第18話 炎の鳥フェニックス
エルフの村に向かってきた魔物は、全身に火をまとった炎の鳥だった。炎の鳥は一番近くにいた俺たちに向かって口から炎を吐き出してきた。
「危ない!」
俺は水魔法で壁を作り、炎を防いだ。炎の鳥は村の上空を羽ばたきながら、こちらの様子をうかがっている。
「あれは炎の鳥フェニックスだ!奴が森の中にいたなんてそんな馬鹿な!」
この村は多くの木々に囲まれており、家屋も木造だ。炎とは相性が悪い。しかも飛んでいるため俺の剣は届かない。
「剣が届かなくとも俺には魔法がある!水と風よ!」
俺は水と風の魔法を組み合わせて水流の竜巻を作り出し、フェニックスにぶつけた。ダメージを与えたようで、フェニックスは悲鳴をあげる。
「矢を放て!」
エルフたちは一斉射撃でフェニックスに矢をあてる。大量の矢を浴びたフェニックスは墜落した。しかしその炎をまとった体のせいで、木々や家屋が燃え始めた。
「まずい!火事が広がってしまう!水の魔法を使えるものは消火に当たれ!」
フィッツが周りのエルフに指示をする。大半のエルフは攻撃を止め、消火作業に向かった。
「水よ!」
俺は水魔法の応用で村中に雨を降らせた。これで火事が広がることを防げるだろう。
「カイン、すごい!」
リッシュが感嘆の声を上げている。
「リッシュ油断するな!まだ敵は倒れていない!」
俺は遠くから水魔法を連発し、フェニックスにぶつけた。近づいたらエルフたちの矢を食らってしまうため、遠距離攻撃に徹した。しばらく攻撃を続けると、フェニックスから炎が消え、動きが止まった。
「とどめを刺すわ!」
リッシュが剣を掲げてフェニックスに近づく。すると動きを止めたはずのフェニックスが首を上げ、リッシュめがけて炎を吐き出した。
「危ない!」
俺はリッシュに飛びつき、間一髪炎をかわす。
「くらえ!」
俺の後ろにいたフィッツがフェニックスに突撃し、剣で首を斬り落とした。
「大丈夫か、リッシュ?」
俺は抱いたままのリッシュに話しかけた。リッシュはぼーっとして俺を見つめている。
「すまない、カイン。リッシュを助けてもらって」
フィッツが俺に礼を言ってくる。俺は抱いていたリッシュを地面におろした。
「おまえは油断しすぎだリッシュ!それでは立派な戦士にはなれないぞ!」
「兄さん、ごめんなさい。カイン、助けてくれてありがとう」
リッシュはフィッツと俺に頭を下げた。
「それにしてもフェニックスが現れるとは。長年村に住んでいるが森での出現情報など今まで無かったぞ」
フィッツは難しそうな顔で疑問を呈する。
「魔王アスモデウスが召喚したのかもしれませんね。今後も強力な魔物が出現するかもしれません」
「そうか、今後村の守りを固めないといけないな。それにしても村が滅茶苦茶だな…」
フィッツは溜息をもらす。それもそのはず、俺の水魔法の雨で被害を最小限に抑えたとはいえ、家屋の多くが全焼もしくは半焼している。
「家なら俺の土魔法で作ろう。木造の家よりも強固で燃えにくいぞ」
俺は開いている土地に土魔法で即席の家を多く作った。エルフたちは俺の魔法に驚いている。
「カインはなんでもできるのね」
リッシュがニコニコした顔で俺に話しかけてくる。
「まあな。すっかり夜遅くなってしまった。そろそろ帰らないと心配をかけてしまう」
「ねえカイン、あたしもついていくわ。良いでしょ、兄さん」
「リッシュ、村の外は危険だ。我々エルフのような亜人に悪意を持って近づいてくる人間もいる」
「少なくともカインは悪人じゃないわ。カインの近くにいれば色々面白い経験ができると思うの。そういうわけでカインよろしくね」
リッシュは俺にウインクをする。可愛らしい笑顔に思わずドキッとする俺。
「リッシュが人魔王国に来てくれればありがたい。でも良いんですか、フィッツさん」
「リッシュはまだまだ子供だと思っていたが、もう150歳の大人だ。自分の考えで自分の道を行くと良いだろう」
「やったあ!ありがとう兄さん」
「カイン、リッシュはこれでも村の中でも屈指の戦士だ。戦いなら役に立つと思う。よろしく頼む」
