↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/33

第7話 冒険者ユリア

俺とエリーゼはグランに紹介してもらった不動産屋でいくつか家を見せてもらった。結果から言うと、今回家を買うのは見送ることにした。


「どの家も小さくていまいちでしたわね。私はカインと一緒ならどこでも良いのですけど」


「手持ちの金貨200枚じゃ平民の家しか買えないからな、貴族の家を望むなら金が全然足りない」


俺は小さな家でも構わないのだが、エリーゼが王女として暮らしてきたことを考えると、貴族が住むような大きな家を買ってあげたかった。


「焦って小さい家を買って金を無駄にしたくない。俺たちは討伐クエストで稼げばいいんだから、もっと金を溜めてからにしようか」


不動産屋が言うには、貴族が住むような豪邸は最低でも金貨1000枚は必要らしい。毎日討伐クエストで金貨10枚を稼ぐペースだと2年以上もかかってしまう。


「私は宿暮らしでも構いませんわ。カインについていくだけですわ」


「それじゃあ今日も討伐クエストをやるか。冒険者ギルドに行こう」


俺たちは冒険者ギルドの中に入った。カウンターではグランが兵士と話中のようだ。


「おーい、カイン。こっちに来てくれ」


俺の姿を見つけたグランは俺を呼ぶ。話していた兵士は入れ違いに去っていった。


「なんですか、グランさん」


「家は買ったのか?」


「いいえ、今回は止めておきました。もっと金を溜めて大きい屋敷を買いたいなと」


「おお、それがいい。おっと話が逸れちまった。帝国からあんたご指名のクエストを引き受けたところだ」


「帝国が俺を?」


「正確には、帝国の皇女ユリア様からのご指名だ。ユリア様を護衛する仕事らしい」


「護衛?それなら帝国の近衛騎士団がいるでしょう」


「俺もそう思ったんだがよ、内容や報酬などの詳しい話は帝国城内まで来てくれだとさ。引き受けるか?」


「皇女のご指名を断ったら後が怖い気がします。引き受けます」


「おお、そうかい。それじゃあ早速帝国城まで行ってくれ。もう紹介状はいらないぞ。あんたは顔パスだそうだ」


「エリーゼ、そういうわけだから今日の討伐は無しだ。帝国城に行くぞ」


「この前行ったばかりなのにまたですの?仕方ありませんわね」


俺たちは昨日までいた帝国城にとんぼ返りした。帝国城門前にいた兵士は俺の顔を見ると、すぐにミゲル近衛騎士団長に連絡を取ってくれた。顔パスは本当らしい。そして客間で一息ついていたところ、ミゲルが迎えに来てくれた。


