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8-side夏空-

助けてくれたその女性は、堂々としていてキャリアウーマンのようでかっこよかった。




(初めて会ったのに。不思議と落ち着く。)




たくさん話しかけてくれるが、声帯はまるできつく閉められた水道のように固く、声を出すことができなかった。




「あ、私、月野冬花。42歳。さっきも言ったかもだけど、会社員で、たまたま散歩してたの。」




(綺麗な名前。私も答えなきゃ。)




なんとか声帯を開く。




「晴山夏空。14歳。です。」




久しぶりに出した声はとても小さく、聞こえたかどうかが心配であった。漢字を聞かれたため、答えると冬花が優しい声でいう。



「夏空。すごく綺麗な名前ね。」



それを聞いた夏空は思わず首を振ってしまった。



「こんな名前大嫌い。夏の空なんて・・・。私には似合わない。」



そう。似合わないのだ。こんな暗くて何にもできない私には似合わない名前なのだ。



せっかく褒めてもらえたけど、嫌な感じに言い返してしまった。




夏空はどうしようかと悩んでいると、




ポンッ




ふわっと頭の上に手が置かれた。そして優しく撫でられる。


(気持ちいい。なんか力が抜ける。)




そして、冬花に聞かれたことをポツポツと答えていく。




(あ、泣きそう。)




答えていくと、涙が出そうになり慌てて夏空は言う。



「私は大丈夫です。ありがとうございました。」



(優しい冬花さんの顔をしっかり見たい。きっとこれで会うのは最後になるから。)



冬花を真っ直ぐに見る。



かっこよくて綺麗な冬花は夏空の憧れる女性そのものだった。



帰ろうと思い出口に向かうと思わぬ声がかけられる。



「あのさ!私、明日もこの時間に、この公園に来るんだけど、もし来れそうなら夏空も来て!もし。来れそうなら。」



夏空はなんて答えればいいか分からず、頭を下げて小走りで公園をでた。



(どうしよう。愛姫達も明日と言っていた。明日公園には行けない。どうしよう。)



少し冷静になり、ちゃんと断ろうと思い公園に戻るともう冬花の姿は見当たらなかった。



(どうしよう。どうしよう。)




愛姫達には逆らえないが、冬花を待たせるわけにも行かない。




頭の中がぐるぐるする。悩みながら帰りあっという間に寝る時間になる。




「どうしよう。」




布団の中でぽつりと呟く。こんなに悩み頭を使ったのは久しぶりであった。




同じようなことをぐるぐる考えていたが、一番強い思いが思わず言葉になる。




「明日も会いたい。」




布団の中で冬花の姿や声を思い出す。思わず笑みが溢れた。そして、愛姫達が早く帰ってくれることを祈りながら眠りにつくのであった。


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