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60-side夏空-

冬の寒さがさらに増す中、三学期が始まった。


夏空は思ったよりも落ち着いて、学校と塾で勉強する日々を送っていた。



夏空は受験に失敗したときのことをあまり考えていなかった。もちろん受かりたいとは思ってはいるが、それ以上に高校に進学することになっている状況を今でも嬉しく思っている。




夕方、夏空は家に帰ると在宅勤務のはずである冬花の靴がなかった。




(早めに終えてどこか出掛けているのかな?塾行く前ま

でに帰って来なかったら連絡しよう。)




ちらっと時計をみる。塾まではまだ時間がある。




これから塾で勉強するからか、なんとなく今の隙間時間に勉強する気にはならない。




しかしテレビを見たり昼寝をしたりする気にもならない。




(あっ。冬花さんがいってた本を読もう。確か部屋の本

棚にあるから好きなときに読んでっていってたな。)




年末のクイズ番組で万葉集に関する問題がでた。その時に冬花が、万葉集をとても分かりやすく解説している本があると言っていたのを思い出した。




冬花の部屋を一応ノックしてそっとドアを開ける。



普段はほとんどリビングで過ごすため冬花も夏空も寝るときくらいしか部屋に行かない。


だからお互いの部屋に入るのはあまりないことだった。




冬花の机の上は珍しく仕事の資料が広げてあった。夏空は本を取るときに資料の文字が目に入り動きが止まる。





カチャカチャ






鍵を開ける音が聞こえる。




夏空は本を取らずに急いで部屋を出る。




「あ、おかえり夏空!実はあと30分仕事なのよ。

 今マウスの電池切れてさ、ストックもないから急い

 で買ってきちゃった。」



夏空はなんとか平静を装う。そして冬花は仕事をするため部屋に入っていった。






(どうしよう。)






夏空の表情は固まったままだ。







(海外出向って確かに書いてあった。)







頭の中がごちゃごちゃのまま、夏空はだいぶ早く塾に向かうのであった。






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