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(明らかにおかしい。)
冬花はコピー機の前で刷られていく紙を見つめながら考える。
朝、夏空は朝泣き腫らした顔で家を出て行った。起きた時間も冬花より早く、冬花が起きた頃には朝の支度が済んでいた。
昨日の夜から様子が変であった。あんな夏空を見たことがない。
(え?いじめ?いやこの時期にあるか?秋帆ちゃんと喧
嘩?柳田君と何かあった?)
頭の中にはハテナマークしか浮かばない。
(私に相談できないことかな。)
冬花は悔しかった。自分が親として頑張らなければいけないはずなのに何もできていないことが。
「月野さん?大丈夫ですか?」
コピーが終わっても動かない私を心配した後藤が声をかける。
「体調悪かったら無理しないでください。僕にできる
ことなら何でもやります。」
コピーしたものをまとめながら後藤が笑顔で言う。
「ありがとう。大丈夫大丈夫。」
冬花は頭を切り替え仕事に集中した。
携帯が鳴る。夏空に何かあったかと思い急いで番号をみると冬花の表情が固まる。
すぐに席を外し電話相手に仕事中であることを伝える。
その後は何度も集中力が途切れ、いつの間にか昼休みになっていた。冬花は素早くご飯を済まし子育て中の何人かに話を聞いてみた。
『え?お子さんが悩んでるみたい?そんなことしょっ
ちゅうあるよ。中学生の女の子なんて毎日なやみだ
らけよ。』
『俺のとこは全く学校の悩みを父親に言わん。姉妹で
話すか母親交えて女三人で話すんだ。酷いだろ。』
『元気ない日が続いたら声をかけるかな。うちの子で
最近あったのは、内緒でゲームに課金して、それを
隠すのが後ろめたくなってたらしい。もしかしたら
月野さんの子も隠し事とかかもね、』
色々な意見を聞くことができた。しかも聞いた全員が同じような経験をしたことがあった。
(一日で慌てすぎかな。)
夏空の元気がない顔を見るのがつらい。すぐにでも夏空の悩みの種を消したかった。
(受験にも影響出ちゃうと嫌だし、夏空に夜聞こう。)
過干渉だと思われてもいい。
ちゃんと待った方が親として正しいのかもしれない。
いろいろ考えたが、最後には直接聞くという結論に辿り着く。
冬花はその日、何度も時刻を確認し、定時になると同時に急いで家に帰ったのであった。
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