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室内にはあの時の映像と音声が流れる。
夢姫に対してお前と言っている愛姫
夢姫と夏空を戦わせる提案をする充紅
夏空のリュックを背負う夢希
そして夏空にヘアカラーを投げつけるところ
夏空と夢希をどつく愛姫の姿
母親達は息をのむ。
愛姫、充紅、夢希は映像を少し見ると気まずそうに目を逸らす。
「先に謝罪します。動画を撮ってしまい申し訳ありま
せん。」
冬花は頭を下げる。
そしてゆっくり顔を上げて理解を求める。
「夏空が危ないと思い急いで駆けつけるとこの光景を
目にしました。皆様もきっと同じだと思います。
私は大切な子どもを守りたい一心でこのような行動
をとりました。」
冬花は愛姫達に顔を向ける。
「これはいじめです。犯罪です。そちらが認めないの
であれば警察に行きます。」
「そんな、子どものことで警察だなんて。」
充紅の母親の言葉を聞き瞬時に言い返す。
「暴行罪、強要罪、窃盗罪、恐喝罪。今まで夏空がや
られてきたことは立派な犯罪です。本来、いじめと
いう言葉で片付けるべきではない。」
冬花は母親をキッと睨みつける。
「でも、夏空自身はそれを求めていない。二度とやら
ないことを誓うならもう終わりにしたいと言ってる
んです。」
愛姫達の目にも涙が浮かんできた。
「ですが、やっぱり今日の態度を見て、警察に行こう
と思います。残念ですが。」
冬花は夏空に帰りの支度をさせる。
ばしっ
思いっきり頬を叩く音が室内に響いた。
「こんな恥を親にかかせて。みっともない!だからあ
んたは出来損ないなのよ。どうしてお姉ちゃんのよ
うにできないの。いい加減にしてちょうだい!」
愛姫の母親がヒステリックに声をあげる。
「あなたは何もできないけど、何もしなかったから放
っておいたのよ。まさかこんなできの悪い子になる
なんて思いもしなかったわ。」
愛姫の反対側の頬をまた叩く。
愛姫は母親のヒステリックに慣れている様子だった。
涙を溜めながらただ黙って殴られている。
充紅も夢希も夏空も信じられないような目で愛姫を見る。
「お母様落ち着いてくだ「そもそも担任のあなたがちゃんと見ていないからこうなるじゃない!」
「こんなできの悪そうな子達ともつるむから愛姫ちゃ
んがよりできなくなるのよ。」
「は?それはうちの充紅の台詞なんですけど。」
場は責任のなすりつけ合いのようになる。
「今はそんな場合「本当に、本当に、申し訳ありませんでした。」
夢希の母親が立つ。夢希も母親に無理矢理引っ張られて立たされる。
「ごめんなさい。もう、もう二度としません。」
夢希は泣きながらぽろぽろと本音をこぼす。
「いじめなんか、何にも楽しくない。でも、怖かった
の。次は自分がやられると思うと、怖くて。」
「何それ!?愛姫ちゃんのせいだっていうの!?」
「違います!悪いのは私です。私が悪いんです。」
夢希は顔を上げることができない。
足元は涙のシミがどんどん広がっていく。
「警察にいくのなら私たちも行きます。子どもがやっ
てしまったことをちゃんと償いたいです。昨日家族
で話し合って決めました。」
母親と夢希は何度も夏空に謝る。
「ほら。充紅も謝りな。」
「ごめんなさい。もう二度としません。私が悪かった
です。本当にごめんなさい。」
状況をよんで充紅の母親が謝るようすすめる。
充紅もそれに気づきすぐさま謝る。
(親子揃ってそっくりだな。そういうところ。)
冬花は誠意のなさに反吐がでそうだった。
しかし、ここから決めるのは夏空だ。
冬花はグッと言葉を飲み込み黙る。
愛姫は怒りに震えている。
何に対する怒りなのかは、もはや愛姫自身にもわからなかった。
「愛姫!!!早く謝りなさい!!!」
愛姫の髪を引っ張り上げ立たせる。
先程の母親の姿とは180度変わり、言葉遣いも動作も乱暴になった愛姫の母親は、冬花でも怖さを感じた。
(ヒステリックな母親の元で育ってきたのか。大変なん
だな。この子も。)
愛姫を許すわけではないが少し同情をする。
冬花は自身の父親が少しチラついたため
頭を振り記憶を封じ込める。
「もう、しません。」
愛姫はボソッという。
「二度とでしょ!!謝罪は!?許してもらえるまで謝
り続けなさい!!」
「二度としません。ごめんなさい。」
愛姫は弱々しく頭を下げる。
「他の子にももうやらないって約束して。」
夏空は全員に向かって力強く発言する。
「もうやらないなら、これで終わりにする。許す許さ
ないは、今はまだわからない。」
夏空は堂々と胸を張り、大きな声で話す。
その姿はどこか冬花に似ている。
「でも、私はもう終わりにしたい。普通に学校生活を
送りたい。」
夏空のその言葉によって、今日までの戦いは幕を閉じたのであった。
あと一話で第一部が終わります。
第二部もお付き合いいただけると嬉しいです。
※何部まであるかは断言しづらいですが、そんなに
長くなる予定はありません。
(長い長くないは主観ですが・・・。)
ちゃんと完結させます。
よろしくお願いします。




