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うずくまっている少女が、スカートの砂を払いながらゆっくりと立ち上がる。
昨日の雨のせいか、泥となった砂は少女のスカートに汚い模様をつけた。
下を向いたまま、さらに下を向き軽く頭を下げると、私の横を通り過ぎていく。
頭より先に体が動いた。
思わず腕を掴み、少女を軽く引っ張る。
すると、少女は少しよろけつつも初めて前を向きこちらを見る。
少女と目があった。
感情のない真っ黒の瞳。
すぐに目を逸らした少女は怯えながら私の様子を伺っている。
「あ、あのさ。とりあえず、どうしようかな。あ、怪我とかしてない?」
「・・・。」
「してるよね。みればわかるってね。怪我の手当しよ。うちにくる?あ、さっきよりも怖いか。怪しい人じゃないからね。けっして。通りすがりの会社員だからね。」
「・・・。」
だめだ。完全に怪しい。多分私が男ならまじでやばいやつ。
「とりあえず、近くの公園で座ろう。大丈夫、人目の少ないところだと怖いよね。ちゃんと大通り通っていくから。」
一言も喋らない少女と公園に向かう。
(傷の手当てするにしても、何をすればいい?最近テレビか何かで消毒液はしなくてもいいみたいなの見たしな。とりあえず傷口水で洗って汚れを拭いてあげればいいのか?でもそれくらい自分でできる年頃だよな。)
歩きながら自問自答していると、軽く肩をたたかれ我にかえる。
少女が目線を公園に向け、立ち止まる。私が公園に向かって歩くと少女も後について公園に入る。
公園に着くと少女は慣れた手つきで傷口を洗い、ハンカチで簡単に泥を拭った。
なにも手伝うことができそうにないため、自販機に向かいお茶とオレンジジュースを買う。
「好きな方選んで。」
少女は首を横に振る。
「選んでもらわなきゃ私が困っちゃう。それとも2本とも飲める?私さっきコーヒー飲んでたから、あんまりいらないのよね。」
空になったコーヒーのプラスチックコップをふりふりしながら少女に2本のペットボトルを差し出す。
少女はしぶしぶお茶のペットボトルを掴むとペコリと頭を下げた。
「・・・。」
「あ、私、月野冬花。42歳。さっきも言ったかもだけも、会社員で、たまたま散歩してたの。」
怪しまれないようにと思い、手帳型の携帯カバーに入れている免許証を見せた。少女はその免許証をチラッとみて下を見ながら初めて声を出した。
「晴山夏空。14歳。です。」
小さくてか細い少女の声。
でも、冬花の耳にはしっかりと聞こえた。
「なそら。初めて聞いた名前。どんな字を書くの?」
「き、季節の、夏に、空、です。」
夏空は下を向きながら上を指差し答えた。
「夏空。すごく綺麗な名前ね。」
素直に思ったことを言うと、夏空は首を振りながら先ほどよりも少し大きな声で言った。
「こんな名前大嫌い。夏の空なんて・・・。私には似合わない。」
俯きながら、吐き捨てるように言った夏空をみて、
思わず冬花は夏空の頭の上に手を置く。
そして少し迷いながらも、優しく頭を撫でた。
「私でよければさ、少し話を聞かせて。」
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