第19話 奴隷を買おう
「奴隷を買おうと思う」
俺はエキドナとリッシュの前でそう発言をした。
「奴隷と言っても家事をする者から戦闘をする者まで多岐にわたるが、カインはどんなのを買うつもりだ?」
エキドナがアモスにおっぱいをあげながら俺に問う。
「両方だ。城には家事をするための最低限の魔物兵しか残してないが、彼らも城下町の警備にあてたい。それにエキドナの護衛兼士官学校の先生役として腕の立つ者がいれば買いたい」
「城っていっても大きい屋敷並の大きさだし、家事奴隷は2人もいれば大丈夫じゃない?」
リッシュが提案する。
「そうと決まれば早速買いに行こう。マルディール王国にもトライア帝国にも奴隷商はいたはずだ。リッシュをエリーゼとユリアにも紹介しないといけないしな」
「それじゃあ、エキドナ。カインを借りるわね」
リッシュは俺に腕を絡ませてきた。そして俺たちはマルディール王国へ転移の魔法で飛んだ。
「エリーゼ紹介するよ。エルフの村から人魔王国へ協力しに来てくれたリッシュだ。弓の達人だ。仲良くしてやってくれ」
「エリーゼですわ。カインの正妻として歓迎いたしますわ」
「リッシュよ。昨日から人魔王国でエキドナの護衛兼士官学校の先生として雇われたわ。よろしくね。ところでカイン。奥さんが3人いることは聞いたけど、正妻はエリーゼなの?」
「えーと、それは…」
その辺は曖昧で通したかったが、エリーゼは何でも一番になりたがる性格だ。ここは合わせておかなければならないか。
「カインと最初に出会ったのは私ですわ。カインと最初に結ばれたのも最初に子を産んだのも私。当然私が正妻ということになりますわね」
エリーゼはきっぱりと言い切る。
「ともかくよろしく頼むよ。エリーゼ、今日は奴隷を買いに来たんだ。家事をする奴隷とエキドナの護衛兼士官学校の先生ができる腕の立つ者をな」
「人魔王国は発展途上、人手不足は仕方ありませんわね。奴隷を買うのは私も賛成ですわ」
「それじゃあ、奴隷商のところに行ってくるよ」
俺とリッシュはエリーゼに奴隷商のいる場所を教えてもらい、その店へと立ち入った。店の中は薄暗く、所狭しと多くの奴隷が並べられていた」
「お客さん、どんな奴隷を欲しいので?」
店員が俺に話しかけてくる。
「家事ができる者を2人と腕の立つ者を1人探している」
「腕の立つ者は現在いませんね。家事をできる者をお見せしましょう」
そういうと店員は店の奥まで俺たちを案内した。
「この2人はどうでしょう?夫婦ですがまだ20代で若く、家事全般できますよ。戦闘の方は無理ですが」
俺は夫婦と目が合う。すると、夫婦は視線を隣に移す。そこには幼い子供が2人いた。
「この子供たちは?」
「その夫婦の子です。お客さんが夫婦を買うとなると、この子供たちは別のお客に売ることになります」
「ねえ、カイン。その子供たちも一緒に買ってあげたらどうかしら?別れさせたら可哀想だわ」
リッシュが俺の腕をつかんで懇願する。
「そうだな、リッシュ。4人まとめて買おう。いくらになる?」
「ありがとうございます。夫婦は金貨20枚、子供2人は金貨10枚です」
俺は金貨30枚を店員にわたし、奴隷家族を手に入れた。
「ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております」
俺たちは店員に見送られながら店を出た。夫婦と子供たちは不安そうにしている。
「話は人魔王国に戻ってからにしよう。君たち、俺につかまってくれ」
俺たちは転移の魔法で人魔王国に戻った。
「おかえり、カイン。その者たちが奴隷か」
エキドナが俺たちを出迎えてくれる。その腕にはアモスを抱いている。
「わぁ、赤ちゃんだ!かわいい!」
子供たちがアモスのもとへ走る。
「こら、おまえたち!申し訳ありませんご主人様、子供たちが粗相を」
「いや、構わないよ。まずは自己紹介をしようか。俺はカイン。この人魔王国の主だ。こちらはエキドナで俺の妻だ。その子供はアモス。隣にいるエルフはリッシュだ」
「私はトーマスです」
「私は妻のマルシェです」