「カインさん、昨日の今日でご足労いただき申し訳ありません」


「いえ、構いませんよ。ところで今回はユリア様のご指名だとか」


「はい、そうです。詳しい話はユリア様ご本人からお聞きください。ユリア様、どうぞ中にお入りください」


ミゲルが扉の向こうに声をかけると、ユリアが中に入ってきた。水色の長髪、均等のとれたスタイルで綺麗なドレスが良く似合っていた。


「カイン様、急な呼び出しをしてしまい申し訳ありませんでした」


「とんでもない。ユリア様直々に指名をいただき光栄です。お体のお加減はいかがですか」


「もうすっかり良くなりました。カイン様のおかげです。この前はろくにお礼も言えませんでした。改めてお礼を申し上げます」


「それは良かったです。ところで今回のクエストはユリア様の護衛だとか。具体的に何をするんでしょうか?」


「はい、率直に申し上げますと、私は冒険者になろうと思います」


「「えっ」」


俺とエリーゼは同時に驚きに声を上げた。


「あの、そちらのお方は初対面ですよね」


ユリアがエリーゼの方を見る。


「エリーゼですわ」


エリーゼが軽く挨拶をする。


「エリーゼさんですか。私はユリア=ヘルマン=トライアです。以後お見知りおきを」


一方ユリアは丁寧に挨拶をした。


「先ほども言いましたが、私は冒険者になろうと思います。そのため、護衛としてカイン様を雇いたいのです」


「ユリア様が冒険者ですか、突然のことで驚きました。どうして皇女であるあなたが冒険者になろうとしているのですか?」


「我がトライア帝国は強者を幅広く募集していることはご存知でしょうか。帝国は皇女にも強さを求めています。私は城を出て冒険者として自らを鍛えたいのです」


「陛下はこのことをご存じなのでしょうか?」


「お父様は昨日1日かけて説得いたしました。最終的には折れてくれました。ただし強い護衛を付けることを条件としてですが」


「そこで俺ですか」


「はい、聞いたところによると、カイン様は魔法だけでなく剣も達者でいらっしゃるとか。護衛としてはうってつけだと思いました」


「帝国には近衛騎士団がいるでしょう。とくにミゲルさんもいらっしゃることですし、俺でなくても良いのでは?」


「いいえ!カイン様がいいんです!」


突然大きな声を上げるユリア。有無を言わさない雰囲気だ。


「わ、わかりました。俺で良ければ引き受けましょう」


「そう言ってくれると信じてました。ミゲル、報酬について説明を」


「はっ、ユリア様。カインさん、報酬は1日につき金貨10枚をお支払いします。ユリア様が達成したクエストの報酬は全てカインさんのものとなります。日をまたぐクエストは禁止です。寝泊りは帝国城内でお願いいたします。説明は以上です」


「随分破格な待遇ですね。そんなにもらってもいいんでしょうか」


「それだけカイン様を信頼しているということです。よろしくお願いします」


「わかりました。それでは冒険者ギルドに行きましょう。その前に防具をそろえたいですね。ドレスのままじゃ戦えないでしょう」


「ご心配には及びません。今から着替えてきますのでしばらくお待ちください」


そう言うと、ユリアはミゲルを連れて客間を出て行った。部屋には俺とエリーゼだけとなる。


「なんだか大変なことになっちゃったな、エリーゼ」


「ライバルの登場ですわ!」


「えっ?」


「皇女のカインを見る目がいやらしいですわ!カインを取られてしまうピンチですわ!」


「取られるって…、何言ってるんだよ。相手は皇女様だぞ。身分が違い過ぎる」


「きっとあの手この手を使ってカインをものにするつもりですわ!負けていられませんわ」


何やら燃えているエリーゼ。なんだか面倒なことになりつつあるようだ。


「お待たせいたしました」


ユリアが部屋に戻ってきた。先ほどのきらびやかなドレスとは違い、少々地味なドレスを着ている。


「これは戦闘用に作ってもらったドレスです。ミスリルを使っているので、軽いわりに丈夫なんです。それでは冒険者ギルドに参りましょう」


「いってらっしゃいませ、ユリア様。ご武運をお祈りしております」


俺たち3人はミゲルに見送られながら、馬車で冒険者ギルドに向かった。馬車移動なのですぐに到着する。ギルド内に入ると周りの冒険者たちが騒ぎ始めた。そりゃそうだろう。この国の皇女様がこんなところに来るなんて思いもしないだろう。


「ギルドマスター!カインさんが来ました」


カウンターにいた係員がグランを呼びに行った。すぐにグランが顔を出した。


「カイン、戻ってくるのが早かったなって…、えっ!そちらの方はまさかユリア様?」


当然のことながらグランもかなり驚いている。


「ええ、こちらは皇女ユリア様です。冒険者になるため登録に来ました」


「ユリア様が?わ、わかりました。ではユリア様、こちらの水晶に手のひらを乗せてください」


言われた通り、ユリアは水晶に手のひらを乗せた。


【名前】ユリア=ヘルマン=トライア

【年齢】16

【クラス】火魔法C 水魔法C 土魔法C 風魔法C 回復魔法B


「さすがはユリア様!魔法に長けていらっしゃいますな!」


グランがユリアをよいしょする。


「ユリア様はギルドマスターの権限でCランクからのスタートです。頑張ってください」


これで冒険者ユリアの誕生だ。


「ありがとう、ギルドマスター。それではカイン様、早速魔物の討伐に行きましょうか」


「そうですね、ユリア様」


「ふんっ」


エリーゼの機嫌がとても悪い。この2人の仲をどうやって取り持とうか悩む俺であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。