能が仕込んであるのだ。
人間は朝起きて目が覚めたときに五感も同時に立ち上がる。たとえればそれはエンジンのクランキングのようなものだ。初動を与えてやればエンジンは回り出す。ただし人によっては調子が悪かったり時間がかかる日もある。
手術した小枝子の耳はまだ試運転もしていないまっ新のエンジンと同じだ。そしてクランキングのコツは自分で掴む必要がある。そして私は魔子がその手助けになればと考えたのだ。バイクにキックスターターの負担を軽減するデコンプレバーがあるように、それと同じことが魔子を使ってできるはずだと。




