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10月になった。
残暑も終わり、朝と夜が少し肌寒い。
夏空も秋帆もめきめき学力を伸ばし、二人とも東高校の合格圏内に入った。
「別に柳田君も連れてきていいよ。三人で勉強すれば
いいじゃない。」
「秋帆もそう言ってたけど、なんか誘いづらくて。」
どうやら夏空は塾の男の子と仲よくなったらしい。今まで学校の話をするときは大方授業の話か秋帆の話であったが、最近は柳田君の話もよくする。
(柳田君を見てみたいけどなぁ。)
冬花の勘では、柳田君と夏空はなんとなくいい雰囲気なのではないかと思っている。しかし下手に夏空にいうのもよくないため黙っていることにした。
「柳田君は数学がすごく得意なの。秋帆は英語が得
意。いいなぁ、二人とも。」
「夏空は国語ができるじゃない。国語できるってすご
いことよ。文才もあるし。羨ましいよ。」
「国語得意かどうかわからないよ。好きではあるけど
さ。得意って聞かれるとなぁ。」
夏空は机に突っ伏す。
「あ、明後日秋帆ちゃん来るよね?」
冬花が確認する。
夏空は定期的に秋帆と一緒にテキストを進めたり暗記問題を出しあったりしている。
「うん!その予定!」
「じゃあ明日の塾で柳田君誘ってきなよ。ほら、受験
は団体戦よ。柳田君のためにもなるわよ。」
柳田君の利益を押し出し冬花は夏空を誘う。
夏空も、柳田君のためと言われると誘った方がいい気がしてくる。
「じゃあ誘えたら誘ってこようかな。土曜日のお昼か
ら夕方までここ使っててもいいの?」
「リビングなんて自由に使いなさい!なんなら私出て
もいいし!」
(外に行くとしても柳田君を一目見てからだけどね。)
冬花は心の中でこっそりと言葉をつけたす。
土曜日
「お邪魔します。」
夏空は秋帆と柳田君を家に連れてきた。
柳田君はぺこっと頭を下げ、靴を揃える。
(え、想像以上にパーフェクトボーイじゃん。)
冬花はバレないように柳田君をみる。
「どうぞー。えっと柳田・・・「柳田春樹です。あの、これ母から。」
柳田君はお菓子が入った紙袋を頭を下げて丁寧に差し出す。
「ごめんね柳田君。私が誘ったのに気を遣わせちゃっ
たかな?」
夏空が慌てていうが柳田君は首を振る。
「ありがとう。後でみんなで食べよっか。私は今から
少し出かけてくるね。自由にしてて。」
冬花は素早く出かける準備をする。チラッと子ども達の様子を見ると早速勉強にとりかかっていた。
(みんなで東高校に合格してほしいな。)
冬花は心の中で強く思う。
夏空達の受験の日が刻々と近づいている。




