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第27話 未開の土地

大陸は西がマルディール王国、東がトライア帝国、北が魔物の住む森と魔王城がある。人魔王国は、マルディール王国とトライア帝国の中間地点に建国された。では南には何があるかというと、何もない未開の土地があるだけである。マルディール王国とトライア帝国は、領地拡大をするべく南の開発を進めようとしたが失敗した。原因は未開の土地に大昔から住み着いている蛮族のせいである。王国や帝国が軍を送り制圧しようとしたものの、全て返り討ちにあったという。何度軍を送っても返り討ちにあうため、王国も帝国も開発を諦めたという経緯がある。


カインはひとり、人魔王国から南へ歩いていた。転移魔法が使えるといっても、行ったことのない場所へは転移できないため、こうして徒歩で向かっているのであった。1日目は何者とも接触が無く、夜になって転移の魔法で人魔王国に戻り、翌朝に転移の魔法で昨日の続きから歩き始めるという方法を取った。そうして3日目のことであった。


「あれは魔物か?」


猪を二回り大きくしたような魔物が俺に向かって突進してきた。剣を掲げて待ち構える俺。すると突然魔物は悲鳴を上げて倒れた。近づいてみると、尻に数本の矢が刺さっている。


「そこのおまえ!そいつに手を出すな!私が見つけた獲物だぞ!」


少女の大声で動きを止める俺。魔物の後方から少女が突進し、槍で魔物にとどめを刺す。なかなか腕が立つようだ。


「おまえ、何しに来た?王国兵か?帝国兵か?」


赤毛をセミロングにした褐色の美しい少女は俺を質問攻めにする。


「俺はカイン。人魔王国の王だ」


「人魔王国?聞いたことないな」


「マルディール王国とトライア帝国の中間地点に建国したんだ。ここから北に歩いて3日ほどのところにある」


「それで、その人魔王国の王とやらがここへ何しに来た?侵略に来たのなら返り討ちにする。私たちは皆戦士だ。最後のひとりになっても戦い続ける」


少女は俺に槍を向ける。


「待ってくれ。敵対するつもりは無い。南の未開の土地がどうなっているのかこの目で見たかっただけなんだ」


「信用できないな。敵は殺す」


少女が素早い動きで突進してくる。俺はその槍をサイドステップでかわす。ここで剣を出したら完全に敵と思われると思い、丸腰で相手にすることにした。


「このっ!」


少女は槍の連撃をお見舞いしてくる。早すぎてかわしきることができず、土魔法の壁でその攻撃を防いだ。


「魔法が使えるのか、どうして攻撃してこない?」


「だから誤解だ!俺は君と敵対するつもりは無い。武器をしまってくれ」


「弱い者の言うことなど聞かない。おまえも本気で戦え!私に勝てたら信じてやる」


少女は戦いをやめる気は無いようだ。俺は仕方なく剣を抜いた。


「はあっ!」


少女は俺との間隔を一気に詰め、俺に槍を突き付けてくる。俺は瞬間移動の魔法で少女の背後に回り、首筋に剣を当てた。


「俺の勝ちだな。言うことを聞いてくれる気にはなったかい?」


「今のは魔法か?全然見えなかった。私の負けだ。殺せ」


「いやいや、勝ったら言うことを聞いてくれるって言うから本気を出したんだ。殺すつもりは無いよ」


俺は剣をしまい、少女をなだめようとしたその時。


「ティナ、大丈夫か!」


後方から中年の男が槍を持ってこちらに向かってくる。


「父さん!」


「ティナから離れろ!」


中年の男は俺に向かって突進する。このままかわすと少女に当たるかもしれない。俺は土魔法の壁で攻撃を跳ね返した。


「うわっ!」


中年の男は壁にもろにぶつかってしまい、その場に倒れてしまった。


「父さん、しっかりして!」


「ううっ」


中年の男がよろよろと起き上がる。そして近づいた俺に向かって槍の一撃をはなつ。俺はその攻撃を見切り、槍を左手で掴んだ。


「くっ、相当腕が立つようだな。儂とリサでは勝てぬようだ。いったい何の目的でここに来た?」


「父さん、私はこいつに戦いを挑んで負けた。殺せといっても殺さなかった。話くらい聞いてやってもいいかもしれない」


「ティナ…、わかった。ついて来い」


少女と中年の男は倒した魔物を引きずって歩き出した。俺はその後について行く。歩きながらお互いに自己紹介をした。少女はティナといい、彼はその父親であるガイルという。しばらく歩くと、粗末な集落に到着した。ガイルはこの村の村長だという。


「話は分かった。人魔王国は我らと共存したいと」


「はいそうです。人魔王国はあなたたちを侵略などしません」


「昔、マルディール王国とトライア帝国が侵略しに来たことがあった。何度来ても儂らは返り討ちにしてきた。もう来ないだろうと思ったらカイン、おまえさんが来たというわけだ。侵略者と思い無礼を働いてしまった、許して欲しい」


ガイルは俺に頭を下げた。


「頭を上げてください。こちらこそいきなり来て驚かせてしまいました。申し訳ありませんでした」


「ねえ、父さん。カインがこれほど強いなら頼んでも良いんじゃないかな」


「しかしティナ…」


「私たちじゃ到底勝ち目はないんだから、カインに頼もうよ!」


「いったい何の話なんです?」


「この地にはある魔物が住み着いているのだ。その魔物は非常に強く恐ろしく、儂らでは太刀打ちできん。儂らの同胞が何人も食われてしまった。今は獲物を捧げることで人間に危害を加えていないのだが、またいつか危害を加えるのではないかと怯えているのだ」


「カイン、手を貸して!奴を倒したら何でも言うことを聞くから…」


ティナが真剣な眼差しで顔を近づけてくる。俺はその美しさに思わず息をのんだ。


「わかったよ。俺で力になれるなら」


「ありがとう、カイン!」


ティナが俺の手を握って喜んでいる。期待を裏切るわけにはいかないな。


「今日はもう遅い、休んでいくか?」


ガイルが提案する。


「いいえ、妻が心配するので一旦国に帰ります。俺は転移の魔法が使えるので一瞬で飛んでいけます。また明日の朝来ますから、今日はこれで失礼させてもらいます」


「え、カイン奥さんがいるんだ…」


「妻も子供もいるぞ」


「そ、そう…」


ティナは浮かない顔をしている。


「そうか、カインは剣も魔法も腕が立つのだな、わかった。明日またここで会おう」


俺は転移の魔法で人魔王国へ戻った。


「おかえり、カイン。今日は遅かったの」


「実は…」


俺はエキドナたちに南の未開の土地で人に出会ったことを報告した。そして魔物を倒すよう依頼されたことも。


「ほう、蛮族と言われているが聞くところによると他の人間と大して変わらぬようだの」


エキドナが驚きながら答える。


「妾も同行してよいかの。その魔物とやらを倒すのに協力しよう。カイン一人いればいいと思うが一応な」


「エリーゼとユリアにも声をかけようと思う。リッシュとナディアとアリスは妊娠中だから連れていけないからな」


「そうだの。数は多い方がいいだろう」


俺は転移の魔法でエリーゼとユリアのもとに飛び、翌朝一緒に魔物退治に同行してもらえるよう許可を取った。俺たち4人がかりならどんな魔物が相手でも大丈夫だろう。


「カイン、準備はできてましてよ!」


「私もいつでも大丈夫です」


「妾もいつでもいいぞ」


「よし、それじゃあ行くぞ!」


俺たち4人は南の集落へ飛んだ。どんな強敵でも倒せると信じて。

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