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00D 錬金術師と秘密基地 1
そうして私は裏山の納屋にやってきた。南京錠を外して中に入る。
土間のコンクリートに血の跡は残っていない。あのあとゼロワンが【抽出】して【吸収】したのだ。そのせいで私が昨日ここで死のうとしたのがすっかり嘘のようだ。
この納屋は居場所の無い私が誰にも邪魔されない避難場所だった。言ってみれば秘密基地だ。カンフー映画を真似て特訓の装置を作り、サンドバッグに見立てて肥料袋を吊した。アパートに置くと盗まれたり壊されたり破いて捨てられる宝物もここに隠してある。プラモとかエアガンとか『NO FUTURE』のバックナンバーとかマンガとかマンガじゃないやつとか。
ここに来たのはゼロワンの能力を把握して共有するためだ。
ゼロワンは偉大な錬金術師アレックス=クロウディが作った助手だ。そしてゼロワン自身も錬金術師であり特に鉱物の扱いに長じている。偉大な錬金術師という枕詞は必ず着けろとゼロワンがうるさい。