40-side夏空-
4月になった。
今年の桜は開花が遅く、入学式の日も花が少し残っている。
当たり前のことだが、夏空は愛姫達とクラスはバラバラになりほっとする。
『夏空の今年の目標は志望校合格と少なくとも1人は友
達を作ること。頑張って!!』
冬花の台詞と思ったより強く叩かれた背中の衝撃を思い出す。
(友達ってどうやって作るの?友達になろうって言えば
いいの?そもそも友達ってどこからが友達?)
休み時間に夏空は、新しいクラスでぽつんと席に座り一人で考えていた。
周りはすでにグループができていて、入っていけるような空気ではなかった。
(無理だよ冬花さん。高校で頑張るから許して。)
夏空は小さくため息をつき、お便りに目を通して時間を潰していると小さな話し声が聞こえる。
「あ。朝比奈さんと同じクラス。あの噂本当かね。」
「いくら可愛いくても私は無理だわー。男子ってそう
いうところほんと気づかないよね。」
夏空は教室を見渡すと、夏空と同じようにぽつんと座っている女の子がいた。
(すごく綺麗な子。)
夏空と同じように一人で座っているが、堂々と本を読んでいる。
夏空は朝比奈を見ているとクラスの女子二人と男子一人が朝比奈さんに近づく。
「朝比奈さん。ぶっちゃけさ、去年の噂って本当な
の?違うクラスだったからさ、あんま詳しくわから
なかったんだよね。」
「本当なら俺なんてどう??なんちゃって!!」
「彼氏は今いるの?あ、何人もいる感じ?」
クラスの皆が聞き耳を立てる。
(嫌な感じだな。)
夏空はムッとしながら様子を伺っていると、朝比奈が
本を置きため息をつく。
「関係ないでしょ。ほっといて。うるさい。黙れ。」
最後は男子に指をさしながら黙れといい、また本を読み始める。
「うわー。だっせー。朝比奈に振られてやんのー。」
周りの男子が茶化す。
「う、うるせー。ジョーダン通じないのかよ。だから
去年もハブられてるんだな。かっわいそー。」
黙れと言われた男子は、苛立ちながら朝比奈から離れる。女子はクスクス笑いながら違う女子グループのもとへいく。
(朝比奈さんかっこいい。)
夏空は朝比奈と話してみたいと思った。
(話すきっかけがないな。どうしようかな。)
夏空がどうやって話そうか考えていたが、結局話せないまま1週間がすぎてしまった。
クラス内も徐々にグループがはっきりとしてきた。女子の中では、夏空と朝比奈だけが孤立している。
『へー。朝比奈秋帆っていうんだ。
その子。普通に話しかけてみりゃいいじゃん。』
冬花が家で言っていた言葉を思い出すが、なかなか実行には移せない。
(普通ってなんだろ。普通って。)
夏空は頭を悩ませながら、体育館に移動した。
「今日から体育はバスケットです。突き指をしないよ
うに十分注意すること。じゃあパス練習から。」
パス練習は背の順で並んだときの隣のことやる。夏空はペアを探さなくていいことにホッとする。
「はーい。じゃあ次は走りながらパスして最後にシュ
ート。いろんな子と組んでやってみて。」
ペアだった子はすぐに仲良しの子のところに行く。
(どうしようかな。)
周りを見ると、朝比奈の周りに先週絡んでいた女子がいた。
空気が怪しい。
夏空は少し近づいてみる。
「ビッチ菌がうつる〜笑。」
先生にバレないよう小声で悪口を言っているのが聞こえる。朝比奈は無視をしてボールをその場でドリブルしている。
(ビッチってなんだろう?でも絶対悪口だよね。)
朝比奈は気にしてないような素振りだ。
でも夏空は知っていた。
悪口を言われ続けることがとても辛いことを。
気にしていないフリをしても
精神は削られていることも。
夏空は意を決する。
「あ、あの、朝比奈さん。一緒にやりゃにゃい?」
(最悪だ。噛んじゃった。)
朝比奈と周りの女子が夏空を見る。
夏空は耳まで真っ赤にして、その場に立つ。
「あ。去年いじめられてた人でしょ。」
ぷっと笑われたため、より一層恥ずかしくなる。
恥ずかしくて下を向きそうになったそのとき、
「ありがとう!やろう!晴山さん!」
朝比奈が笑顔で夏空にボールを渡す。
夏空は朝比奈が笑っているところを初めてみた。
その笑顔が嬉しくて、笑われたことなどもうどうでもよかった。
夏空はようやく朝比奈と話すことができたのであった。




