46〜冬花の昔話〜
小学校までは、いわゆる普通の家庭で育ったと思う。
今思い返すとかなり恵まれた環境だったと思うけど、当時はそのことには気づかなかった。
仕事人間の父
その父を支える母
一人娘の私
父は元々口数が少なく、少し怖い存在ではあったが
3人家族でそこそこ仲良く暮らしていた。
その幸せが壊れたのは小学校6年生くらいの頃からだ。
詳しくはわからなかったけど、どうやら父が嵌められたらしい。俗にいう出世争いというものに負け、上に登る梯子を蹴落とされたことがきっかけだ。
しかも、後から聞いた話だが、蹴落としたのは父が可愛がっていた部下だったことが追い討ちとなり、父は徐々におかしくなっていった。
中学に上がる頃には、父は完全に別人になってしまった。
ヤケクソになって会社を辞め
転職しても高いプライドが仇となり長くは続かず
酒に溺れ、家族に罵倒を浴びせるようになった。
母はパートから正社員になり、なんとか家計を支えていた。
「もう無理だよ。離婚すればいいじゃん。」
中学生になった冬花は、崩れていく父親を見るのが苦しかった。家にいても息がつまり、部活が終わった後は市の図書館に閉館ギリギリまで閉じこもった。
家に帰ると母の代わりに家事をこなすことにも疲れ、完全に疲弊していた。
「冬花、ごめんね。本当にごめんね。でも、もう少し
お父さんを支えてあげよ?お父さんきっと良くなる
から。」
(いい加減にしてほしい。早く家を出たい。)
冬花は母に対しても不信感を募らせる。
ある夜、冬花の怒りが爆発した。
「いい加減にしてよ!いつまでそうやってお酒飲んで
れば気が済むの?働かないなら家のことぐらいやれ
ばいいじゃない!!」
冬花が父親に向かって怒鳴る。
「てめぇは何様のつもりだ!ガキの分際で。出てけク
ソ野郎。お前もどういう躾してきたんだ!」
父親も突沸したようにきれた。そして冬花と母に手をあげる。
「お母さんもお母さんよ!おかしいでしょ!どうして
この状況をかえようとしないの?」
冬花の母は涙を堪えながら、ただひたすらに謝っていた。
家族全員が暗闇の中に落ちていく。
人は驚くほど性格が変わってしまうんだなと思った経験があります。
いい意味でも。悪い意味でも。
でも、変わってしまって人は
おそらく私の想像を超えるような経験や葛藤を乗り越えて変わってしまったのかなとも思います。
自分も変わってしまったと思われる場合は
いい方向に変われているといいな。




