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夏空が寝る支度を済ませると冬花がすぐに口火を切った。
「ごめんね夏空。大事な時期に。でもね、勘違いだか
ら。」
冬花は一息つき、冬花らしくない歯切れの悪さで話を進める。
「んーとね。つまり、昔のことでね。最近電話がかか
ってきてる人は前付き合ってた人なの。6年も前の
話よ!」
夏空は全く想像してなかった話をされポカンとしている。
「彼が海外転勤になったのをきっかけに別れたのよ。
それが最近帰国したみたいでさ。子どもいるって言
ったらたまげてたよ。電話越しでも驚きの具合が伝
わったもの。」
電話のときのことを思い出したのか冬花は笑っていた。
「それであれでしょ?夏空違う方向に考えて悩んだん
じゃない?彼も夏空にあってみたいって言ってたけ
どさ、今大事なときだし。とりあえず受験とか終わ
って落ち着いたら彼ともご飯いこうかななんて思っ
てたわけよ。少し恥ずかしいから黙ってたの。」
夏空は勘が鋭いなーとぼやきながら冬花はすっきりした表情をしている。
「冬花さん海外に行くんじゃないの?」
夏空は前置きなしに単刀直入に聞く。
「え?彼はもう海外行かないしその前に付き合ってな
いよ!?よく彼のこと知ってるね。知り合いの知り
合いとか?」
まるでお笑いのコントのように話が噛み合わないため夏空はもう一度はっきり伝える。
「ごめんなさい。実は冬花さんの部屋に万葉集の本を
借りようと思って入ったの。そしたら海外出向の資
料が見えて。」
冬花はようやく話が見えると同時羞恥心に襲われる。
(一ノ瀬のこと話さないでよかったのに。最悪だ。)
冬花が悔やんでいると夏空が不安げな表情を浮かべる。
「確かに今年の12月に海外に行くかも。でも出向する
のは私の部下で、私は10日から2週間くらいしか行
かないの。最初のサポートだから。」
夏空の目を見ると今度は絵に描いたようなまん丸な目をしていた。
「ごめんね。最近会社も景気そんなよくないからさ海
外のサポートも不確定だったし日程もしっかり決ま
ってないから言わなかったのよ。」
夏空は恥ずかしそうに体操座りをして膝に顔を埋める。
「冬花さんごめんなさい。」
ぽつりと呟いた声から夏空のほっとした気持ちが伝わる。
「次からはすぐ聞いて。夏空には隠し事しないから。
不安にさせてごめんね。」
リビングには数日ぶりに穏やかな時間が流れた。
冬花は元カレについて質問攻めにあうのはもう少し後の話であった。
最終話まであと5話です。
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