48〜冬花の昔話〜
母と二人での生活はとても幸せだった。
冬花はもちろん母も明るくなった。
明るくなった母とは話しやすく、いつのまにか仲のよい親子になっていった。
父親の様子は定期的に母が見に行っているようだった。
別居から2年
冬花は無事に受験を終え高校生になることができた。
裕福ではないけど幸せなが生活がこのまま続くと思っていた冬花だが、寒い冬の日にその願いが砕け散ることになる。
ある冬の日、冬花は授業中に先生に呼び出された。
「月野!今お母さんから学校に電話があった。
急いで母親と連絡取りなさい。」
冬花は電話を借りて母に電話をすると泣きじゃくる母の声が受話器から漏れる。
急いで早退し家に帰ると、母は床に崩れ落ち泣き続けていた。
母に駆け寄ると、母は泣きじゃくりながら答える。
「あ、昭久さんが、昭久さんが、自殺した
って警察の人から連絡がきて・・・。」
(え?お父さんが自殺)
頭が真っ白になる。
あんなに嫌いだった、嫌いになった父親なのに、いざ
死を突きつけられるとショックであった。
取り乱す母をなんとかなだめつつ、冬花自身も心に深い傷を負った。
遺書には、今までの過ちや家族への懺悔がミミズのような字で書いてあった。
冬花は部屋で一人涙を流す。
(こういうときに限っていい思い出を思い出しちゃうのはなんでだろう。)
小学校のときの自信満々の父親を思い出す。
頭がよく仕事ができる父親だった。
今の方が小学生の頃より少しは父親の凄さがわかる。
冬花のやりようのない気持ちは心を蝕む。
追い討ちとなったのは母の変わりようだった。
母は父親を愛していたのだ。
自分を責めた母はやつれていった。冬花とも距離が生まれ、徐々に徐々に仲のいい親子とは180度違うものになっていく。
そして冬花が20になる年に、母は病気で他界した。
(どうしてこうなったんだろう。)
父親も母親もなぜあんなにも変わってしまうのだろう。
冬花はわからなかった。
父親に酷いことをされたが、死んでしまったことにショックを受ける自分が。
あんなにも酷かった父親を最後まで愛し、
その愛のせいで体も心も壊し呆気なく他界した母が。
(愛ってなんだろう)
漠然と一人で考える。
答えが見つかることはなく、淡々と時が過ぎる。
よろしければ感想評価ブックマーク等をしていただけると嬉しいです。励みになります。




