6日夜
――「まずは身体強化を身体に覚えさせる。魔力を意識しろ」
「うん。……っ疲れるね、これ」
「灰音の場合扱う魔力が多すぎるからな。でも人間である以上、身体が耐え得る限界量は決まっている。それを探って、魔力の感覚をつかむと同時に、そのキャパを広げていく」
「ふぅ〜……限界量が決まっているなら、あんまり多くても意味ないんじゃない?」
「まぁ正直、魔力量で真価を発揮するのは属性魔法の類だから、勿体無くはあるな。でもそれこそ、その感知範囲はとんでもねぇし、一撃に乗せるインパクトを重くすることは出来るぞ」
「おぉ〜」
「この量、配分ミスると拳の方が消し飛ぶけどな」
「こっわ!……ハハっ、楽しくなってきた」
己の成長過程を楽しむ灰音に、東条は昔の自分を重ね笑った。
……そう言えば朧の奴元気してるかな?彼はもう1人のイケメン弟子を思い浮かべ、そのイケメン具合に唾を吐くのだった。
――その日の夜、毎日の恒例になってしまった酒盛りの席で。
「……すぅ、……すぅ、」
「?おーぃ、……」
東条は途中で寝てしまった灰音を抱き抱えベッドへと運んでから、1人散歩に出かけた。
カエルの鳴き声とぬるい風がアロハシャツを揺らす。
「……〜♪」
魔力量が他人よりもずば抜けて多い人間はたまにいる。厳密には魔力量の増加が他人よりも早い人間か。
国に認知されているのは加藤や紅、新。後は恐らく紗命もそうだった。
単純に才能に依存した能力ではあるが、それを考慮しても灰音の魔力量は異常すぎる。
果たして雑魚モンスターを数匹殺しただけでそこまで跳ね上がる物なのか?
まぁ魔法に関してはまだ解っていないことの方が多い。というか解っていないことしかないと言っても過言ではないのだから、自分がどうこう考えられるレベルではない。
「……あいつがどこまで嘘をついてるか、だな」
東条は夜空を眺め、1人ごちる。
自分達が嘘をついて生きているのだ。他人にそれがないと何で言える?
この世界、警戒を忘れた人間から死んでゆく。
自分は灰音が好きだし、人として信頼出来るのも分かる。ただ、頭の片隅には置いておこう。
そう自堕落な心に決めた。




