第23話 アスモデウスの狙い
俺は人魔王国の城の玉座の間で正座させられていた。俺の周りをエリーゼ、ユリア、エキドナ、リッシュ、ナディアが囲んでいる。
「カインよ、アリスから聞いたがアリスが近衛騎士団長になったら気持ちに答えてやるそうだな」
エキドナが俺を問いただす。
「確かにアリスにはそう言ったな。頑張って強くなってもらいたくて」
「4番目の妻はあたしがなるはずだったのにー」
リッシュが抗議の声を上げる。
「気持ちには答えてやりたいが、妻にするとは言っていない」
「それはひどいんじゃありませんの?」
エリーゼからダメ出しをくらう。
「カイン様、これ以上妻を増やすなとは言いません。しかし女の子の気持ちをもてあそぶような真似をして欲しくはありません」
ユリアからも叱られてしまった。
「ほら、ナディア。あなたも文句言ってやりなさいよ」
リッシュから促されるナディア。
「え、あたいは別に何も…」
「ナディアもカインを好きなことはバレバレだよ。遠くからじっと見つめて顔を赤くしてる姿といったら」
「うっ、それは…」
ナディアは顔を赤くしてうつむいてしまった。
「カインのような強くて良い男には女が集まるのは自然なことだ。だが来るもの全て拒まないというのもどうかと思うがの」
エキドナからの注意に俺はただ黙っているしかなかった。
「期待させておいて断るなんてことは同じ女として許せませんわ。責任は取るべきだと思いますわ」
「そうですね、あなたは国王なんですから妻がたくさんいても問題ないと思います。ただ、私たちひとりひとりを蔑ろにしないでくださいね」
エリーゼとユリアに諭される俺。国王としての威厳は全くない。
「わかった、リッシュとナディアとアリスは将来妻として迎える。今すぐは無理だが約束はする」
「やったー!カイン王ありがとうございます!」
俺たちを遠巻きに見ていたアリスが喜びの声を上げる。
「あたしはいつでもいいよ。ね、ナディア」
「あたいもか…、嬉しいな」
「とにかく今は生徒たちを無事卒業させて国の防御を固めるんだ。妻とかそういうのはその後で…」
俺はその場をなんとかしのぎきったのであった。
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学校を始めてから2年。卒業生を送り出すことができた。飛び級で卒業したランスとアリス以外の近衛騎士が8人、宮廷魔術師が2人、そして200人弱の城下町警備兵を得ることができた。今後は入校生徒の数を絞って質を高めていきたい。
「アリス、おまえを近衛騎士団長に任命する」
「はっ!」
ランスとアリスのどちらを近衛騎士団長にするか悩んだが、訓練での純粋な戦闘力ではアリスの方が勝っていたことを重視して決めた。ランスもこれに腐らず自己鍛錬に励んでほしい。
「カイン王、近衛騎士団長になれたらあの約束守っていただけるんですよね?」
「ああ、わかってるよ。仕事はしっかりやってくれよ」
「はっ!」
俺はアリスを近衛騎士団長に任命したのと同時に妻に迎えた。リッシュとナディアも同時にだ。
「これで妻が6人か。大所帯になったの。妾のことを忘れんでくれよ」
エキドナは大きくなったお腹を撫でながらいう。同じくエリーゼとユリアも2人目を妊娠中だ。
「わかってるよ、エキドナ。これでアスモデウス様が何か仕掛けてきても、一方的にやられることはないはずだ。それでも注意は必要だがな」
「妾は妊娠中ゆえ転移の魔法で父上のもとには行けん。カイン一人でアモスの顔を見せに行ってくれぬか」
「わかったよ、行ってくる」
俺は大きくなったアモスを連れてアスモデウスのもとへ転移の魔法で飛んだ。
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「カインか。エキドナはどうした?」
アスモデウスはアモスをあやしながら俺に問いかける。
「エキドナは2人目を妊娠したので連れてきていません。転移の魔法で母体に悪影響を及ぼすといけないので」
「そうか2人目か。孫が増えるのは良いことだ」
「アスモデウス様、あれから2年が過ぎました。そろそろ何かしてくるおつもりですか?」
「混沌の世界を作る準備は進んでおる。2人目を出産するまでは待ってやろう。それまでは短い平和を楽しむが良かろう」
「アスモデウス様はエキドナやアモスに害をなしますか?場合によってはあなたの命をもらうことになるかもしれません」
「はっはっは、大きい口を叩くではないか。父や祖父としての立場なら、エキドナやアモスに手を出すつもりは無い。だが魔王としての我は、混沌の世界を作るためなら血の繋がった家族を殺めることもやむなしと思っておる」
「具体的に何をしてくるつもりですか?」
「種明かしをするつもりはない。その時になったらわかるであろう」
やはり何をしてくるかは教えてくれないようだ。
「アスモデウス様、混沌の世界とは人間を大量に殺さないといけないのでしょうか」
「方法の一つではあるな。人間同士の戦争でも、人間と魔物の戦いでもどちらでも構わん。多くの生き物が死ぬことが混沌に繋がるのだ。人間同士の戦争はカインが止めてしまったから、おのずと方法は絞られるだろう」
「わかりました。今日はこれで失礼します」
「ああ、また来るが良い」
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「おかえり、カイン。父上の様子はどうだった?」
「おそらく大量の魔物を召喚しているんだと思う。とりあえず2人目が産まれるまでは待ってくれるそうだ」
「そうかえ。父上はやはり搦め手ではなく正面から来るつもりかのう」
「いずれにしてもこちらの準備も万端だ。いつ襲来されても大丈夫なくらい兵をそろえることができている」
「カインはやはり人魔王国が狙われると思っているのじゃな」
「その可能性が一番高いと思っている。だが2年以上も準備をされているんだ、こちらの裏をかいてくるかもしれんな」
「裏をかくとは?」
「人魔王国ではなく、マルディール王国かトライア帝国を狙い撃ちしてくるかもしれん」
「せっかく学校まで作って準備したのに、ここを攻めてこないんじゃ拍子抜けよの」
アスモデウスの狙いは何なのか。話は一向にまとまらないままであった。
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「あたしも早く子供が欲しい!」
ベッドの隣で寝ているリッシュが突然言い出した。
「亜人と人間の間では子供ができにくいらしいな。まあ焦らず気長にいこう」
「それならナディアとの子供もできにくいってことになるよね。アリスとはどうするの?」
「アリスとは本人の希望で避妊している。近衛騎士団長として、俺の傍でいつでも戦えるようにしたいそうだ」
「あの子カインに積極的だったのに、そういう真面目なところあるよね。だからアリスのこと嫌いじゃないわ」
「6人も妻がいると女同士で仲良くやってくれるかが心配で仕方ないよ。リッシュは明るくて良い子だから心配してないけど」
「それって褒めてくれてるの?なんでも1番になりたがるエリーゼに気を使ってさえいれば、上手くやれてると思うよ」
「ともかくそろそろアスモデウス様が動き出す頃だと思う。頼りにしてるよ、リッシュ」
「任せて!大好きよカイン」
妻が6人に増えてしまい、ひとりひとりには6日に1度しか相手をしてあげられない。誰かを贔屓すれば他の誰かが反発する。上手くやらねばと日々注意している俺であった。




