50-side夏空-
(最近、毎日が本当に幸せ。)
夏空は一人、顔が緩むのを隠した。
登校中ににやにや笑っているのはどう考えてもおかしいからだ。
秋帆の話、冬花の話を聞いて驚いたし悲しかった。
何かできることはないかを考えたりもした。
『夏空が毎日元気なだけで私は幸せだよ。本当に。
それに、夏空も秋帆ちゃんも世の中の色んな人も
それぞれが見えないところで戦っているんだよ
ね。きっと。私は大人になってからそれに気づいた
よ。夏空は賢いからもう分かったのね。すごい。』
冬花の言葉を思い出す。
緩んだ顔が今度は真剣な表情にかわる。
(私なりに大切な人を守りたいな。)
愛姫達の顔が浮かぶ
(自分が正しいと思ったことをやらなきゃいけない。
もう二度前の自分には戻らない。)
学校の下駄箱に行くと愛姫がいて夏空は驚く。
愛姫はだるそうな顔でゴミ箱に何かを捨てていた。
愛姫が無言で去った後、夏空はそっとゴミ箱を見る。
(何これ。)
いじめっこやら最低だの酷い言葉が書かれた紙屑がそこに捨てられていた。
夏空は衝動的に愛姫を追いかける。
愛姫の腕を後ろから掴むと愛姫がとても驚いた顔をし、反射的に腕を振り払われる。
そんな愛姫の顔を見たことがなかったため、夏空も少し驚く。
「何?」
愛姫はぶっきらぼう話す。
「愛姫のこと許せたわけじゃない。」
愛姫は目を伏せる。
「でも、今愛姫がやられていることもおかしい。」
夏空は愛姫を真っ直ぐに見つめる。
「百歩譲って私が愛姫にやり返すのならわかる。
でも、周りの人が愛姫にやり返すのは違う。」
夏空は自分が言いたいことをようやく整理できたため
堂々と伝える。
「私はこれを見て見ぬふりしたくない。」
愛姫の腕を取り愛姫のクラスに入る。
周りの人は驚き夏空を見る。
「誰かわからないけど、これ以上こういうのやめな
よ。愛姫が何かしたなら先生に言えばいいじゃん。
何もしてないなら、これはいじめだよ。」
誰にいうわけでもないが、クラスのみんなに向かって夏空はいう。
紙屑を教卓の上に置き、クラス全体を見渡す。そしてもう一度愛姫を見る。
「愛姫、さっきも言ったけど、私はやっぱりまだ許せ
ない。相当酷いことされたから。でも、だからとい
って関係のない人から酷いことされるのはおかしい
と思った。何かあったら言って。力になるから。」
夏空は言い終えるとすぐにクラスを出る。
クラスの外には充紅、夢希、そして秋帆がいた。
充紅は一部始終を見て、友達と一緒にくるっと向きをかえてクラスに帰っていく。
夢希は夏空に向かって謝るように頭を下げた。
秋帆は笑顔で夏空にOKマークをおくる。
「夏空冬花さんみたい。」
「自分でもびっくりしちゃった。」
夏空は恥ずかしそうに下を向く。
「でも、我慢できなかったんだ。」
夏空はぽつりと呟き、秋帆を見る。
秋帆も夏空を見て優しい声で夏空に話す。
「私達、もう大丈夫だね。絶対。」
「うん。学校の中に一人でも味方がいるって最強だよ
ね。よかった。」
お互いに笑い合う。
夏空は前を向く。
もう、あの頃に戻ることは二度とない。
今度は、あの頃のように
苦しんでいる人を救える人になりたいと
夏空は強く思うのであった。
連載当初はコロナ禍の設定で書いていました。
しかし、どうにも書きづらい。いや、書けない!
っと強く思い、コロナ禍の描写を消しました。
コロナ禍ではないという設定で書いていますのでよろしくお願いします。