「ジェニーです。7歳です」
「ロンです。4歳です」
「トーマスたちはどうして奴隷に?」
「私は隊商をしておったのですが、積み荷を盗賊に襲われまして。命だけは助かったんですが借金が残ってしまいました。借金を返す当てがなく、家族全員奴隷落ちに…」
「そうか、大変だったな。これからはこの城に住んで働いてもらう。よろしく頼む」
「カイン、妾は主人と奴隷の関係がよくわからん。説明してくれぬか」
「主人は奴隷に対し衣食住の面倒をみるかわりに、奴隷に労働をさせるんだ。給料も支払わないといけない。奴隷は給料を貯めて自分を買い戻すこともできるんだ」
「なるほど。買い戻しさえできれば一生奴隷でいる必要はないわけか」
「奴隷に与える給料は一般人の給料よりも安いから、買い戻すためには相当時間がかかる。まあ、俺は一般人並の給料を与えるつもりだがな」
「ご主人様、よろしいのですか?ありがたいことですが、奴隷に対する待遇としては破格だと思いますよ」
「構わん。人手は足りないが金は十分あるからな。良い待遇を与えるから仕事をしっかりとやってもらいたい」
「ありがとうございます。ご主人様」
「アレクよ、トーマスたちに仕事の内容を教えるのは妾がやるから、ユリアのもとに行ったらどうだ」
「そうさせてもらうよ。エキドナよろしく頼む」
俺とリッシュはトライア帝国へ転移の魔法で飛んだ。
「はじめまして。ユリアです」
「リッシュよ。昨日から人魔王国でエキドナの護衛兼士官学校の先生として雇われたわ。よろしくね」
「カイン様はリッシュさんを妻として迎えるつもりですか?」
「いや、それは…」
「ユリアはあたしがカインの妻になったら嫌?」
「嫌じゃないと言ったら嘘になりますが、カイン様がお決めになることには従うつもりです」
「そっかー。あたしが4人目の妻になる可能性は十分あるわけね」
リッシュはニコニコしている。
「と、ところでユリア。今日は奴隷を買いに来たんだ。エキドナの護衛兼士官学校の先生ができる腕の立つ者をな」
「人魔王国の人手不足は深刻ですものね。私は良いと思います」
「それじゃあ、奴隷商のところに行ってくるよ」
俺とリッシュはユリアに奴隷商のいる場所を教えてもらい、その店へと立ち入った。店の中はマルディール王国と同様薄暗く、多くの奴隷が並んでいた」
「いらっしゃいませ、どのような奴隷をご所望ですか?」
「腕の立つ奴隷が欲しい。いないだろうか?」
「それなら何人かいます。ご案内しましょう」
何人か見せてもらったが、期待するほどではなかった。強さだけならまだしも素行が悪いのでは、エキドナの護衛どころか先生役なんて到底無理だろう。
「期待に応えられず申し訳ありませんでした」
俺とリッシュは店員に見送られながら店を出た。
「強くて素行が良い奴隷なんて都合が良いのはそうそういないか」
「仕方ないよカイン、こうなったら冒険者ギルドでAランク冒険者を紹介してもらったら?」
「王国でも帝国でもエリーゼとユリアに頼んで探してもらってるんだけどな、応募が無い状況だ」
「応募が無いならギルドに紹介してもらって、直接交渉してみたら?」
「そうだな、とりあえず人魔王国に戻ろうか」
俺とエリーゼは人魔王国へ転移の魔法で飛んだ。
「おかえり、カイン。収穫は無かったようだの」
「お帰りなさいませ、ご主人様」
エキドナとトーマスが出迎えてくれた。
「ああ、強くて先生役を任せられるほど素行の良い奴隷なんて都合よく見つからなかったよ」
「それは残念だったな。こちらはトーマスとマルシェの仕事ぶりを見たが、2人ともよく働いてくれてるぞ、マルシェは2児の母親だから、アモスの育児の助けが大いに役に立っておる」
エキドナは奴隷夫婦とうまくやっているようだ。
「今から帝国の冒険者ギルドへ行ってくる。ギルドマスターのグランにAランク冒険者を紹介してもらえないか交渉してくる」
「あたしも、行くわ。行ってくるねエキドナ」
「ほっほっほ、せっかちだのう。気を付けてな」
俺とリッシュは帝国の冒険者ギルドへ転移の魔法で飛んだ。グランに直接交渉するために。




