第20話 ドワーフの女戦士
「Aランク冒険者を紹介してくれってか。腕が立つだけでなく学校の先生もできるほどとなると…」
俺とリッシュは帝国の冒険者ギルドマスターであるグランと掛け合っていた。
「Aランク冒険者と連絡を取ることはできるが、カインの要望を引き受けてくれるかはわからんぞ。Aランクの討伐クエストをこなしてる方が性に合ってる奴が多いしな」
「ねえ、カイン。ランクが上の方が強いんだよね。ランクってどうやって決めてるの?」
「俺もここで冒険者デビューしたが、まずはそこの水晶の上に手のひらを置いて自分のステータスを確認するんだ」
「ステータス?私もやってみていい?」
「いいぜ、エルフの嬢ちゃん」
リッシュは水晶の上に手のひらを置いた。
【名前】リッシュ
【年齢】150
【クラス】剣C 弓A
「ほう、弓がAとはすげえな。冒険者デビューするならギルドマスターの権限でCランクからのスタートとなるがどうする?」
「あたしはいいや。人魔帝国の護衛と先生役があるし、冒険者やってる時間無さそうだし」
「そうかい、残念だな。冒険者になりゃあAクラスになれただろうによ」
「ところでそのAランク冒険者のことですが、紹介してもらえそうな人物の目星はついているんですか?」
「いいや、連絡先を書いたメモを渡すから、直接交渉してみてくれや」
俺とリッシュはグランに教えてもらった場所に赴き、Aランク冒険者の何人かと交渉した。しかし、護衛や先生という役に難色を示す者が多く、交渉成立はならなかった。
「これで全滅だね。カイン、矢を補充したいから武器屋に寄りたいんだけどいいかな?」
「ああ、構わんぞ」
俺とリッシュは武器屋の前に到着した。
「ここに来るのは久しぶりだな。俺のミスリルの剣はここで買ったんだ」
「そうなんだ、じゃあ入ろうよ」
俺とリッシュは武器屋の中に入った。
「いらっしゃい。おお、おまえさんか、久しぶりだな。ミスリルの剣は役に立ってるかな」
ドワーフの店主が俺に話しかけてきた。
「ああ、切れ味抜群で文句の付けようがないよ。今日は彼女の用事で来たんだ」
「矢を補充したいんだけど、一番いいやつを見せてくれない?」
「おお、それならミスリルの矢があるぞ。値段は高いが威力は保障する」
「じゃあ、あるだけ頂戴。カイン、支払いはお願いね。私にも給料はでるんでしょ?」
「ああ、もちろんだ」
支払いを済ませて帰ろうとした時に、店内に誰かが入ってきた。
「ただいま、親父。Aランク昇級試験に合格してきたぜ」
「おかえりナディア。ついにやったか、おめでとう」
店内に入ってきたのはドワーフの女性だった。赤いショートカットの髪に日焼けした肌、ドワーフなので身長だけ見ると人間の子供のようだが、その鍛えられた肉体は一目見ただけで猛者であることを示していた。それに背負っている斧が身長の倍近く長く、とても目立っていた。
「ん、あんたは人魔王国のカイン王じゃないのか?こんなところで会えるなんて嬉しいなあ。あたいはナディア。さっきAランク冒険者になったばかりさ」
「俺のことを知ってるのか?」
「もちろんさ、あんたはあたいの憧れだよ。Aランク冒険者の中でもトップクラスの強さで、建国までして王になっちまうんだもんな。知らない奴なんていないって」
「丁度いい、俺は人魔王国で妻と子の護衛と士官学校の先生を兼任してくれるAランク冒険者を探してたんだ。ナディアさん、良かったら引き受けてくれないか。給料は相場よりも高く支払う」
「ナディアでいいよ、カイン王。憧れのあんたの近くで働けるなんて夢のようだよ。是非あたいを雇ってほしい」
「やったじゃない、カイン。武器屋に寄って良かったね」
リッシュが嬉しそうに俺の腕を引っ張る。こうして俺はドワーフの女戦士ナディアを仲間に加えることができたのだった。
「そういうわけだから親父、あたいはカイン王のもとで働くから」
「おお、好きにすると良い。カイン殿、娘をよろしくお願いします」
「グランさんに報告に行かないとな。ナディア、冒険者ギルドまでついてきてくれないか」
「ああ、わかったよ」
俺たちは冒険者ギルドに戻った。
「カインにナディアじゃねえか。もしかしてナディアを雇うことにしたのか?」
「ええ、ナディアの実家の武器屋で偶然出会いまして。快く引き受けてもらいましたよ」
「ナディアはさっきAランク昇級試験に合格したばかりだ。強さは保障するぜ。先生役ができるとは思わなかったが…」
「ギルドマスター!余計なことは言わないでくれ。あたいはこれでも面倒見は良い方なんだ。先生役だって立派にこなしてみせるぜ。カイン王、あたいのステータスを見てくれ」
ナディアは水晶の上に手のひらを置いた。
【名前】ナディア
【年齢】60
【クラス】剣C 槍B 斧A 弓C
「どうだい、武器屋の娘だから武器は一通り使えるんだ。先生役としてぴったりだろう?」
「そうだな、頼もしいよ。よろしく頼む」
「良かったじゃねえか、カイン。Aランク冒険者のほとんどはAランク討伐クエストばかりやってる戦闘狂だらけだから、ナディアを仲間にできたのは運が良かったと思うぞ」
「そうですね、それじゃあナディア、リッシュ、人魔王国に戻ろう」
俺たちは転移の魔法で人魔王国に戻った。
「おかえり、カイン。彼女が新たな仲間かの?」
エキドナがアモスを抱きながら出迎えてくれた。
「あたいはナディア。あんたがカインの奥さんと子供か。えらいべっぴんさんが奥さんなんだな。」
「妾はエキドナ、この子はカインとの子であるアモスだ。そなたもなかなか可愛らしいと思うぞ、なあカイン」
「え、ああ。ナディアは可愛らしいと思うぞ」
「あたいが可愛らしい?そんなこと言われたの初めてだよ。この筋肉女に嫁の貰い手なんていないと思ってたから…」
ナディアは顔を赤く染めて恥ずかしがっている。
「あー!カインったら嫁にするならあたしの方が先だからね!ナディアもわかった?」
「いやリッシュ、あたいは嫁だなんてそんな…。憧れのカイン王の近くで働けるだけで十分さ」
「ほっほっほ、カインはもてもてだの。妾のことを忘れんでくれよ」
「それじゃあ、ナディアをエリーゼとユリアに紹介してくる。リッシュ、エキドナの護衛を頼む」
「わかったわ、行ってらっしゃいカイン」
「カイン、気を付けてな」
俺はマルディール王国とトライア王国に転移の魔法で飛んだ。エリーゼからは正妻は自分だと強い主張があり、ユリアからはエルフの次はドワーフですか、女なら誰でもいいんですかと釘を刺されてしまった。
「カイン王の奥さんたち、癖の強いひとばかりだなあ。上手くやっていけるか心配だよ」
「ナディアは普段は人魔王国で護衛と先生をしてもらうから、エリーゼとユリアと顔を合わせることは少ないと思う。エキドナとリッシュと長く顔を合わせることになるから、上手くやってくれよな」
「ああ、任せておくれよ。護衛も先生も上手くやってみせるから」
「学校の建設は丁度終わったところだ。早速生徒を受け入れるから、頑張って良い兵士を育てよう」
こうして俺はリッシュに続いてナディアという心強い仲間を手に入れた。いよいよ士官学校の先生としてデビューすることになる。




