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「・・・。」
「・・・。」
話を聞かせてと言ったものの、夏空は戸惑った様子で下を向いたままだった。
「いじめはさ、前から続いてるの?」
ほんの少し夏空がうなずく。
「親御さんはこのこと知ってるの?」
夏空が固まる。答えに困っているようだった。そして、落ち着いた声ではっきりと言った。
「・・・。いない。近くの向日葵荘っていう施設が私の家。」
冬花は驚いた。
しかし、それを隠しながら
優しく夏空の頭をポンポンとたたく。
「じゃあ、そこの人や学校の先生は知ってるの?」
「知ってるかもしれない。けど何も言わない。私も言いたくないから。」
だんだんと声が大きくなった夏空をみて、胸が苦しくなった。
「私は大丈夫です。ありがとうございました。」
顔をあげて、真っ直ぐに冬花をみた夏空の目は、先程とは同じ少女と思えないほど強い目をしていた。
「あのさ!私、明日もこの時間に、この公園に来るんだけどさ、もし来れそうなら夏空も来て!もし。来れそうなら。」
帰ろうとする夏空に早口で言う。
言った後に、門限だったり規則があったりするのではないかと思ったが、とにかくもっと話したかった。
夏空はぺこりと頭を下げ、小走りで公園を出て行った。冬花も、暗くなってきた空をみて、小走りに家に向かう。頭の中では夜の予定を立てていた。
まずは風呂、次にご飯、その次に明日の準備。
そして向日葵荘について調べる。
「児童養護施設 向日葵荘。あ。ここにあるんだ。うちから結構近いじゃん。」
レモンソーダを飲みながら、パソコンで向日葵荘のことや児童養護施設のことを調べる。
おおきな独り言を呟きながら調べるのは、独り暮らしが長い証拠だと勝手に思っている。
養護施設に入る子どもたちは、さまざまな理由を抱えていることが改めてわかる。夏空のあの様子だと、おそらく、親に対していい感情をもっていないだろう。
一通り調べ終えた冬花は、椅子に座ったまま大きく伸びをした。
(明日は在宅だけど、公園にも行かなきゃだから早く仕事始めて早くに終わろ。)
そう思い、パソコンを閉じようと思ったが、もう一度画面を開く。
そして、もう一度検索をする。
児童養護施設 養子縁組
一番上に出てきたページから順番に読んでいく。
(養子縁組は親子になれるんだ。親子になるためには、いくつかの審査があるんだ。まあ私なら審査通るでしょ。そして、里親っていうのは親子にはならず一時的に育てる制度のことなのね。全然知らなかったな。)
一通り記事を読み込むとふと我にかえり、思わずため息をつきながら笑った。
(何考えてるんだ私。42歳になって母性でも目覚めたのかこのやろう。)
長時間パソコンと向き合ったため、肩も目も疲れ、素早くベッドに転がり込む。
自分でもなぜ夏空のことがこんなにも気になるのかがわからない。
でも、放っておくことができない。瞼が落ちそうになったので意識がとおのく前に電気を消した。真っ暗な部屋の中で、今日1日を振り返る。
とりあえず明日公園に行こう。
公園で夏空ともっと話そう。
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