「わかりましたフィッツさん。妹さんは大事にお預かりします」
「やだ、大事にだなんて!恥ずかしい!」
リッシュは顔を赤くして俺をはたく。
「フィッツさん、村へは転移の魔法で時々訪れます。その時リッシュも連れてきますから」
「ああ、わかった。達者でな2人とも」
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「なるほど、そんなことがあったのか。はじめましてだな。妾はエキドナ、元魔王だ」
「はじめましてあたしはリッシュ。カインってこんな綺麗な奥さんがいたんだ…しかも元魔王って」
「カインは妾だけでなく他に2人妻がいるぞ。妾達にはひとりずつ子供もいる」
「ガーン!そうなの?カインって見かけによらず女好きなのね。あたしも囲われちゃうかも?」
リッシュは笑顔で自分の胸を隠す。
「いや、これ以上妻を増やそうとは思っていない。3人でも多いくらいだ」
「え、そんなあたし魅力無い?結構自信あったのに」
リッシュはしょんぼりしている。
「どうせあたしは可愛いくないですよーだ」
「何言ってんだよ。リッシュほどの美人なんてなかなかいないよ」
「本当カイン?」
「ああ、本当だ。リッシュは美人だよ」
「えへへ、嬉しい!」
リッシュは嬉しそうに俺に抱きついてきた。リッシュの胸の感触が伝わりドキッとする。
「カイン、妻の前で堂々と不倫するとは良い度胸をしておるな」
「いや、エキドナ。そんなつもりは…」
「ほっほっほ。良い男には女が集まるのは自然の摂理だ。妾はカインを独占しようなどとは思っておらんよ。ただ、妻のひとりとして大事にしてくれよ」
「わかってるよ、エキドナ」
俺はエキドナを抱きしめて頭を撫でた。
「おー熱い熱い。見せつけてくれちゃって。うらやましい…」
「リッシュ、これから君にはエキドナとアモスの護衛と、今後建設予定の士官学校の先生をお願いしたい。先生役は俺もやる。君で2人目だ」
「たしか200人の生徒の面倒を見るんだっけ。2人でも200人は面倒見切れないよ。エルフの村は復興中だし、あたし以外のエルフは来る余裕無いよ。せめてもうひとりは欲しいわね」
マルディール王国とトライア帝国でAランク冒険者の募集をしているんだがまだ応募は無い。誰か来てくれると助かるんだが。
「学校の建設までまだ時間があるんでしょ。焦らない焦らない」
「そうだなリッシュ。とにかくもう夜も遅い。部屋を与えるからついてきてくれ」
俺は城内の空いている部屋のひとつをリッシュに与えた。
「あたしの家よりも広いわね。良い部屋をありがとう」
リッシュは俺に礼を言うと担いでいた荷物を部屋の中におろす。
「この城には風呂があるからいつでも使ってくれ。それじゃあ、俺は私室に戻るから」
「わかったわ」
俺は部屋にリッシュを残し、エキドナが待つ私室に戻った。
「エキドナ、リッシュとはうまくやれそうか?」
「まあ大丈夫だろう。妾もリッシュも長寿という共通点がある。これから色々話せば仲が深まることだろう。妾はアモスと一緒に先に風呂を済ませたから、カインは今から入ってくると良い」
「ああ、わかったよ」
俺は風呂場で体を洗いながら今後のことを考えていた。あとひとりどこから強者を連れてくるかと言う問題だ。
「どうすればいいかな…」
「何が?」
俺は後ろから突然声をかけられ振り向く。そこには裸のリッシュがいた。
「おわっ、リッシュいつの間に!」
「いつでも使って良いって言ってたから、カインが入ってるのを知りつつ入っちゃいました!キャーっ裸を見られちゃった。もうお嫁に行けなーい。責任を取ってもらわなくちゃ」
台詞の最後の方が棒読みでわざとらしい。
「なんちゃって。カインになら裸くらいいつでも見せてあげてもいいよ。あたしはあなたに興味津々なの」
「俺には妻も子供もいるから…」
「エキドナが言ってたじゃない。カインを独占しないって。あたしひとりくらい増えてもいいよね。それじゃあ背中洗ってあげるね」
なんだかんだでリッシュのペースに巻き込まれていく俺。これ以上嫁が増えたら体がもたない。新たな問題を抱える俺であった。




