7-side夏空-
あっという間に下校の時刻になった。
夏空の体は金縛りにあったかのよう動けなくなってしまい、下を向いたまま席に座っている。
クラスメイト達はチラチラと夏空の方を見ながらも、巻き込まれたくない一心で部活動の準備やや下校の身支度を素早く済ませ教室から出て行く。
(今日は何をされるんだろう。)
机の見つめるのも疲れ、そっと目を閉じる。
逃げ出したいけれど体が動かない。声も出ない。何もできないのだ。
ダンッ
机を叩く音が響く。
まだいるクラスメイト達はいつもより早い愛姫達の行動にびっくりして、無言で教室から出て行く。
「今日は何する?すてこ。愛姫、今日めっちゃイラついてるんだよね。」
愛姫は足を組みながら机に座る。そして枝毛を気にしながらだるそうに言った。
「まきっち今日イライラデー??じゃあすててこっち
とたっくさん遊ばなきゃ!!やったね。すててこっ
ち。今日はまきっちがたくさん遊んでくれるって
さ。」
充紅は夏空の頭をツンツンしておどけながら言う。
「まき大丈夫?すてこでストレス発散できるといい
ね。」
夢希は愛姫の様子を伺いながら矛先が夏空に行くように誘導する。
「おい。いつまで下向いてんだよ。なんか喋れよ。行
くよ。捨て犬みたいについてこい。」
「あっれれー。猫から犬になったワン!いっくよステ
テコ!あ、ポチにする?」
愛姫たちが外に出るのを見て、静かに後ろをついていく。変な様子を見せると、先生達に気づかれてしまうため、自然を装いながらついて行く。
体は重いのに、勝手についていく。逆らえないのだ。
胸は苦しくて、今すぐにでも吐いてしまいそうなのに、吐くと愛姫達の機嫌を損ねるとわかっている夏空の体は、喉をキュッと閉め、それを許さない。
「今日さ、気になってるヘアカラー試したいんだよ
ね。毛先何色かに染めて色見て、最後切っちゃえば
大丈夫っしょ。まあこいつ誰にも言えないし。」
「あ、じゃあさ!まきっちが試したい色以外にも、面
白い色試したい!レインボーステテコにしよ!」
愛姫達は薬局に入りさまざまな色のヘアカラーを楽しそうに買う。夢希と夏空は先にいつもの場所に無言で向かう。
(夢希は愛姫と充紅とは違う。どちらかと言えば私に近い。矛先がいつか自分に向くのを恐れて、一生懸命機嫌をとっている。)
無表情の夢希を見ながら、夏空は大嫌いな場所へ向かう。
(どうか、無事に終えますように。)
愛姫達が楽しそうに向こうから歩いてくる。そして私の体を思いっきり押し倒す。
私は人形になる。
目に映るものはまるで画面越しで見ている景色みたいだ。
私は私だけど私ではない。
転んだすぐ横にはミミズの死体がある。気持ち悪いなと思いながらも、もうどうすることもできない。
愛姫達が楽しそうに話しながら、ヘアカラーの使い方を読んでいる。
考えることを放棄した夏空は、転んだ状態のまま人形のようにそこに座る。
ザッザッザッ
足をずりながら歩く音が近づいてくる。
「〜〜〜〜〜」
愛姫達はそれに気づくと、何かを話しながら素早く帰る身支度をしている。
そして、近づいてきたその人を横目に見ながら愛姫達はその場を後にした。
(助かった・・・?)
しばらく動けないでいたが、徐々に体に力が入るようになると、ゆっくり立ち上がる。そして、近づいてきた人に頭を下げ、帰ろうとする。
パッ
腕を掴まれたことに驚く夏空。
これが夏空にとって人生で1番嬉しい出会いになることを夏空はまだ知らない。




