27-夏空side-
あっという間に帰る時間になる。
(もしかして、呼び出しないかも・・・?)
先程の言葉が愛姫達にきいたのかと不思議に思う。
帰りの会が終わる。
「あ、あの。」
一度も話したことがないクラスの石田さんが泣きそうな顔で話しかけてくる。
「え?どうしたの・・・?」
リュックを背負うのをやめ、石田さんを見る。
その一瞬だった。
背中を押される。
石田さんの方に倒れ込み顔をあげる。
夢希がリュックを丸ごと持って走り去った。
「返してほしかったらいつもの場所で土下座!あと、
遅くなったけど、お帰り記念レインボーしよ!」
充紅がきゃっきゃっとはしゃぐ。
「自分の立場忘れちゃってるからね。早く教えてあげ
ないとね。」
愛姫が中指を立てながら教室から出る。
(しまった!)
慌てて追いかけようとすると、石田さんに腕を掴まれる。
「え?まだ何かあるの?」
困惑する夏空だったが、石田さんは涙ぐみながらぼそぼそいう。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。あ、
あと5分だけ待ってほしいです。じゃないと次は私が
いじめられる。」
足止めをしろという命令をされたのであろう。夏空は困ったが、前の自分と重ねてしまう。
(私が逆の立場なら同じことしちゃうのかな・・・。)
そう思うと、石田さんのことを振り払えなかった。
(携帯無事かな。ボイレコはセットしたけど・・・。
リュックごと濡らされなければいいけど。)
夏空は冬花のことやリュックのこと、泣いている石田さんのことをぐるぐると考えながらその場にしゃがみ込んだ。
5分ほど立ったあと、夏空は急いでいつもの場所に向かう。
(あの場所に行くのも半年ぶりだ。)
河川敷の高架下は薄暗くて人が通らない。
人に見られたくないことをやるにはちょうどいい場所であり、いつしかいじめの場所となっていた。
(無事でありますように。)
3人の姿が見える。
(え?・・・。)
愛姫、充紅は気だるそうにコンクリートに座っている。夢希は俯きながら夏空のリュックを背負い立っていた。
急いで向かうと、気づいた2人が嘲笑う。
「遅いじゃん。夏空ちゃーん。」
愛姫にちゃん付けされ鳥肌が立つ。
「リュック返して。」
夏空は強くいう。
「あー。やっぱ腹立つわ。でもさ、いい提案がある
よ。夏空になるかすてこに戻るか、選びなよ。」
(意味がわからない。)
夏空の理解していない顔を見て充紅がニヤニヤしながら言葉を付けたす。
「ばっかだねー。すててこっち。大チャンスだよ。夢
希がさー、最近ちょっと空気読めないんだよね。」
人差し指で髪をくるくるしながら楽しそうに話す。
「このリュック背負った夢希ごと川に突き落とした
ら、もうやめてあげる。ほら、リュック取ったのは
夢希だし。筆箱捨てたのも夢希。」
充紅は夢希を指差す。
夏空は想像していない出来事に直面し固まった。
(今までも、私は何度か川に突き落とされた。)
夢希は常に従順に愛姫達の命令を聞いていた。
その通りに動くため、夏空も幾度となく嫌なことをされた。
(今までされたことのほんの一部をやり返せば、静かに学校で生活できる。)
川に落とされたこと
トイレのモップで制服を汚されたこと
上履きを男子トイレに投げられたこと
教科書に落書きをされたこと
思い出したくもない記憶が蘇る。
夢希は自分のリュックを前に、夏空のリュックを後ろに背負って俯いている。
ほんの少し、何かが違えば
夢希が私だったのかもしれない。
ほんの少し、何かが違えば
石田さんが私だったのかもしれない。
ほんの少し、何かが違えば
私は二人のようになっていたのだろうか。
(わからない。わからないけど。今は違う。)
今、同じことをすれば
恥ずかしくて合わせる顔がない
私の目標は冬花さんだ。
彼女のように強く、堂々と、かっこよく生きたい。
夏空は夢希に近づく。
夢希はグッと力を入れて目を瞑る。
ポンッ
夢希の肩を優しくたたいて、首を振る。
「リュック返して。私は何もやらないから。」
身動きが取れない夢希はその場に立ち尽くす。
夏空は自分のリュックを取り返して背負う。
「私はそんなことやらない。」
愛姫と充紅を見る。
「本当にお願いだから、もうやめて。」
バンッ
ヘアカラーの箱を顔に投げつけられる。
「ほんとにだるい。マジでだるすぎ。」
愛姫の怒りは頂点に達していた。
「寒さで頭おかしくなったんじゃね?もっと冷やせば
どうなるか楽しみだわ。」
愛姫が夏空に近づいて思いっきり肩を押す。夏空はよろけるが川には落ちなかった。
バシャンッ
夢希が川に落とされた。
「ちょっと、何「もう我慢ならん!」
コンクリートの柱の影から厚着をした冬花が飛び出してきた。
その場は時が止まったように静まりかえった。
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