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日曜日の午前
夏空は冬花行きつけの美容院に来ていた。
「え!?冬花さん子どもいたの!?」
「まあ、そんなところ!またいつか話すよ笑」
店長と冬花が気さくにやりとりしてる。
「予約の通り、夏空にカットとブローと、あとヘアエステも!可愛く仕上げてね!」
「承知しました!じゃあ夏空ちゃん、こっちでシャンプーからしよっか!」
冬花は店を出て近くの本屋で時間を潰すことにした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
冬花が美容室に戻ると、夏空が椅子に座って待っていた。
「あ、ごめん?遅かった?」
「ううん。今ちょうど終わったところ。」
夏空の伸び切った髪はサラサラのミディアムヘアに変わっていた。短くなった前髪からは整えてある眉毛が見えた。
「めっっちゃ可愛い!!」
冬花は夏空の髪の毛をスルスルとなでる。
「でしょー!夏空ちゃんって元がいいのよ。目も綺麗な二重に色白の肌。そして真っ黒の綺麗な髪。」
何故か店長が自慢げにいう。
二人にベタ褒めされた夏空は恥ずかしかったが、それ以上に嬉しかった。
(髪の毛切って綺麗にするだけで、こんなに変わるんだ。)
サラサラの髪を何度も手櫛してしまう。
夏空も冬花大満足で美容室を後にした。
「さて、じゃあ今日からデモンストレーションを行います!」
お昼を食べ終わった後、冬花は姿勢を正して大きな声で夏空にいう。
「勉強は平日やれば大丈夫。夏空頭いいし。今日からは、空いている時間に少しずつ練習していこう!」
夏空は全く乗り気にならない。
「じゃあ、まずここが学校だと思って。夏空、向こうから教室入ってきて。」
夏空は言われた通りやる。
久しく行っていない教室を思い浮かべて、部屋に入る。
一気に心が重くなる。
「夏空!まず姿勢!前みて!背筋伸ばして!堂々と。もう一回入ってきて!」
冬花が熱血体育教師のごとく指導する。
夏空は、そんな冬花が少し面白かった。
今度は背筋を伸ばして前を見た。
(あぁ。私、教室で背筋伸ばしたことなかったんだ。)
背筋を伸ばすだけで、気持ちが変わる。怖いけど、少し勇気が湧いてくる。
「そう!それでいい!夏空すごい!さすが!」
それだけのことなのに冬花がベタ褒めする。
「おいー。すてこー。ひさしぶりじゃなーい。何してたんだよー。」
冬花が高くて変な声で近づいてきた。
(すてこって呼ばれてるのよく覚えてたな。)
夏空は少し笑った。
「いい、夏空。一番大事なのは、やめてって言うことなの。嫌なことされたら、ちゃんとやめてって言いな!」
「そんなんでやめてくれないと思うけど。」
「いやいや、それが大事なの。言わないと、遊んでただけーとか、嫌がってるの分からなかったーとか言い出すから。」
夏空はあまり納得はしていないがとりあえず頷く。
「冬花さん。愛姫たちはもっと低い声で本当に怖いの。」
「わかった。じゃあ本番ね。」
冬花の雰囲気が変わる。
「おい!すてこ!お前どこ行ってたんだよ。不登校とかふざけんなよ。」
肩を押されながら言われる。
夏空は反射的に下を向く。
冬花はすぐに抱きしめる。
「大丈夫大丈夫。ごめんね。でも、ここでやめてって言えるように頑張ろ。」
「・・・。」
「声ってさ、一回出さないとずっと出なくなるよね。わかる。私もそういう時あったから。」
「冬花さんもそんなことあるの?」
いつも堂々としている冬花に、そんな経験があるとは思えなかった。
「そりゃあ、夏空の3倍生きてますからね。いろいろあるよ。辛いときもあった。」
冬花は夏空の背中をトントンする。
「でもね、大丈夫。たった一人味方がいるだけで世界は変わるのよ。」
夏空はトントンされる背中が心地よかった。
(私も冬花さんと出会って世界がかわった。)
心地よい温もりの中で、夏空は愛姫達に言い返し学校に行くことを決意した。
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