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翌日、冬花は早めに学校へ行く。
夏空と合流した後、校長室に案内され
他の保護者を待つ。
夏空は校長室が初めてなのかキョロキョロ周りを見ている。
冬花はどんな保護者が来ても対応できるように様々なパターンを考えていた。
ガチャ
一番初めに夢希とその母親が来る。
夢希の母親は大人しそうな人だった。
泣いたあとなのか夢希も母親も目が腫れていて、深々と頭を下げ着席する。
(よかった。まともそうな人だ。)
職員室の方が騒がしい。すごい剣幕でこちらに向かっているのが離れていても分かる。
思いっきりドアが開かれる。
そこには愛姫とその母親が扉の前に立っていた。
「うちの愛姫ちゃんに言いがかりつけてるのはどちら
様で?」
(うわ。うるさそう。愛姫はどっちのタイプかな。)
親の上に立つタイプか。
親の下で潰されているタイプか。
冬花は怒っている愛姫の母親に落ち着いて頭を下げる。母親は乱暴に椅子を引き席に着く。
しばらくすると遅れて充紅の母親がやってきた。
「もー。子ども達のことに親いるー?小学生じゃない
んだからさー。」
サバサバというかがさつというか。典型的な放任タイプだな冬花は勝手に思う。
「全員揃いましたので話し合いを始めていきたいとお
もいます。」
鈴木先生の進行でいよいよ話し合いがスタートした。
「昨日電話でもお伝えした通り、晴山さんのいじめの
件です。」
「あの。すみませんが愛姫ちゃんに聞いたところ、そ
の子虚言癖なんですってね。」
夏空を見ながら強い口調で愛姫の母親が先制攻撃を仕掛けてくる。
「あ、それ充紅も言ってたよねー。まあそういうお年
頃なんじゃないの?」
「愛姫ちゃんから聞いたけど、親がいないんでしょ?
育ちってこういうところに出るんだなって正直思い
ますよ。」
夏空は育ちのことを指摘され少し下を向く。
冬花は心のない言葉を平気でぶつけてくる二人に憤りを覚えた。
「失礼ですけど、私が今この子の保護者です。」
冬花は珍しく怒りの感情を露わにする。
「子どもの前でそんな言葉を言える方がよっぽどだと
思いますけど。」
(だめだ。止まらない。)
落ち着いて話を進めたかった冬花だったが、怒りのスイッチを完全におされてしまった。
「こちらは、いじめを認めて素直に謝罪と二度とやら
ないことを誓うのなら、もうこれで終わりにしよう
と思っていました。」
冬花は二人を睨みつけゆっくりはっきり話す。
「でも、そのような態度なら警察に行きます。正直、
あなた方のお子さんがやったことは犯罪だと私は思
います。子どもがやったでは済まされません。」
「だから、その子の虚言だと言っているの。こっちこ
そ警察行くわよ。まったく。」
愛姫の母親と充紅の母親は同じようなことを言い、まったく自分の子を疑ってはいなかった。
動画を見せて話を進めようとしたとき、小さな声が室内に響く。
「あ、あの。」
夢希の母親がその場に立つ。そして夏空を見て頭を下げる。
「夢希が、私の子が、ご、ごめんなさい。本当にごめ
んなさい。」
その場で母親も夢希も涙をボロボロこぼしていた。
「昨日夢希から聞きました。最初は信じられなかった
けど、最近の夢希はずっと変だったから。」
夢希の母親は涙を拭きながら続ける。
「うちの夢希は、昨日電話で聞いたひどいいじめをや
ったと認めました。」
愛姫と充紅は驚いて夢希を見る。
「ただ、こういっては何ですが、愛姫さんと充紅さん
に言われてやってしまったとも言っていました。怖
くて逆らえなかったと。」
夢希は嗚咽しながら泣き続けている。そんな夢希を母親は無理矢理立たせ夏空に向かって頭を下げさせる。
「もちろん夢希は悪いです。母親として恥ずかしいで
す。こんなことをしてしまうなんて。」
母親の涙も止まらない。
二人の嗚咽が室内に響く。
「頭を上げてください。」
冬花は少し迷いつつ、心を決めて話し出す。
「追い討ちをかけるようで申し訳ありませんが、動画
を見ていただきたいです。みなさんに。」
冬花は動画を撮った経緯を話しつつ、動画を再生する。
二人の戦いはいよいよクライマックスに向かう。
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