32-side夏空-
次の日、学校に行くと教室は異様な雰囲気に包まれていた。
愛姫と充紅は二人ではしゃぎ夢希は俯いたまま席に座っている。
クラスのみんなは状況が分からずチラチラと夢希を気にしている。
夏空はとりあえず自分の席に座る。
(自分もあんな風に見えたんだろうな。)
下を向いて背中を丸めながら座っている夢希は、以前の自分と重なった。
(どうしよう。)
声をかけるか迷ったが、夢希のやってきたことを許せているわけではない。
この状況をどうにかしたいという思いはあるものの、まだ自分の気持ちを整理できていない夏空は、じっと見つめるしかなかった。
その日は夏空には何事もなく過ぎた。
愛姫達は夢希にいじりという名のいじめをしているようだった。
それは昔の自分にやられたことにそっくりである。
夢希は作り笑顔でなんとか答えていた。
その光景を見ると心が痛むが、夏空は何もできずにいた。
(帰りに担任の先生に言おう。夢希のことも。)
早く先生と話がしたくて一日が長く感じた。
帰りの会が終わり、皆が帰った後職員室に向かう。
(ゆっくりと、事実を話していこう。)
職員室に入ると鈴木先生はすぐに相談室に場所を移し、夏空の話を聞く。
夏空は今までのことを全部話す。
愛姫達との関係が徐々に変わっていったこと
本当は嫌だったいじりを流してしまったこと
いじりがいじめになりどんどんエスカレートしたこと
今までやられた数々のひどいこと
そして昨日のこと
夏空は話すことがたくさんあったため、ところどころへんな文章になったり時系列が前後したりした。
分かりにくかった部分もあったと思うが、鈴木先生はメモをとりながら一生懸命に聞く。
「晴山。話してくれてありがとう。」
一通り話し終えた後、夏空の心はとても軽くなった。
(人に話すとこんなに軽くなるんだ。)
鈴木先生は手を口元にやり、何か考えていた。
「先生。今まで言えなくてごめんなさい。」
夏空は頭を下げる。
「晴山の何が悪いんだ。先生の方こそ、本当にすまな
かった。本当に・・・。」
鈴木先生が頭を下げる。
「とりあえず、この話を学年の先生をはじめ学校の問
題として、職員で話をしたい。」
夏空はこくこくと頷く。
「それと、愛姫、充紅、夢希の三人には個別で話を聞
いていく。その後に全員で話していく。」
方針が決まり、夏空はその場を後にする。
家に帰ると冬花はまだ帰ってきていなかった。
夏空は着替えてソファーに横になる。
目からは涙が溢れ出した。
冬花が帰ってきたため、泣くのをやめようと思ったが簡単に止めることは出来なかった。
「何された!?大丈夫!?怪我してない!?」
泣いている夏空を見て冬花がすっ飛んでくる。
夏空は慌てて否定し、今日のことを話す。
「鈴木先生にちゃんと言えたし、鈴木先生も手を打っ
てくれるのね。よかった。」
夏空は頷く。
「じゃあ何が悲しかったの?」
夏空は俯いたままポツポツと話し出す。
「どうして。どうして今まで誰にも言わなかったんだ
ろうって。」
夏空はまた涙ぐむ。
「もっと早く言ってれば、こんなことにならなかった
かもしれない。諦めずに頑張れば、いじめられるこ
となんてなかったかもしれない。」
夏空は手でごしごし擦る。
「私が弱虫で、何にもできない人だったからこうなっ
たのかなって。後悔してる。すごくすごく後悔して
るの。」
「夏空。」
冬花は夏空のほっぺを両手でむぎゅっと包む。
「いいじゃない。今はいい方向に向かってる。それ
に、人生必ず後悔するときは誰にでもある。取り返
しのつかない後悔もある。」
冬花は微笑む。
「大事なのは、その後悔を今後に活かすこと。」
冬花は夏空の涙を親指で優しく拭う。
「夏空はかしこいから。それができる。もちろん、夏
空が悪いからいじめられたっていうのは100%ありえ
ないからね。」
(ああ。きっと私はすごく単純なのかもしれない。もう
心が軽くなっちゃった。)
夏空は冬花の言葉を心に刻みながら
今度は嬉し涙を流すのであった。
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