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「それで?夏空は自分のことも話したの?」
夜、秋帆が帰った後に冬花はコーヒーを飲みながら夏空と話す。
「うん。冬花さんのことと愛姫達のこと話したよ。」
『夏空辛かったよね。ごめんね、気づかなくて。そん
な酷いこと信じられない。』
秋帆は涙腺が緩んだのか、夏空の話を聞いた後も涙ぐみながら謝っていた。
「なんかさ、今思えばいじめられてたことが本当にあ
りえないと思うし、やっぱり今でも思い出すと苦し
いんだけど・・・。」
「だけど・・・?」
夏空はこてっと冬花に寄りかかる。
「今、十分に幸せだから、もう気にならないの。今が
よければもういいやって。」
冬花は夏空の頭をポンっとした後に微笑む。
「偉い偉い。過去じゃなくて今と未来をみることはと
てもいいことよ。とても。」
冬花は自身の父親のことがチラつく。しかしすぐに記憶を封じ込める。
「冬花さんはさ、思い出したくないこととかある?私
冬花さんのこと何にも知らないや。」
「そりゃあるよ。・・・うん。ある。」
軽い口調が少し低いトーンに変わる。
夏空は冬花の苦しそうな表情を初めて見る。
「ご、ごめんね。冬花さん。」
「ん?謝ることなんか何にもないよ。」
今度は冬花が夏空に寄りかかる。
「夏空はたぶんわかると思うんだけどさ、たまに真っ
暗な大きな穴に吸い込まれそうにならない?寝る前
とかさ。沈むんじゃないかって思うとき。」
冬花は目を閉じる。暗闇の向こうには父と母の姿があった。
「・・・。わかる気がする。暗くて汚い泥の中に落ち
ていくってよく思うの。私。」
夏空は目を伏せる。
「私の昔話なんて何にも面白くないけど、夏空が聞い
てくれるなら話しちゃおうかなぁ〜。」
冬花はわざと戯けた口調で言う。
夏空は冬花の昔の話を真剣な顔つきで聞くのであった。
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