最終話 平和な世界
邪神バズズとの出会いから10年後、俺は31歳になった。妻たちの間には多くの子宝に恵まれ、人魔王国城内はとても賑やかなことになっていた。
「カイン、余も子供が欲しいのじゃー!」
バズズはというと、すっかり大人に成長し元の力を取り戻したようだ。しかし、10年を共に過ごし懐柔し続けた結果、人間を滅亡させるとか混沌の世界を作るだとかは全く言わなくなっていた。
「バズズ、混沌の世界を作らなくて良いのか?」
「そこまで急がなくても良いのじゃ。それよりも余も子供を産みたいのじゃー!他の妻たちばかりずるいのじゃー!」
「そりゃあバズズは妻じゃないし。俺は平和な世界を維持したいから邪神のバズズを監視しないといけないし」
「余も妻にするのじゃー。人間の寿命は短い。カインはあと50年ほどしか生きられぬのであろう。その間くらいなら混沌の世界を作るのを待ってやるのじゃ」
「人間の俺が邪神を妻にするって、そんなこと良いのかなって」
「魔物のラミアとエンプーサも妻にしたくせに、余ばかり仲間外れにして寂しいのじゃ…」
バズズの言った通り、この10年で俺は魔物のラミアとエンプーサも妻にした。魔物との間に子供が作れるかという問題はあったが、2人とも無事子供を産んでくれた。
「俺には9人も妻がいるしな。子供も30人以上いるし。それに人間と邪神の間で子供が作れるのか?」
「やってみないことにはわからないのじゃ。さあ、余はいつでも準備できておるぞ。好きな時に抱くが良い!」
「ほっほっほ、バズズよ。またカインを困らせているようだな」
エキドナが大きくなったお腹をさすりながら近づいてくる。
「おお、エキドナ。お腹の子が動いたそうだな。余に聞かせてくれ」
そういうとバズズはエキドナのお腹に耳を当てた。
「おお、蹴ったぞ。これは元気な子供が生まれるはずじゃ。余も欲しいのう…」
バズズは色目を使って俺を見てくる。見た目はもう美人の大人のため、誘惑に負けそうになってしまう。
「うう、エリーゼもユリアもエキドナもリッシュもナディアもアリスもティナもラミアもエンプーサもみんな子供を産んでみんな今妊娠しとるというのに。余だけが仲間外れなのじゃー!」
邪神の威厳もなく、拗ねているバズズがかわいい。
「バズズ、何度も言うが俺は平和な世界を維持したい。俺が生きている間はもちろん、死んだ後もだ。俺が心配してるのは、バズズがいつか心変わりして人間を滅亡させるかもしれないことなんだ。俺の子供たちが殺される未来なんて耐えられない。そのことについてはバズズはどう思う?」
「余は停滞した世界を進化させるために混沌の世界を作るのじゃ。そこは譲れないのじゃ」
「じゃあ妻にするなんてとても無理だな。諦めてくれ」
「それは嫌なのじゃー!」
こうした押し問答が毎日続いている。それを妻たちは笑いながら見ているのであった。
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「カイン!お腹の子が動いたぞ!こっちに来るのじゃ!」
あれから1年後、結局は俺はバズズの願いを叶えるために妻とした。俺の死後最低でも100年は平和を維持するとの交換条件で。
「人間の俺が邪神と子供を作るとはなー。今まで色々あったけど、これが一番の驚きだよ」
俺はバズズの大きくなったお腹に耳を当てる。
「カインは男の子と女の子のどちらが欲しいのじゃ?」
「元気に生まれてくれればどちらでも良いよ」
「そうじゃな。どちらが産まれたとしてもまた作って産めばいいのじゃ!」
バズズは笑っている。
「邪神だろうが魔物だろうが、正妻はこの私ですわ!」
エリーゼはことあるたびに正妻アピールを欠かさない。
「また賑やかになりますね。誰の子供でもかわいいですから」
ユリアは微笑んでいる。
「魔王だった妾が人間の妻にだなんて、と思ってた時が懐かしいのう」
エキドナが思い出し笑いをしている。
「あたしもまた産みたくなっちゃった。早く順番の日が来ないかなー」
リッシュは俺に色目を使ってくる。
「あたいはおまけで妻にしてもらったようなもんだからね。何も文句は言わないよ」
ナディアは苦笑している。
「カイン王、私もまた産みたいです!私の子供だけで近衛騎士団を作れるくらい!」
アリスまで俺に色目を使ってくる。
「父さんったら次の子供はまだかってしつこくって。私も忘れないでね」
ティナが遠慮がちに話しかけてくる。
「私が人間の妻になって子供まで産むなんてね。ノイッシュとの縁のおかげね」
ラミアは笑顔で答える。
「私まで妻にして子供まで産ませるなんてカインは節操ないね。まあ嬉しかったけど…」
エンプーサはそっぽを向いている。
「わかったわかった、みんな順番だからな」
俺は10人の妻たちに囲まれ苦笑した。この平和な世界がいつまでも続いてくれるようにと願いながら。
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カインの死後から100年、バズズは人知れず人魔王国から離れ、魔王城へと移動していた。
「懐かしいのう、ここから始まったんじゃな」
バズズは玉座に座った。
「初めてカインに出会った時のことを思い出すのう。無理矢理人魔王国に連れられたときは驚いたぞ」
バズズは目を閉じ、カインのことを思い出していた。
「ああ、カイン。カインが死んだ時、余は一生分の涙を流した。あの時のことは一生忘れぬであろう。そして平和な世界を維持してくれと頼まれて…。この邪神である余に」
「やはりここにいたかバズズよ」
何者かが転移の魔法でバズズの目の前に現れる。
「エキドナか」
「やはり混沌の世界を作るのか?」
「余はどうすればいいんじゃろうな。カインに言われたことを思い出すよ。邪神なんかやめてしまえってな」
バズズは思い出し笑いをしている。
「妾の父上も魔王なんかやめてしまえと言われて実際にやめてしまったからな。良いのではないか?」
「世界を混沌にする義務がある魔王や邪神が、平和な世界を維持するかどうか悩んでるなんておかしい話じゃな」
「まったくだ」
バズズとエキドナは視線を合わせると同時に笑った。
「バズズよ、もう答えは出ているのであろう?」
「ああ、そうじゃ。もう余は決めたぞ。余は邪神である前にカインの妻じゃ。カインを支えたい。それだけのためにカインと共に過ごしてきた」
「ならもう妾から言うことはないの。人魔王国に帰るとしよう」
エキドナは転移の魔法を使って人魔王国へと転移した。
「カイン。今までありがとう。これからは余たちがカインの望む世界を作っていくからな。余はこの選択を後悔しないぞ」
→ 平和な世界を維持する(ハッピーエンド)
混沌の世界を作る(バッドエンド)




